不動産屋のラノベ読み

不動産売買営業だけどガチガチの賃貸派の人のブログ

「持ち家」派は「食べかけのカレー」の価値をもっとアピールした方がいい

 
 
 
 毎度おなじみ、「賃貸vs持ち家」論争です。
 
 今回のネタ元はこちら。
www.mag2.com
 筆者の主張は以下の3つです。

  1. 貸家は大家が利益を取るのだから、買ったほうが得。
  2. 所有していると安心。
  3. 持ち家は資産形成に有利。

 

貸家は大家が利益を取るのだから、買ったほうが得?

またそもそも家賃というのは、家を買うよりも割高に設定されています。家賃というのは、次の数式で算出されます。
 
家の購入費+諸経費+大家の利益=家賃
 
一方、家を買った場合、必要とされるお金は次の通りです。
 
家の購入費+諸経費
 
つまり、大家の利益の分だけ、家を買った方が得なのです。家賃を払っているということは、大家の利益をもずっと払っているという事なのです。

 よく耳にする理論ですね。
 でも、残念ながら、世の中には「業者がやると利益を生むからといって、自分でやった方が得とはならない」ことはたくさんあります。
 
 理屈どおりであれば、以下のことも言えるはずです。

  • ワンルームマンションに住むより、投資用ワンルームマンションを買ったほうが得
  • 分譲マンションは投資に最適なので、大家業の人がどんどん買ってしまう
  • 分譲一戸建てを買って賃貸に出せば、賃料収入でローンを払ってお釣りが来る

 でも、現実はなかなかこうはいかないです。
 
 直近の東京カンテイのマンションPER( https://www.kantei.ne.jp/report/95PER2017_shuto.pdf )によると、都内マンションのPERは平均で24.49倍、つまり平均利回りはだいたい4%です。
 ちょっと計算してみればわかりますが、これじゃ借入をすると利益出ないです。会計上は出るかもしれませんが、キャッシュフローはやばいです。お医者さんとか弁護士さんとか、「ちょっとお金が余ってるんだけど銀行に置いておくのももったいないしマンションでも買うかな」みたいな人が現金買いすれば、利益出るかもですね。
 

所有していると安心?

また“家”を持っている人と持っていない人では、心理的にも大きな違いがあります。“家”を持っている人は、収入が少なくても自分のことを貧乏だとは思わないでしょう。それは、人生を楽しく生きていくうえで非常に大きな要素ではないでしょうか?

 へえ。
 

たとえば、50歳くらいでリストラもしくは肩たたきをされた人がいるとします。この人が、もし家を持っていたなら、そう慌てなくて済みます。ローンが残っていたとしても、退職金で何とかなるでしょう。

 会社をクビになった場合、賃貸よりも、ローンを抱えていた方が安心できる、とのこと。
「家買っちゃったからもう仕事辞められない」みたいなサラリーマンの実感を一蹴する新しいモノの見方ですね。この前向きさは見習いたい。
 

持ち家は資産形成に有利?

持ち家のメリットはそれだけではありません。持家の最大のメリットは「資産形成」だといえます。家賃は払ったお金はすべて出ていくのに対し、持ち家の場合は、払った家の購入費(ローンなど)は、すべて「家」という資産を形成していくことになります。

 先ほども書きましたが、都内新築マンションの平均利回りは4%です。配当のいい株よりちょっと高いぐらいのレベルです。
 

購入時に無理のないローンを組んでいれば、地価が下がったとしても、ほとんど影響を受けることはないのです。いざというときに売却するときに、売却代金が減るというだけの話なのです。

 資産としては減っていますね。
 たとえばですね。「配当利回り4%の株があるから35年のロングで買えよ。いい資産形成になるぞ、その頃には価値が半分になってると思うけど」と言われて、買いますかね?
 

「食べかけのカレー」に価値を見るかどうか

 ただ、以下の指摘は正しいと思います。

しかし、持ち家の場合は、その逆です。長生きすればするほど有利になるのです。ローンを払い終われば、あとは固定資産税だけ払えばいいわけです。だから、老後の生活を考える上では、持ち家の方が圧倒的に有利なわけです。

 現在の日本の不動産市場では、残念ながらローンが終わった住宅はかなり価値を減らしているかと思います。ただ、使用価値は別です。
 
 たとえば、あなたが1000円のカレーを買って半分食べたとします。
 これ、500円で売れるでしょうか? 売れないですよね。もしかしたら、タダでももらってくれる人はいないかもしれないです。
 しかしだからと言って、あなたがカレーを半分食べたところで誰かに「その残り半分100円で買うよ」と言われても、あまり売ろうとは思わないんじゃないでしょうか。
 
「食べかけのカレー」の市場価値は0に近い、でもあなたにとっての使用価値は500円に近い。
 一般に、新品は、市場価値 ≒ 使用価値、中古品は、市場価値 < 使用価値、です。
 あなたが「食べかけのカレー」に価値を見るなら、持ち家はよい選択かもしれません。でも、市場価値を期待してはいけません
 

老後に家を買えばいい

 個人的には、老後に家を買えばいいかと思います。
 
 30歳で子供ができて、35歳で家を買って、55歳で子供が独立し、80歳で死ぬ、という人生を送った時、あなたが家で子供と一緒に暮らす時間は45年の内20年間です。残りの25年間はその分部屋が無駄になります。
 また、家を買う時に、小学校距離なんかを気にすると思いますが、これなんて6年で意味がなくなりますよね。
 高齢化社会において、子育て期は思ったよりも短く、人生の中でも特殊なニーズが発生する時期です。その一過的なニーズを主眼にして家を買い、使用価値を重視して流動性を失うのは、かなり無駄が多いでしょう。
 
 短くて特殊なのですから、賃貸でいいじゃありませんか。
 子育てが終わり、2人になってから部屋数が少なく市場価値の低い、あと30年使えれば十分な家を買う、というライフプランもありだと思いますよ。