不動産屋のラノベ読み

不動産売買営業だけどガチガチの賃貸派の人のブログ

インフレ想定の「賃貸vs持ち家」

 
 みなさん、アベノミクスしてますかー!
 
 はいそういうわけで、恒例の「賃貸vs持ち家」論争なんですが、今回は「アベノミクス記念!僕の住宅がこんなにインフレになるわけがない」と題しまして*1、年2%のマイルドインフレが35年間達成された時は賃貸と持ち家どちらが有利かを計算してみました。
計算したスプレッドシートも公開しちゃいます。たぶん計算ミスとかどこかでやらかしてると思うのでご指摘よろしく! あと「不動産屋のポジショントークだろ」とか言っちゃうネガティブブックマーカーブコメ残す前に自分で計算してブログに上げてね!
 

持ち家有利でした

 結果を先に言うと持ち家有利でした。低金利でインフレ期待というのは大きいです。ひょっとすると、昨年末から先々月ぐらいまではここ10年ぐらいで最高の買い時だったかもしれません。
 あれですね、何かが値上がり確実な時には借金してでも全力で買いに行け、ということでしょうね。
 そういうわけで、以下の条件を満たせるなら、そしてお金のことだけを考えるなら、買うべきかもしれません。

  • 2%程度のマイルドインフレが35年継続
  • 利回り4%程度で賃貸に出せるマンション
  • 将来大きく価値を低減させないような好立地
  • ローン金利は固定金利で2%台前半

 

計算条件

  • インフレ
    • 年2%
  • 物件
    • 価格4800万円
    • 管理費等2万円/月
    • 利回り4%(賃貸時家賃16万円/月)
  • 頭金
    • 2割(960万円)
  • 住宅ローン
    • 35年固定金利2%
    • 3840万円借り入れ
  • 売却時価格
    • インフレ率と経年低下で補正
  • 家賃
    • 16万円スタート
    • 2年ごとにインフレ率と経年低下で補正
  • 更新料
    • 2年ごとに新家賃1ヶ月
  • 現金
    • インフレ率+1%で運用
    • 「賃貸」は頭金分を運用
    • 「購入」は家賃-支払差額を運用
  • 住宅ローン控除
    • 計算外
  • 取得費用
    • 計算外
  • 固定資産税
    • 計算外

 

結果

 購入時

住宅ローン支払 -5343万円
管理費等 -1153万円
物件価値 5314万円
現金 2390万円
1207万円

 
 賃貸時

賃料支払 -7979万円
更新料 -328万円
物件価値 0万円
現金 2732万円
-5574万円

 

考察

 とにかく家賃上昇がすごいので、たとえ35年後にマンションをだれかにタダであげても賃貸より有利でした。ただ、賃貸時に頭金分を使ってレバレッジ5倍で投資するとおそらくマンションを買うより良い資産状況になるはずです……成功すればね!
 
 35年後の物件価格は眉唾です。あの半分以下というのもありえると思います。15年目以降は特に信用ならないと思います。理由は2つあります。
ひとつ目は、参照をした資料が「ある時点での築年別坪単価」なので、経年での価格変動を表しているわけではないことです。本当はマンション価格のコホート分析などがあればいいのですが、日本の不動産は学問としてそこまでのレベルにないようです。私たちが死ぬ頃には明海大学が何か成果を残してくれることでしょう。
 ふたつ目は、35年目の利回りが低すぎることです。算出された賃料と物件価格から利回りを出すと5%程度になります。インフレ2%で築35年のマンションが表面利回り5%というのはありえないと思います。
 

計算に用いたスプレッドシート

 見づらいです。
 大した計算をしてるわけでもないのでがっかりするかもしれません。ご批判お待ちしています。
https://docs.google.com/spreadsheet/ccc?key=0Attk99FTkBoEdHF5NnY4VmNaVzJ0T19BWXZuRWVGNnc&usp=sharing
 
 
 

20130626追記

 どうも、ほのめかしがほのかすぎたようなので直球で書いときます。
 
 ご存知の方もいらっしゃると思うんですが、私は「賃貸派」でして、そういう「賃貸有利!」な記事を書くと必ず「将来のインフレを考慮してない」みたいなつっこみが入るんですね。「じゃあお前が考慮しろよ」とか内心思ってたんですが、アベノミクスのおかげでインフレが現実的になってきたので少し考慮してみようかな、と。
 で、そういうわけですので、シミュレーションの内容は「購入」有利に作ってるつもりです。コメント欄にも書きましたが、賃料が物価に完全に連動することはありませんし、35年間平均2%のインフレが続くという予想は楽観過ぎるし、物件価値の経年補正はバイアスが働く「ある期間の東京都の流通価格」ベースの数字です。
 そういった条件設定ですが、たとえば金利を3%に変更してみるとフロー部分(物件価値以外)では「賃貸」が逆転するんですね。「金利3%は高すぎるんじゃ」と思う人もいるかもしれませんが、数年前までは全然普通の金利でしたから、このシミュレーションの「購入有利」な結果はむしろ低金利のおかげ、と言えるかもしれません。
「でもストック部分(物件価値)を含めると買ったほうが有利だろ」と言われると思いますが、価値が上がることが確定してるなら誰でも買うでしょうけども現実はそんなに甘くないわけです。デフレが起きるかもしれないし、インフレでも相場が上がらないかもしれないし、大地震が起きて価値を毀損するかもしれない。価値が上がることに賭けて買うのはいいですが、相場を見て投資するならもっと流動性が高い金融商品を買ったほうがいいと思うんですよね。特にインフレ確定と考えているならそっちの方がいいでしょう。
 
「インフレだからマンションを買うべき」という話をする人がいますけど、インフレなら同様に金融商品も上がるので、そちらに投資をせずに「マンションを買うべき」と言えるには、株式などの金融商品より不動産の値動きが大きい、という確信がないといけないわけです。その辺分かってんのかな、と思うことがあったのでそういう意味でもこの記事を書きました。投資的な側面で「インフレだからマンションを買う」メリットは、フルローンを利用すると元手が少なくてもサラリーマンには不釣合いなハイレバレッジを仕掛けることができる、という点だと思います。

*1:題してませんが