不動産屋のラノベ読み

不動産売買営業だけどガチガチの賃貸派の人のブログ

「めやす賃料」アンケートをしました

 
 日本賃貸住宅管理協会(日管協)の「めやす賃料」表示制度が10月5日からスタートします。
 
「めやす賃料」とは、礼金だの更新料だの、賃貸契約は地方によって色々あるので、それを月々の支払いにならして比較しやすくする制度です。
 具体的に言うと、礼金がある場合はそれを48ヶ月で割って賃料に加えてめやすにする、というものです。
 ↓くわしくはこちら
 http://www.jpm.jp/sta/sta_02.html
 
 で。
 これが実現すると、たとえば、

 賃料69,000円 管理費3,000円 敷金1ヶ月 礼金1ヶ月 更新料1ヶ月(2年)

 賃料70,000円 管理費3,000円 敷金1ヶ月 礼金1ヶ月 更新料なし

 のような、どっちがオトクか一目で分からないような契約条件も

 賃料69,000円(めやす賃料74,875円) 管理費3,000円 敷金1ヶ月 礼金1ヶ月 更新料1ヶ月(2年)

 賃料70,000円(めやす賃料74,458円) 管理費3,000円 敷金1ヶ月 礼金1ヶ月 更新料なし

 のように、「下の方がオトク!」と比べやすくなるわけです。
 また、日管協の理事さんが「更新料なしへの一里塚」と仰っていたとおり、実質賃料で比較することが当たり前になれば更新料などは自然消滅していく流れになるでしょう。これは良いことではないでしょうか。
 
 さて。
 全国の不動産屋が一斉に対応すればよいのですが、日管協に加盟してない不動産屋は対応しないわけで、当然、「めやす賃料」と「見かけ賃料」との二つの表示が混在することになります。
 日管協としては、わかりやすい「めやす賃料」表示の不動産屋を消費者が選択してくれることを期待しているのですが、果たして実際のところはどうなのでしょう。
 
 というわけで、はてなアンケートしてみました。
 賃貸マンションの選択についての質問です。   全く同じ物件を借りるとして、以下の条件のどれを選びますか? なお、「めやす賃料」をご存じない方は以下のURLに説明があります。 必要であると思うなら参照し、不必要であると思うなら参照しないでください。 http://bit.ly/aRZFG8

大設問

 大設問の表示は以下の通り。

賃貸マンションの選択についての質問です。
全く同じ物件を借りるとして、以下の条件のどれを選びますか?
 
なお、「めやす賃料」をご存じない方は以下のURLに説明があります。
必要であると思うなら参照し、不必要であると思うなら参照しないでください。
http://bit.ly/aRZFG8

賃貸マンションの選択についての質問です。 全く同じ物件を借… - 人力検索はてな

「必要であると思うなら……」と回りくどい説明をしたのは、実際に「めやす賃料」と「見かけ賃料」の物件を見た時に、めやす賃料の説明を全ての人が読むと限らないからです。「参照してください」と書くと、余計な情報を入れてしまうかと思い、表現に注意を払いました。
 

設問1

目的

 選択肢2と3は全く同じ条件で、「めやす賃料」と「見かけ賃料」を並べました。同じ条件の物件があった時、消費者がわかりやすい「めやす賃料」を選択してくれるだろう、という予想をしました。
 選択肢4は、ちょっとひっかけです。選択肢2、3より高くなります。

結果

「めやす賃料」と「見かけ賃料」の表示の比較では、消費者は、同じ物件でも「めやす賃料」の選択肢2を選ぶ傾向が見られました。
 

設問2

目的

 更新料アリとナシの比較です。選択肢2「見かけ賃料」は安いですが、実は「めやす賃料」選択肢3の方が48ヶ月で2万円ほどオトクです。
 昨今、更新料訴訟が頻発し批判を受けている社会状況ですので、更新料に対する嫌悪も考慮して「めやす賃料」選択肢3が合理的に選択されるだろうと予想しました。

結果

 更新料がない選択肢3が選択される傾向が見られました。
 

設問3

目的

 フリーレントを含めた比較です。選択肢2「見かけ賃料」は安いですが、実は「めやす賃料」選択肢3の方が48ヶ月で3.3万円ほどオトクです。
 フリーレントは最近浸透してきていますし、初期費用がぐんと減って入居しやすくなるために、消費者からの需要も高いです。当然、「めやす賃料」選択肢3が合理的に選択されると予想しました。

結果

 フリーレントの選択肢3が選択される傾向が見られましたが、その差はそれ程大きくありませんでした。
 

考察

 まずおそらく言えることは、「めやす賃料」は有利、ということです。
 設問1の全く同じ物件での選択ですが、それでも「めやす賃料」が1.3倍多く選ばれていました。「どれでも同じ」を選んだ人が「めやす賃料」「見かけ賃料」の半々に分かれたとしても、55%は「めやす賃料」を選択することになります。
「めやす賃料」表示制度が浸透して知名度が上がればもっと有利になる可能性も否定できないでしょう。日管協の会員以外でも表示を検討してもいいのかもしれません。
 
 そして次に言えるかもしれない事としては、消費者は概ね賢い、ということです。
 設問2では、更新料がない物件が選択されました。設問3でもそれほど差はつきませんでしたが、「見かけ賃料」にごまかされず、実際にオトクな契約条件を選んでいます。
 更新料を取りやめてその分賃料を上げても消費者はきちんと考えて選択するのであれば、更新料訴訟最高裁判決の如何にかかわらず、更新料をなくすことを検討するのは有力な選択の一つでしょう。
 フリーレントの設問3でそれ程差がつかなかったのは、長期入居を想定した層が存在すれば説明ができます。4年という期間では選択肢3が有利ですが、7年以上入居する場合は選択肢2が有利です。もし、そこまで考えて選択する入居者がいるのであれば、フリーレント物件はそのほかに比べて入居期間が短くなる現象が確認できるかもしれません。
 

結論

 消費者は賃貸契約の条件について、わかりやすい表示を望んでいるということは言えるでしょう。
 そして、わかりやすい表示を公開することによって、そうではない他社と競った時、消費者はそれなりに合理的な判断をし、わかりやすい表示をする不動産屋を選ぶ傾向がある、と思われます。