不動産業界用語で、「まわし物件」とか「当て物件」とか呼ばれるものがあるんです。この辺、地方によって言葉の使い方が多少違うようなんで、多少の差異はご容赦ください。
「当て物件」というのは、一発目に見せる安いけど難がある物件のことです。あ、別に安くなくてもいいんですけど、「このぐらいの価格だとこんな物件ですよ」と相場を教えるために安い物件の方がいいです。
「まわし物件」というのは、当て物件を見せた後に、決める物件の前に見せる物件です。いい物件だけど高かったり場所が悪かったりする方がよく、主に顧客を悩ませることを目的としています。
当て→まわし、と見せることによって、決める物件を見た時に「これだ!」と思わせようという、営業の戦略なんです。まあ、最近はネットですでに探していてストリートビューで下見して現地待ち合わせ、とかが多いのでこちらの思うように顧客が動いてくれることが少なくなりました。インターネット時代の不動産仲介業としては、この辺の手法を時代遅れと感じる人も多く、もちろん私もその一人です。
で。
それに関して、すごく興味深い記事を見かけたので、ご紹介しておきますね。
ネットでも「まわし物件」は有効
一見CV率の低い物件bが、検討者が購入意思を固める上で重要な働きをしていることがわかります。つまり、a を訪問した検討者にb →c という順序で閲覧するように推薦することで、購入検討を後押ししています。
東京大学との共同研究 ビッグデータを活用した推薦アルゴリズムを新規に開発 - CNET Japan
簡単に説明しますと、「 d が反響率が高いんだけど、aを見た後にdをサジェストすると反響が取れない。逆にbは反響率が低いんだけど、a → b → c と見た時に a → c と見るよりも反響が取れるので、実は b をサジェストする方が d よりも4倍ぐらい反響が取れる」ということです。
b 自体は決まる物件じゃないんだけど、それを見せておくと c が決まりやすいということで、これってまんま「まわし物件」ですよね。もちろんこの手法では、ユーザーの行動履歴を見て最終的な反響率が高まるようなサジェストができるように分析をしてるわけで、意識しているわけではなく結果的に「まわし物件」が現れてしまうのですが。
アナクロな営業手法にも意外なマーケティングヒントがあるものなんですね。ちょっと目からウロコが落ちました。