こんな調査結果がありました。
ペット不可の賃貸マンションに居住中で、できればペットを飼いたいと思っている居住者に、「もしあなたのマンションが、追加家賃を払えばペット可になるとすれば、月々いくらまでなら追加家賃を支払いますか?」と質問したところ、ファミリー・単身者タイプのマンション居住者のどちらとも「支払わない」が30%を超える結果となった。「支払う」との回答も、「月1,000円まで」から「月5,000円まで」が大きな割合を占めている。
ペット可マンションに払える追加家賃、「5,000円まで」が大多数/碓井不動産鑑定士事務所調査|R.E.port [不動産流通研究所]
で、元資料に当たってみようと思って、こちらのページからPDFをダウンロードして読んでみました。
2. アンケートの方法
アンケートは、インターネットによるアンケート・サービスを利用して行った。回答数・母集団は、質問項目により異なるが、各質問とも概ね200 名程度の有効回答が得られた。
インターネット? そういえばどこかで見たような。
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ていうか、はてなでした(w
ちょっと質問の形式がよくないですね。はてなのアンケートは、ポイント稼ぎのユーザーが1番目の選択肢を読まずに選んでくる傾向があるので、調査結果に影響を与えないように除外できる選択肢にしておく必要があるんです。以前、私が質問した更新料のアンケートでも、そのような対策をしていました。
だから、この結果は微妙というか、ちょっと歪んでるおそれがありますね。
一応、アンケートの結果が信頼できるものとして、以下、続けます。
ペット可マンションは全く割に合わない
既存物件のオーナーが、規約を変更し『ペット可』とする際は、全テナントに対し一律の条件で追加家賃を提示することが現実的であることを考えると、理論上は、『以下のグラフに示された累計値(%)×金額が最大になる点』が、オーナー側から見て最も効果的な追加家賃の設定額ということになる。
(グラフ略)
これをまとめると、下表の通りとなる。ファミリータイプ・単身者向け共に、理論的には『5,000 円の追加家賃を提示すること』がオーナー側の利益を最大化することになる。
と、マンションをペット化する場合の最適戦略を「賃料5,000円アップ」と計算されています。
そして、その利益を以下のように見積もっています。
ファミリータイプで649 円・単身者向けで543 円であり、ペット可にすることによるリスク(維持管理費・リフォーム費用等の増大等)も勘案すると、オーナー側からは魅力に乏しいシナリオと言えるだろう。
これはびっくり。魅力に乏しいとかいうレベルじゃないですね。「賃料5,000円アップ」で得られる利得が600円そこそこということは、機会損失が80%ぐらいあるということです。そして、この利得計算は元賃料を原点としていますが、80%の機会損失のなかには「空室」つまり利得がマイナスになってしまう事があるはずです。想定となる元賃料が非明示ですのでどれほどのロスになるのか計算するのは困難ですが、現実にはマイナスではないでしょうか。
(3).ペット可にすることによる空室率上昇の可能性
次に、今後1 年以内に賃貸マンションに引越予定(希望)の方々を対象として、「あなたはペット可のマンションについてどう思われますか?」という質問を行うことにより、ペット可に転換することによる空室率上昇の可能性を調査した。
(略)
・「家賃が高くても住みたい」・「同じなら住みたい」という賛成派が39.5%
(略)
・「家賃が安くても住みたくない」・「家賃が同じなら住みたくない」という反対派が36.5%
なんと、ペット可にすることによりお客様の1/3強が逃げてしまいます。そして呼び込む事ができるユーザーもほとんど変わらないのです。
つまり、ペット可にしてもユーザーを取り込むことは期待できない、ということです。
現時点においては、賃貸経営改善の一環としてペット可への転換を図る場合には、入念な市場調査を踏まえた上で慎重に行うべきと言えるであろう。
おそろしい結論ですよね。古くなって入居率が悪くなったアパマンをペット可にして入居促進しよう、というのは我々の中では良く使われる手法だったのですが、実は筋悪なのかもしれないのです。
それどころか、ペット可マンション自体が全く割に合わない、ということになればオーナーが合理的に判断すればペット可マンションが減少しついにはなくなってしまう、ということになりかねません*1。ああ、なんて恐ろしい。
余談ですが、「『5,000 円の追加家賃を提示すること』がオーナー側の利益を最大化する」という結論には微妙に異論があります。アンケートの回答でデータが離散的ですので、本当の最適賃料は5,000円近傍にあると思われます*2。実際に2,500円と5,000円の間のポジティブ回答率がリニアに変動すると仮定すると、単身者の「3,750円アップ」という選択は「5,000円アップ」の利得を上回ります。もちろん、グラフから見るにリニアな変化ではないだろう事がうかがえますので、この私の概算は間違っているのですが、もし5,000円を下回るならばさらによくない結果ということになります。