不動産屋のラノベ読み

不動産売買営業だけどガチガチの賃貸派の人のブログ

とりあえず仲介手数料ディスカウントをdisっておく。あと不動産業界のコストのことについて。

 
 なんと言ったらいいのか迷うのですが。
 

 すでにお目当てのお部屋がお決まりのお客様が、当社にてお申し込みをし、ご契約頂来ますと、仲介手数料は一律定額31,500円(税込)にて承っております。

賃貸マンション仲介手数料一律31,500円 l 315のメリット

 この売り文句を見て、業界の方々は即座に「こいつ死ね」と思うでしょうが、不動産業界以外の方どう思われます?
「安いのはいいなあ。どうせ物件情報はネットで手に入るし」
 と思われる方もいらっしゃると思います。
 で、ちょっとこれを見て下さい。
賃貸マンション仲介手数料一律31,500円 l 315システムとは?(賃貸マンション仲介のしくみ)
 ご覧のとおり、物件出し・ネット掲載・反響対応そして案内までを「削減」することによって実現しているそうです。
 つまり、「ウチには物件情報はないし案内もしないので、ヨソの会社で案内してもらってからウチで契約しようね」ということです*1。他の会社に仕事をしてもらって金は自分のところでもらおうという魂胆です。不動産屋の風上にも置けない、というか商売人の仁義に反します。早く潰れればいいのに。
 

自業自得

 えー、以上、dis終了。以後まじめな話になりますが。
 世の中の人は不動産屋にいい印象は持っていないです。中には蛇蝎のように嫌っていて「不動産屋にはできるだけ金を払いたくない」という人もいるかと思います。そういう人たちは「案内をする不動産屋が馬鹿を見るのも望むところ」でしょうし、この手の不動産屋を積極的に利用するのではないでしょうか。
 また、不動産屋から見ると「物件の事を見たこともないし何も知らないようなところで契約するのはどうなのよ?」と思うでしょう。ですが実際には「不動産屋は何もしてくれない」と思っている人は結構多いはずで、そういう人たちにとっては「どこで契約しても同じ」なわけです。
 さらに、オーナー側から見てみても、決めてくれるならば誰でもいいわけで、しかも「礼金バック」交渉がなさそう*2というメリットまであります。
 
 そんなこんなで、この手の不動産屋の障害となるのはせいぜい「なんか怪しい」というイメージ程度であるわけです*3。もし、こういうのが流行って悪貨が良貨を駆逐するようなことがあったとしても、この手の不動産屋とサービスの差別化をできない我々のマーケティング失敗であり、リピーター率が極めて低い事をいいことにCSを高めてこなかった業界全体の敗北であると言っていいでしょう。
*4
 

物件情報有料・案内有料

 この手の不動産屋が流行ると、最終的には「物件情報を載せる」「案内をする」業者がいなくなりますので、仲介業界自体が立ち行かなくなります。もちろんそうなる前に、物件情報と案内が有料になる、というあたりで落ち着くでしょう。
 実は、まあ、これはこれで良いんじゃないかと思います。「5万円の物件10回案内×3回契約」と「15万円の物件1回案内×1回契約」が同じ手数料というのはお客様も納得がいかないところでしょうから、仲介手数料を安くして「案内ごとに2,000円」とか取るのはアリかと。物件情報有料というのも、そもそも情報が欲しい人が対価を払うのが自然なわけですからこれもアリでしょう。
 
 この状態は、顧客にもメリットがあります。不動産屋的には「案内を数多くする」「物件情報を数多く出す」方が儲かるわけで、転居を諦めない程度にお客様の決断を鈍らせる事が営業の仕事になります。つまり、しつこく契約を迫られないわけです。「お客様の背中を押す」タイプの営業は稼げず、「ネガティブ情報を開示する」タイプの営業が稼げることになります。これはある程度までは良いことでしょう。
 

何がムダなんだろう?

 さて、ここまで書いてきてもうお分かりかと思いますが、賃貸の不動産屋でコストがかかるのは「物件情報公開」「案内」なのです。ここのコストカットができれば仲介手数料は下げられる。「案内」をなくすというのは難しそうですが、「物件情報公開」のコストカットは結構できそうです。
 たとえば、各不動産屋が物件情報を業界で管理するサーバに上げてしまえばいいわけです。ただ、「それなんて不動産ジャパンw」という声も聞こえるとおり、営利企業がサイト管理しないと本腰をいれないので、SEOで負けて認知度が上がらず結局物件登録が減り……、となってしまう可能性は高いでしょう。googleのようにリスティング広告で稼ぐなどのスキームが必要かと思います。
 また、そもそも「データを一ヶ所に集めて」という発想自体が古いのかもしれません。そこで、こういうのはどうでしょう。共通のXMLスキームを定めて、各不動産屋が物件情報を自社サーバに公開、それぞれが適当にクロールして処理して公開するようにシステム。専用のクローラとパーサをオープンソースにしておけばいいと思います。これがあれば、明日から不動産屋を始めるような人でも全国の物件を紹介する物件検索エンジンが作れるはずです。ランニングコストもぐっと減ります。各不動産屋は入手した物件情報を「どう見せるか」を競うわけです。結果、ローカル・クローズド・ネガティブ情報で差別化することになり、これはお客様にとって良いことでしょう。
 「両手禁止」もいいけど、こういうことも取り組んで欲しいなあ。
 
 
 

おまけ

 似てるようで全く違う、こういう不動産屋も。

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 これは、一見「手数料無料の上に100万円くれるなんてオトクじゃね?」と思えますが、よく読めばこの不動産屋に仲介を頼む必要は全くないことに気づきますね*5
 もし理由がわからない方がいれば、twitterで聞いてくれれば答えるかもしれません。あまり営業妨害はしたくないのでDMで(w

*1:会社サイトを見ると物件情報がないわけではなさそうですが。http://www.ginza-shinwa.jp/

*2:お客様が物件を決めてきてるので「礼バックないなら代わりの物件当てますよ」という交渉が難しい

*3:良心の呵責をのぞけば

*4:ただ個人的には、これは不当廉売に当たるのではないか、と思っています

*5:個人的には、この不動産屋のキャッチフレーズは景品表示規約違反だと思います