不動産屋のラノベ読み

不動産売買営業だけどガチガチの賃貸派の人のブログ

入居率と空室期間

 
 この前、twitterで賃貸市場について、主に@tkhshnchさんにいろいろ教えていただき、togetterでこんな感じにまとめたのですが。
 「不景気だから持ち家から賃貸にシフトしてるのかもしれんね」とか賃料の坪単価についてとか - Togetterまとめ
 
 その中でこのようなやり取りがありました。

marocat@tkhshnch それは逆、地域の需要にもよるが、基本的な考え方としては、ファミリーよりもワンルームを作る。ファミリーは入居者が一旦抜けると、次が中々入らないと考えられ、一般的に空室リスクを高く見積もる。link
tkhshnchワンルームは市場が飽和している。初期費用のバーゲンで入居者獲得合戦が起こるから、空室リスクは高まる一方だし、入居者獲得コストも増加するはず。RT @marocat: @tkhshnch それは逆、地域の需要にもよるが、基本的な考え方としては、ファミリーよりもワンルームを作る。link
 
 このやり取りを見てて、生意気なのですが「入居期間と空室期間が十分に均質ならば、単純に入居率を問題にすればいいのではないだろうか」とか思っていたのですが、よくよく考えるとそうではないかもしれないと思い至ったのでエントリにしました。
 

ファミリータイプの方がリスキー?

 結論から言うと、入居期間が長い方がリスキーです。
 入居率が「現在の確率と過去の統計結果が一緒になる」いわゆるエルゴード情報源だと仮定すると、入居率はそのまま入居期間率とイコールになります。分かりやすく書くと

 入居率  = 入居している物件数 ÷ 全体の物件数
入居期間率 = 入居している期間  ÷ 全体の期間

 これがイコールになると言うことです。つまり、ファミリー物件は入居期間が長いとかワンルーム物件は募集期間が短いとか、そういうことにかかわらず入居期間率は入居率に等しいわけです。入居期間率が等しければ、同じ期間に賃貸したときの収益は等しくなる計算になります。これが私が「単純に入居率を問題にすればいい」と思った理由です。
 ところが、さらに考えると、例えば同じ入居率=入居期間率であっても、一人の入居期間が長い場合は募集期間も長くなる計算になります。
 例として入居率が同じ80%として、以下のような計算になります。

平均入居期間 募集期間
1年間 2.4ヶ月
2年間 4.8ヶ月
4年間 9.6ヶ月
6年間 14.4ヶ月

 当然ですが、入居者が長く住んでくれればくれるほど、募集期間がまとまってくるため長くなってしまいます。トータルの入居期間は変わらないのですが、1年以上空きがある状態というのは、大抵の大家さんは胃が痛くなってしまう状況でしょう。トータルが同じ収益でも収入がなくなる期間が長くなるというのはリスクが高くなると言っていいでしょう。
 ですから、もし、本当にファミリータイプの入居期間が長いのであれば、同じ入居率のワンルーム物件と比べてリスキーである、と言えます。
 

イニシャルコストの問題

 計算上は上記の通りですが、しかし@marocatさんの意見に同意するかというと、実は違います。
 新しく入居者を迎える時には、イニシャルコストがかかります。

想定利回りは10%のはずなのに、
粗利での利回りは6.7%です。
思っていた以上に入居期間の短さが経営を圧迫することを感じられたのではないでしょうか。しかも、これは毎月入居者を確保できた場合です。

ひろの「サラリーマンのための不動産経営」(不動産投資・アパート経営・マンション経営のページ)

 クリーニング代・内装費用・鍵交換代・募集費用など、結構な物入りなのです。数ヶ月で退去されてしまうと全く割に合わないでしょう。
 イニシャルコストは退去がある度にかかります。つまり、入居期間が短い方がコスト高となってしまいます。もちろん、このイニシャルコストを入居者に負担してもらえればいいのですが、そうも行かない社会状況となっています。
 例えば退去時に原状回復費用を負担してもらうのは東京ルールに代表されるように厳しいです。

退去時の通常損耗等の復旧は、貸主が行うことが基本であること

賃貸住宅紛争防止条例/東京都都市整備局

 また、入居時に礼金で補充するというのも、

礼金」って名前が悪いよねwオーナー事情知らない人からみたら、おまえにお礼しなけりゃいけないことなんてまだないぞゴラァァってなるよね。

もうやめて!礼金のライフは0よ! - Togetterまとめ

 と、ご覧のあり様です。
 ですから、もし、本当にワンルーム物件の入居期間が短いのであれば、同じ入居率のファミリー物件と比べてコスト高である、と言えます。
 

ワンルームとファミリーどちらがいいのか

 で、結局どちらがいいのか、となると色々仮定を交えて話してますので結論はないのですが。
 もし、私が新築を建てるのであればワンルーム物件です。ファミリー物件数十戸の新築物件を建てても1年で埋まる気が全くしないです。その間赤字とかぞっとします。
 もし、私が満室の中古を買うならファミリー物件です。退去者が出るまでに募集に備えてしっかり資金をためておくだろうと思います。
 
 
 
 あと、今までの文脈とは関係ないんですが、賃料が安い物件は退去が比較的少ないです。色々理由はあるでしょうけれど、安い物件の入居者=低所得者層、ということで引っ越したり家を買ったりという消費行動を避けているからかもしれません。