gigazine.net
www.power1.co.jp
これの件。
casmさんが詳しい解説を書かれているので、ご参照いただくといいかと思います。
anond.hatelabo.jp
で。
既に地主は第三者と売買契約をしている様子ですが、不動産屋的には、これ、表に出ている地主側業者じゃなくて、買主は今ごろ何を考えているのかな、と思うわけです。
以下、不十分な情報による憶測です。おそらく実際には違う事情があるのだと思います。
なお、私は、宅地建物取引士とその上位資格の不動産コンサルティングマスター*1を持っていますが、法曹の資格を持っていないので、そのつもりで読んでください。
前提
仮に、地主の主張が全て正しく、
- 10年以上前に借地を合意解約しており、書面もある。
- 10年間以上、地代を受け取っていない。
とします。
普通に建物収去土地引渡命令が出るはず
書面が有効であれば合意解約されていることになり、借地権が存在しないです。
書面が無効であっても、10年以上地代を払わないなら、相当の期間を示して催告をした上で解除できるはずです。
建物にも誰も住んでいませんし、裁判をすれば普通に建物収去土地引渡命令が出て、強制執行で取り壊しができるでしょう。
なぜやらないのかな?
自力救済をすると、建物収去土地引渡命令が出なくなるかも
そういった状態ですが、現状のように勝手に壊してしまうことをすると、建物収去土地引渡命令が出なくなるかもしれません。
ちゃんと法的手続きを取れば(費用と期間はかかりますが)土地が戻ってくるのですから、これは地主にとって無用のリスクであるように思います。
移転登記は難しい
では、借地の合意解約があるのだから、それを登記原因として建物の所有権移転登記ができるかというと、それは難しいでしょう。
まず、10年以上前の解約合意書を建物所有権移転の登記原因情報にできるか、というと厳しい。
そして、登記義務者はGIGAZINE側にあるので、山崎恵人氏の承諾と実印が必要になります。これが絶望的でしょう。
「職権による滅失」ができれば、第三者への対抗要件を失わせることができる
詳細はcasmさんの記事を読んでいただければいいかと思いますが、建物登記を滅失してしまえば、地主から土地を買った新たな所有者に借地権を主張できなくなります。
これは、買主にとって大きなメリットでしょう。
第三者への対抗要件は、第三者への対抗要件である
ただ、あくまで第三者への対抗要件は第三者への対抗要件です。当事者間においては借地権を主張することができます。
なので、勝手に壊して「職権による滅失」をしても、地主はあまり恩恵を受けないのです。
売主ではなく、買主にとっていいことしかない
今回の一連の行動は、やっかいな借地関係から買主を隔離し「売買はもう終わってるので面倒ごとはそっちで解決してくださいね」と売主に丸投げしているように見えます。
これが地主単独で動いているなら、「ああ、地主さん素人判断で下手打ったね」で終わるのですが、借地に詳しそうな不動産屋が動いているということは……ねえ?
追記
あの土地を父が地主の彼女から買っていたということである。その証拠も出てきた。
keisui.com
おお。
本当にそうなら、買主が「地主を焚きつけて建物を取壊させた、つもりが、実は地主に二重売買に当て込まれていた」みたいなシナリオが読めなくもないですね。
いやあ、これだから不動産って楽しいですよねえ。
*1:問題は難しいけど、正解率6割ぐらいで受かるので合格率5割ぐらい。つーか、名前が怪しすぎるよね……