住太陽さんが、サイトの売却を検討しているらしく、こんな記事を。
いただいたお問い合わせの内容ですが、すべてのお問い合わせに、まずは参考価格を知りたいという内容が含まれていました。当然だと思います。僕は基本的には、価格は需要で決まると考えているのですが、そうは言っても買い手からすれば目安があったほうが検討しやすいのは間違いありません。
http://www.motoharusumi.com/%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%88%E5%A3%B2%E5%8D%B4%E3%81%AE%E5%8F%82%E8%80%83%E4%BE%A1%E6%A0%BC%E3%82%92%E3%81%8A%E7%9F%A5%E3%82%89%E3%81%9B%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%99
そこで、目安となる参考価格を出す前の段階として、サイトの現在価値を試算してみました。方法は次の2通りです。
1. サイトのセッション数から算出
2. 被リンクの価値から算出
以下、それぞれについて見ていきます。
これ面白いですね。
これに乗っかって「不動産屋が買うならいくらぐらい出せるか」という価格査定をしてみました。
不動産屋が買うなら
記事中によりますと、280万PV/年という強烈なサイトであるようです。
で、賃貸不動産の平均的なPVに対するコンバージョン率は、自分の経験と耳に入ってくる情報によると、0.5%行かない程度であるようです*1。そうすると、
280万 × 0.5% = 1.4万件の問い合わせ
すでに地場の不動産屋では扱えない件数です(w
さて、ECサイトと異なり、賃貸不動産サイトは「ゴール=成約」ではありません。お問い合わせを頂きご案内をして契約して初めてお金になります。賃貸のネット経由お問い合わせに対する成約率は、20%行かない程度であるようです。ですから、
1.4万 × 20% = 2800件の契約
契約書を書くだけでも腕がちぎれそうですね(w
で、めでたく賃貸契約成立いたしますと、我々は報酬として仲介手数料1ヶ月分を頂きます。賃貸仲介の収入源としてはこれだけ*2ですので、平均賃料に契約件数をかければ売上が計算できます。
見える!賃貸経営 | HOME'S不動産投資
↑によりますと、全国の1R/1K1DKの賃料相場は約6.35万円だそうです。賃貸市場において1R系が占める割合はかなり高いのでこれを採用しますと、
2800 × 6.35万 = 17780万円の売上
……賃貸仲介むなしいっすね。1万回以上案内しても売上2億いかないとは。売買なら一発仕入れればこれぐらいの売上立っちゃいますよね。
というわけで、仮に利益率を10%とすると、
17780万円 × 10% = 1778万円
と、年間の収益が求められました。
年間の収益が定まりましたので、この収益がずっと続くと仮定すると【年間収益】÷【割引率】が現在価値となります*3。ここで問題になるのは割引率の決定ですが、当然賃貸不動産仲介サイトのリスクを織り込むべきでしょう。これがなかなか難しいと思いますが、
http://searchina.stockdatabank.jp/flash/q.cgi?sel=1&ud=1&st=28&sj=1&jj=&gy=32&menu=
↑でROEを見ましたら、大京が6.75%、東急リバブルが3.82%とのことです。これらの大企業よりは利回りが上になることは疑いないと思われますので、利益率との整合を考えて10%としておきます。
1778万円 ÷ 10% = 17780万円
と、結局、このサイトの価値は不動産屋が買うなら約1.8億円となりました。
ただ、住太陽さんのサイトはSEOサイトであり、これを不動産サイトにリニューアルするとPVが減ることが予想されます。また、コンバージョン率にも悪影響があるでしょう。また、このサイトは全国の人が見ているので、収益を上げるためには全国の賃貸情報を持っているようなある程度大きな不動産屋でなければいけないでしょう。つまり、需要が少ないということになります。もろもろ勘案しますと、8000万円ぐらいが出せる限界のような気がします。それでも博打って感じですが。
サイト価格査定は不動産価格査定に似ている
さて。
いろいろ書きましたが、ここまでお読み頂いた不動産業界の方は「こいつ収益還元法で査定してるな」と思ったに違いありません。
実は、計算し終わってそれに気づいたのですが、サイトの価格査定は不動産と同じように考えれば良いのではないか、と思いました。
不動産価格査定の方法には3種類あります。
- 再調達原価法
その不動産と同じ物を調達するのにどれぐらいの費用がかかるか、というところから価値を求める方法です。セッションを再調達する費用や被リンクを再調達する費用からサイト価値を求めた住太陽さんの方法が、ちょうどこれにあたりますね。
- 取引事例比較法
周辺や類似の取引事例から価値を求める方法です。不動産では再調達原価法にしろ収益還元法にしろ、キーファクター*4を周辺の事例に頼らざるを得ず、結局のところ一番用いやすい査定方法です。しかし、サイト価値となると「同規模のPVを持つ類似のテーマのサイト取引事例」を集めることが困難であると思われるので、これはサイトの価格査定には使えないでしょう。
- 収益還元法
その不動産からどれぐらいの収益を得られるか、というところから価値を求める方法です。これは前述の私の価格査定法ですね。
今回は「不動産屋が買うなら」という仮定で計算しましたが、本来は「最適な運用をした時の収益」を想定する必要があります。不動産でいうと、住宅地のど真ん中に事務所系のビルを建てたり、高層ビル街に分譲住宅を作ったりすることを想定してはいけないのです。
では、このサイトでの最適な運用とは何でしょうか。当然それは「SEOサイト」であるはずです、それもSEO業界の有名人である住太陽さんが運営するのが最適でしょう。
つまり、id:himaginationさんのブコメ、
himagination 参考価格は今現在あなたがこのサイトから得ている収入を教えてくれればおk。
はてなブックマーク - サイト売却の参考価格をお知らせします | 住 太陽のブログ
が、正解、ということです。
逆に言えば、ご本人が1億円の値をつけていることから、現在の年間収益を邪推することもできます。SEOサイトのリスクレートってどれぐらいなんだろう? 7%ぐらいだとすると……、普通のサラリーマンじゃちょっと勝てないですね。
まとめ
サイトの価格査定は、管理人がそこからどれだけの収益を上げているか公表するのが、一番の早道。