不動産屋のラノベ読み

不動産売買営業だけどガチガチの賃貸派の人のブログ

「中古vs新築」本当のシェア、の本当のところ


 
 パンダ不動産さんがこんな記事を書いてました。
「中古vs新築」本当のシェア|札幌の不動産屋日記
 
 内容としては、国土交通省の「中古住宅・リフォームトータルプラン」に対する批判です。その中でも「中古住宅流通量のデータがでたらめである」ということに力点を置いています。
 
 
 
 で。
 その批判が拙速である、と感じましたのでエントリを上げることにしました。例によってなんか間違いがあれば例によってつっこみの程よろしくお願いします。
 

「住宅・土地統計調査」は不動産屋への聞き取り調査ではない。

総務省が作成した住宅・土地統計調査と国交省の住宅着工統計から計算しているらしいですが、その集計方法が正しくないのだと思います。
着工は確認申請をベースにしているのでしょうから正しいでしょう。
が、中古売買の件数は聞き取り調査だと思いますし、ちなみに、パンダ不動産は総務省から聞かれたことがありませんし、もし聞かれても、正確な数字を報告するとは限りません。
また、仲介業者を通さない売買も多数あります。

 パンダ不動産さんは、「住宅・土地統計調査」は不動産屋への聞き取り調査だと思っているようですが、勘違いです。

調査期日において調査単位区内から抽出した住宅及び住宅以外で人が居住する建物並びにこれらに居住している世帯(1調査単位区当たり17住戸,計約350万住戸・世帯)を対象とした。

統計局ホームページ/平成20年住宅・土地統計調査 調査の概要

 ということですから、全国350万世帯を抽出し調査しています。出典が明らかにされているのでググれば気づけたと思うのですが。
 
 
 
 さて、出だしから間違っていたのでそれ以下の考察はそれほど意味がないと思うのですが、なかなか面白いことも書かれていたのでせっかくですから目立った部分を見てみましょう。
 

登記統計の件数と個数について

最も信用できるのが、法務局の登記です。
新築でも中古でも、所有権を登記するケースがほとんどですので、この数字をナゼ使わないのか不思議です。

 と、中古住宅流通量として売買を原因とする所有権移転登記を用いる考えを示しています。分かりやすくグラフにされていたので、引用させていただきます。

 とても分かりやすいですね。私も別のグラフを書いてみました。

 登記統計には「件数」と「個数」という数字があります。たとえば、平成22年の売買による所有権移転登記は「件数」が約30万、「個数」が約53万です。パンダ不動産さんが書いたグラフは「個数」、私が書いたグラフは「件数」を基にしています。
 で、「件数」と「個数」は何が違うの、という話ですが、法務省によると、

2 登記事件の「件数」は,申請又は嘱託情報ごと,かつ,登記の目的ごとに1件として計上しています。
(中略)
3 登記事件の「個数」の計上方法は,次のとおりです。
(1) 不動産登記   土地の筆数又は建物の個数

法務省:【登記統計】

 ということです。例を挙げると「建物2戸をひとつの申請で移転登記すると、件数1、個数2」ということでしょう。
 ここで思い出していただきたいのは、いま考えていることは「中古住宅流通量」についてです。個人間の中古住宅売買で「1度に2戸」売買することはまれです。もちろん、田舎の農家住宅などですと別棟が別筆になっていることがあります。しかし、それって「中古住宅流通量2戸」と考えるべきなのでしょうか?
 

売買による移転登記の件数=中古住宅流通量、ではない

 また、売買による移転登記の件数がそのまま中古住宅流通量ではありません。
 パンダ不動産さんも触れていますが、

もちろん、この中には工場やビルなども含まれていますが、新築の割合を知るのには参考になるでしょう。

 ということもあります。しかし、見逃していることもあります。以下のような場合でも売買による移転登記の件数として集計されるでしょう。

  • 不動産業者による買取・転売
  • 投資用物件のオーナーチェンジ

「不動産屋AがB氏から分譲マンションを買い取った。不動産屋Aは不動産屋Cに転売。不動産屋Cは賃貸として入居者を入れた後、投資物件としてD氏に売却」は移転登記が3件ですが、中古住宅流通量としては何戸とカウントすべきなんでしょうねえ。
 
 逆の要素もあります。中古戸建のかなり築年数が経っているものには未登記のものがあります。これは登記統計では漏れ、住宅・土地統計調査ではカウントされる数字でしょう。
 

いろいろ補正するぐらいなら「住宅・土地統計調査」を用いればいいんじゃないかな。

 というわけで結論なんですが、↑のとおりです。登記統計を中古住宅流通量の参考とするにはいろいろな補正が必要でして、そこまでして使うべき数字なのか、私は疑問です。
 

「中古の方が多い」という感覚について

私の実感として新築のシェアが低そうだと判断したのは正しかったようです。

 これは、まあ、感覚の問題なのでちょっと分からないですが、「実感として新築よりも中古の取引の方が多い」ってほんとですか?
 いや、もちろん、ウチも仲介屋なんで、建売と中古を比較すると中古の方が多い感じです。
 でも、宅地の取引を加えると逆転する感じなんですよねえ。「建売+土地」7に対して「中古戸建」3ぐらいでしょうか?
 これにわれわれ仲介屋がほとんど全く手を出せない「土地あり客の注文住宅」があるわけですから、中古は2割って言われてもあんまり驚かないなあ。
 
 いや、ま、地域によって違うでしょうから札幌では中古流通が盛んなのかもしれないです。それは素晴らしいことですね。