ホームインスペクターの草分け「さくら事務所」の長嶋さんが中古住宅取引改革の私案を公開されています。
昨年12月に機会があり、国土交通政務官の三日月大造氏に提案した「中古住宅流通を活性化するための方策私案」を公開します。ポイントは大きく3つ。まず【市場の規制緩和】。次に【プレイヤーの質向上】。そして【取引の仕組み整備】です。
中古住宅流通を活性化するための方策私案|長嶋 修(不動産コンサルタント)オフィシャルブログ「ズレズレなるままに」
ちょっと、面白いので私の意見を併せて(というか私の意見をメインに)紹介していきたいと思います。
仲介物件の囲い込みをなくす
「専任媒介」廃止。全ての取引を「一般媒介」に。
積極的に反対
不動産屋は売買契約をして初めて利益を得られます。ですから、どれだけお客様のために仕事をしても、売買契約の段階で他社に抜かれるとまったく利益を得ることができなくなります。
「一般媒介」は「専任媒介」とは異なり、どの業者の仲介でも売買契約をすることができます。つまり、100回案内した後に手数料がちょっと安いだけの他社に持っていかれる可能性が高くなります。
ということは、「専任媒介」廃止は、他社に抜かれないうちに売買契約をさせるインセンティブが働くわけです。売買契約を急ぐことは、多くの場合、売主・買主双方にとってあまりいいことではありません。売主・買主の向かいたい方向と不動産屋の向かいたい方向が異なる場合、あまり良い仲介は出来ないでしょう。
「両手取引」の原則禁止
積極的に賛成
「自然な両手取引は認める(書面で説明する)」とありますので、通常のお客様であれば今までと同じく取引ができ業界に与える影響は少ないでしょう。
一方で、信頼するバイヤーズエージェントがいるお客様であれば、買い側の仲介に入れることが無理なくできるため、これは良いことでしょう。ただ、売り側の不動産屋が買い側の不動産屋に対して「あそこは信用ならないから仲介したくないわ」という時は取引の自由を制限するのか、という問題もあるかと思いました。
仲介手数料の自由化
消極的に賛成
値下げ競争になって悲しい結果になりそうな予感……。でも、それも時代の流れですよね。
手数料を売主のみからとする
消極的に反対
特に何も変わらないと思う。
参考:あなたが住まい探しに失敗する1つの理由(売買編) - 不動産屋のラノベ読み
REINSの一般公開 (Lhankor_Mhy案)
原則として公開。ただし、売主の同意が得られない物件は非公開。
使い方によっては、HOMESより強烈な販促ツールになります。一緒に両手禁止が実現すれば、みんな喜んで情報公開するんじゃないでしょうか。
不動産屋にとって情報はメシの種です。それを吐き出させようというのですから、何らかのインセンティブがないとね。
参考:神奈川県宅建協会がスマートすぎる件 - 不動産屋のラノベ読み
宅建業者 従業者の質の向上
宅建主任者を段階的に全員取得へ
中立
特に言うことはないかな。
宅建主任者の更新要件の見直し
中立
あんまり効果ないのではないかな。
質の向上の必要なし (Lhankor_Mhy案)
不動産取引市場の仕組みをしっかり作れば、現状の宅建主任者のレベルで十分だと思います。そこは取り組むポイントではない、と感じます。
不動産業界が進む道としては、2つあると思います。
- 枠組みをしっかり作り、仲介のレベルを均質化する。市場に出ている物件の信頼度に差はなくリスクが均質化するため、市場の流動性に資する。ラインからはみ出すようなイレギュラー物件は、コンサルを通してクローズに取引するか、宅建業者が買取を入れてラインに乗せる。
- 一定のレベルに達しないプレイヤーを排除する。素人での不動産取引は難しくなり、宅建業者の仕事の付加価値が上がる。
私は前者を志向するため、最終的には買取業者や一部のコンサル以外のプレイヤーは必要なくなると考え、質の向上の必要を感じません。プレイヤーのレベルに頼っている市場は不安定だと考えます。
というか、物件資料をFAXするのが「営業」だと思ってるような不動産営業は、無人でFAXできる機械に取って代わられるのは仕方ないでしょ、たとえば俺とか。違う?
不動産取引の仕組み整備
最終的には「エスクロー制度」の整備
積極的に賛成
同じようなこと考えてました。
参考:仲介料を従量制に - 不動産屋のラノベ読み
リフォームローンの整備
購入時のリフォームローンが出やすい仕組み
中立
物件価値を下げるリフォームもできるわけでして……。評価が難しいと思うので、どうすればいいのでしょう。銀行に変な負担をかけると市場が歪むし。