フラット35Sの数量限定金利優遇はすごいですね!当初10年間1%金利優遇となれば、総額で数百万円の差が出ますよね!
で。
そのフラット35Sの金利優遇を批判している記事があったのですが、どうも納得がいかなかったのでエントリにします。
リーマンショックならぬ「フラット35Sショック」なる言葉が新聞紙面をにぎわせないよう、本コラムで注意喚起しておきたい。
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フラット35Sショック?
こちらの方は、この金利優遇を「ステップ金利であり危険」と批判しています。
筆者はこの支援策がかえって住宅ローン難民予備軍を生み出す愚策とならないか心配している。「金利が変わらない安心」とうたいながら、優遇期間が終わる11年目には自動的に借入金利が1.0%上昇し、結果的に毎月返済額が増える仕組みだからだ。一連の米国サブプライムローン問題で、ステップアップ金利の怖さは誰もが知っているはず。
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公庫時代の1998年(平成10年)10月に史上最低の2.0%で借りた人たちは、その10年後に二段階金利によって4.0%の借入金利を強いられた。この時期が住宅ローン困窮者の続出するタイミングと重なり、その結果、原因が公庫にあるような論調に結びついた。まさに段階金利という仕組みだったからにほかならない。
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サブプライムローン問題や、いわゆる「ゆとりローン」問題を例に挙げて、「段階金利は危険」と主張しています。
しかし、公庫ローンでの破綻者が増えたのは段階金利ではなくステップ返済が原因だと思いますし、サブプライムローンもステップ返済や初期返済猶予が問題だったと聞いています。
では、段階金利とステップ返済は何が違うのでしょうか?
段階金利とステップ返済
公庫「ゆとりローン」のステップ返済は、
- 当初5年間は50年ローンとして扱う
- 6年目以降は残債を規定返済期間で再計算した額を毎月返済
というものです。対して「フラット35S」の金利優遇は、
というものでした。
では、シミュレートしてみましょう。25年固定金利3%*1で3000万円借り入れの想定です。
当初返済額(円/月) | 優遇期間以降返済額(円/月) | |
---|---|---|
通常のローン | 142,263 | 142,263 |
ステップ返済 | 96,593 | 158,637 |
段階金利 | 127,156 | 136,457 |
ステップ返済が優遇期間以降は通常に支払うよりも高い返済額になるのに対して、段階金利は優遇期間以降も通常の返済より低く抑えられています。なぜこのような結果になるのでしょうか。
複利計算の仕組み
これを理解するには、複利計算の仕組みを知る必要があります。
複利の場合、現在の借入額に利率をかけて利息が求められます。そして、月々の支払額はまずその利息の返済に充てられるのです。そして、その残りが元本の返済に充てられ借入額が減少します。
ですから、利息に対して月々の支払額が大きくないと借入額は減らないのです。つまり、利率が高かったり月々の支払額が小さいと借入額がなかなか減らず、返済期間が長くなるということになります。
まとめておきます。
- 利率が高いと借入額が減らない
- 月々の返済額が小さいと減らない
「ステップ返済」は返済猶予
ここで、先ほどの「ステップ返済」の特徴を見てください。支払額を小さくしていますが利率は変わりません。これは借入額が減らないことを意味します。つまり、タダの返済の引き延ばしであり、そのツケは優遇期間終了後に回ってくることになるのです。
一方、段階金利は、支払額はあまり小さくしていませんが利率を下げています。これは借入額が早く減ることを意味していますので、優遇期間終了後も負担が小さいのです。
下のグラフをご覧下さい。
これは1年目の支払いの内訳です。
ステップ返済は返済額が少ないものの、元本をほとんど支払っていないことが分かるでしょう。
一方で段階金利は、返済額が通常よりも少ないにもかかわらず元本の返済額が大きいのが見て取れます。
借り入れ総額の基準は優遇前金利
もちろん、「優遇期間の返済額が少ないと錯覚をして、過剰に借り入れてしまうかもしれないだろ」という意見もあるかと思います。確かに、その点は慎重に考える必要はあります。
しかし、フラット35の借り入れには以下のような条件があります。
年収に占めるすべてのお借り入れ(フラット35を含みます。)の年間合計返済額の割合(=総返済負担率)が、次の基準を満たしている方
http://www.flat35.com/guide/outline/index.html
年収 400万円未満 400万円以上 基準 30%以下 35%以下
年収400万円を超えている人は、返済額が年収の35%を超えてはいけないのです。月々に直すとおよそ11.7万円を超えるようなローンは組めません。
そして大事なことは、この返済額の基準は優遇前金利で計算するということなのです。優遇金利2%で計算した2750万円が限界なのではなく、通常金利3%で計算した2460万円が限界なのです。
つまり、優遇金利を受けて受けなくても、借入可能額の上限は同じということです。もちろん、住宅金融支援機構が貸したからといって安全な借入額というわけではありませんが……
そういったわけで
以上のように、ステップ返済や返済猶予と段階金利は違うものです。そうであるのにサブプライムローンなどを引き合いに出して警鐘を鳴らすのは若干行き過ぎではないかと思います。
たとえば、総返済額の4529万円を単純に420回(12カ月×35年)で割って、35年間変わらず毎月10万7833円(4529万円÷420回)を支払っていく返済方法にできれば、段階金利の弊害は解消される。
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こういった意見はうなずけるところもあるのですが、しかし、それを言ったら民間の金融機関は当初優遇だらけですし、3年固定や変動金利なんてもっての外、ということになってしまいます。その意見はどうなのだろう。