不動産屋のラノベ読み

不動産売買営業だけどガチガチの賃貸派の人のブログ

フリーレント物件が見つからない理由

 
 id:ululunさんに呼んで頂いたので、せっかくだからエントリを書きます。
 

近頃の賃貸マーケットは、供給過剰で空室が目立ち気味。そのため、賃料を下げて入居者を探している物件も多くみられます。でも、フリーレントにする物件は、賃料は下げず、その分○ヵ月分の家賃をタダにしています。それはなぜでしょうか?
理由は2つ。

フリーレント物件って本当にお得?なぜやるの? [部屋探し・家賃] All About

 

フリーレントとは

 入居時に、一定の期間賃料を免除する特約です。「フリーレント(FR)1ヵ月」は、最初の1ヵ月分家賃がタダ、という意味です。つまり、ひとことで言うと「マイナスの礼金です。
 

オーナーがFRをする理由

 記事の中では、表示賃料を下げないことによって「既存居住者からの減額請求を防ぐ」「見た目の利回りを高く保つ」というのがフリーレントのメリットでした。見た目の利回りを操作して売却しやすくする、というのは目からウロコが落ちましたね、そういう発想はなかった。
 
 さて、ここでは常識的なオーナー側からのメリットを挙げます。
 フリーレントは、ひとことで言えば「入りやすく出にくくする」効果があります。オーナーの心理としては、「入居しやすく退去しづらい」物件が理想です。
 引越しというのは、通常、手持ちのまとまったお金が必要になってきます。8万円敷礼なしの物件でも契約時に20万円ぐらいかかりますし、引越し費用がさらに乗ってくるわけで、30万円弱。初期費用が「入りやすさ」の障害になります。この物件で、たとえば仲介手数料無料FR3ヶ月すれば、入居時に20万円程度で済みますし、浮いた住居費で初期費用も補填する事ができるわけです。
 つまり、FRには「入りやすく」する効果があり、後述する理由によって短期間で「出にくく」なっています。これがオーナーがFRを設定するメリットです。
 

FRが見つからない理由

 まず、はじめに「フリーレント」の見つけ方ですが。フリーキーワード検索ができる「CHINTAI」とか「いえーい」で検索するといいと思います。地域によっては、割とヒットしますよ。ガイドの加藤社長は「レンターズ」という会社の人なんですが、HOMESのグループ会社なのでライバルのポータルをおすすめしたくなかっただけでしょう(w*1
 
 さて、FR物件が見つからない理由ですが。
 オーナーとしてはFRなしで契約できた方がいいから、です。FRなしでも住んでくれる人がいれば、当然そちらで契約したい。ですから、オーナーさんは不動産屋に「FRも交渉オッケーだからお願い」と募集依頼します。業者はネットの広告などでは表示せず、問い合わせがあったときに様子を伺いながら、「物件は気に入ったけど予算オーバー? フリーレント交渉してみましょうか?」とかやるわけです。
最初からウリ文句にしとけば問い合わせ増えるじゃん、馬鹿なの?」と思う人もいるかもしれません。
 その辺には、不動産業界の構造に理由があります。
 オーナーからの募集で「FR1ヵ月または広告費1ヵ月」というのが結構あるのです。広告費とは、業務委託費とか呼んだりもしますが、要はオーナーから客付けした業者へのキックバックですね。業法的には#606060ぐらいのグレーな行為ですが、基本的にオーナーとしては業者から顧客に紹介してもらわなければ始まらないので、営業へのインセンティブとして、まあ、よくある話なんですね。つまり、「FR1ヵ月または広告費1ヵ月」というのは、「FR1ヵ月オーケー。FRを使わなかったら、その分バックしますよ」という意味なんです。
 これでは、業者が広告に「フリーレント」を謳わないのは当然ですよね。
 

使用上の注意

 最後に注意点を。
 たとえば、FR半年で半年以内に退去されると、オーナーは馬鹿みたいですよね。なので「短期退去の際はFR分の家賃を請求する」という特約が普通ついています。期間は契約によってまちまちですが、半年〜2年ぐらいです。つまり、短期間で「出にくく」なっています。転勤が多い方にはFRのメリットはあんまりないかもしれないです。契約の際は特約条項をチェックしましょう。
 で、上記の特約なら感覚として「まあ、そりゃそうだよな」的な特約ですが。たまに見られるもので「滞納があったときは請求する」という特約があります。まあ、普通「滞納による契約解除」のために入れている条項なんですが、トラブルの例もあるらしいです。
 
 
 
 以下余談。

更新時にフリーレントすればいいのに

 アパマンで解約が出やすい時期は、更新の時なんです。「更新料取られるなら、いっそ」という心理が働くんでしょうね。
 なので、更新の際にフリーレントをすればどうでしょうか。

契約の更新期日が到来し甲乙異議無く更新が行われた場合、甲は次月賃料の請求を1年間留保する。この請求権は更新期日の1年後に消滅する。ただし、乙が更新期日の1年以内に解約を申し出た場合、留保された賃料分を直ちに支払わなければいけない

 ↑みたいな。「更新時期から1年以内に退去するなら更新料とるよ、それ以上住んでくれるなら更新料とらないよ」という特約です*2。けっこういいと思うんだけどなあ、どうですか、オーナー様*3

*1:ネタですw いや、レンターズは多機能で良好な営業支援ASPですよ

*2:さらに進めて「マイナスの更新料」ってのもアリだな。退去しようとすると突然賃料2ヶ月分ぐらいの請求がくるから、かなり引越ししづらいよ(w

*3:法的に有効かどうか分からないので、自己責任で