ラノベの定義について
「狼と香辛料」 - それ、うまいのか?
↑を受けて思うところを。
ラノベってなんだろう
ラノベの定義論をやると議論百出してまとまらないのが常ですが、自分的な意見を書きます。
- 一人称小説か、または三人称小説でも視点が主人公格にほぼ固定されている
これは必須だとは思いませんが、そういう作品が多いはずです。*1
- 主人公格のキャラクターが若者
もともとが「ジュニア小説」だったわけですから、これは必須に近い条件と考えています。老人が主人公格でストーリー中に成長が見られないラノベってあるかなあ?
- 文章が読みやすい
これも少年少女向けに書かれていたジャンルが元ですから、必須と考えています。
自分的にはこれが最高に大事な要素だと思っています。
ラノベの命は文章のスピード感
まず、ぼくの読む姿勢が、なっちゃいなかったことに、読んでいる途中で気が付いた。
「狼と香辛料」 - それ、うまいのか?
「ラノベなんか、つまらん」というところからスタートしている(ぼくの勝手な事情)ので、意識はしていなかったのだけれど、ラノベに「ラノベ以外のもの」を期待しながら読んでいたみたい。
織りなす伏線とか、緻密な描写というような、ヘビィなものを要求する方がどうかしてる。
それこそ、時代小説全般に、現代社会が抱える問題の提起を期待するように。
ラノベは文章のスピード感を楽しむジャンルだと思います。
そのためには描写や説明などはむしろ邪魔になることがあります。普通の小説では戻って読み返すなど「遅読」をすることによって理解が深まりより楽しめるものがありますが、ラノベ的視点では読み返しはむしろ悪です。
脳内で音声化する「黙読」をした時にリズムよくストーリーと描写が入ってきてするすると読めていく、文章のスピード感というか読書の疾走感こそがラノベの命だと思っています。
そのために、センテンスは意味が取りやすい程度に短くします。
キャラクターの掛け合いは無駄な描写を省きます。描写が長くなると「黙読」の読書時間が会話の間と離れてしまうので、単調になり過ぎない程度にト書きのようにセリフをテンポ良く並べます。
心情描写も登場人物がリアルタイムで処理できる以上のものを与えません。
社会背景などはなるべくキャラクターの思考や会話で提供します。
視点もなるべく動かしません。視点を動かすとスピード感が落ちます。視点を変える場合ははっきりとシーンを切り替え分かりやすく、主人公格以外の視点はなるべく「一方そのころ」的なシーンのみに控えます。
そういう小説がラノベだと思っています。
蛇足
あまりラノベだと思われていなくて、しかし個人的に最上質のラノベだと思っている作品がこれです。
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