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不動産屋のラノベ読み

不動産売買営業だけどガチガチの賃貸派の人のブログ

「日当たり」についてよくある誤解2(日当たりが良いってどういうこと?)

 
 前回のつづきです。今回は話の方向がちょっと行ったり来たりします。
 

南側の部屋の日差しについて

 「日当たりに除菌効果を期待できるか」という話でしたが、では仮に遮る物が全く何もなかったとして、南向きの部屋にはどれだけ直射日光が入るのでしょうか。マンションなどですと、南側の窓にはベランダが付いていて普通はひさしがあります。このひさしがどれほど日光を遮るのか、計算してみましょう。
 ベランダの奥行を0.9m、ひさしの高さを2.8mとします。
 こよみの計算(日の出入り、月の出入り、南中時、太陽・月・惑星の高度・方位など)
 ↑こちらによりますと、本日(6/12)の東京(北緯35.658)の南中時の太陽高度は77.5度です。つまり、tan(90-77.5)*2.8-0.9[m]が部屋の中の日差しの長さということになります。計算すると(tan((90-77.5)*pi/180)*2.8-0.9 - Google 検索)、およそマイナス0.28m、つまりこの時期の南中時の日差しは部屋の中に入ってこないんですね。
 ついでですので、部屋の中に日差しが入る太陽高度を逆算してみます。

日差しの長さ[m] 太陽高度[度]
0 72.18
0.5 63.43
1 55.84
1.5 49.39
2 43.99
2.5 39.47
3 35.67
3.5 32.47
4 29.74
4.5 27.40
5 25.38

 8帖間の奥行は約2.7mですので、太陽高度が35度の時に日差しが満ちることになります。時刻は16時ちょっと前、太陽方位は270度ぐらい。ほぼ真西です。これは日差しというよりも西日です。
 また、最近の流行ではバルコニーの奥行が容積不算入ぎりぎりの2.0mですので、この場合はもっと日差しが入りません。
 ただし、ちょっと脱線しますが、「じゃあ、ひさし取っちゃえばいいんじゃね?」というは間違っています。東京の冬至の南中高度はおよそ31度ですので、冬は日差しがおよそ3.7m入ってきます。暑い夏に遮り寒い冬に通すのがひさしの効果。むしろない方が困ります。
 
 まあ、そんなこんなで、直接部屋に入ってくる日差しは少なく、「日当たりが良いとカビが生えにくい」ということはあまり言えないんですね。
 

「日当たりが良い」ってなんだろう?

 さて、前述のとおり、南側に遮る物がない時は冬場に部屋の中に日が差して暖かくなるという効果が期待できます*1。熱源としての日当たりでしたら「日当たりが良い=日差しがある」でいいのですが、しかし、光源として考えると一概に日差しがあることが良いこととは言えません。
 たとえば、仕事場などで窓から日が差してきたらブラインドを閉めませんか? 直射日光が差してくるのは冬場であっても仕事がしづらいはずです。また、電車に乗っているとき、日が差してくるとロールカーテンを閉めませんか? あるいはレストランなどで食事をしてる時に窓から日が差してきたら?
 ひなたぼっこをしたい時は良いですが、そうではない時には太陽の光は強すぎる事が多いのです。
 では、何故そのように感じるのでしょうか。
 

環境光とは

 宇宙空間の映像、月面の写真とかでもいいですが、ご覧になったことはあるでしょうか。明るいところがくっきりと明るく、暗いところはほとんど真っ黒、というコントラストが効いた写真になっているはずです。これは宇宙では光源が太陽しかないため*2、太陽の光が当たっていれば明るく日影はほとんど見えなくなってしまうからです。
 ところが、地上では違います。太陽からやってきた光は空気中の水蒸気やチリに散乱され、地面で反射し、また空気中で散乱します。つまり、直接の太陽光以外にもあちこちから光がやってきます。これを環境光といいます。この環境光が明るい方が直接の太陽光よりも心地よく感じます。
 試して頂きたいのですが、日差しが窓から入ってきてる状態でレースカーテンを開け閉めすると、部屋全体としては閉めていた方が明るく感じます。これは、レースカーテンによって太陽光が散乱され環境光が明るくなる効果もありますが、太陽光が強いとその明るさに目が順応して、暗いところがより暗く見えてしまうからなのです。
 つまり、光源としての日当たりは「日当たりが良い=環境光が明るい」ということなのです。
 

太陽光を反射させよう

 では、環境光を明るくする為にはどうしたら良いのでしょうか。当たり前の話なのですが、太陽光を反射させるとよいです。
 一番ありふれているのは、ベランダに当たった太陽光の反射光ですね。たとえば、レフ板をベランダに置くと部屋の中、特に天井付近が格段に明るくなります。もちろん、常にベランダにレフ板を置くわけにはいきませんが(w
 太陽光がどこで反射してるのかに注目すると、日当たりの良し悪しに対する考え方が変わってきます。
 たとえば、ベランダには太陽光が落ちていても、南側敷地にある駐車場に隣りのマンションの影が落ちていると、地面からの反射光が減り、暗く感じます。また、同じマンションでも、高層階になればなるほど地面からの反射光を受け取りづらく、意外と暗く感じることがあります。
 北側部屋が暗く感じるのは、直接の太陽光がないももちろんですが、そのマンション自身が目の前に影を落としているため環境光が暗くなるからです。逆に、高層階の北側部屋で目の前にマンションがある場合、そのマンションからの反射光が入って思ったよりも明るい、という事があります。
 それから、ベランダの手すりが柵になっていれば環境光を取り込みやすいです。もっともこの場合、西日を遮る機能もなくなるので一長一短ですが。
 

ライフスタイルで日当たりを選ぼう

 そもそも論に戻ってしまいますが、「仕事が忙しくて自宅には寝に帰るだけ」なんて人には日当たりなんて必要ないんです。前回のエントリの通り、日当たりが悪くてもジメジメしないですし、洗濯物だって意外と乾きます。部屋干しに必要なのは風通しと湿度差です。サーキュレータと除湿の併せでよく乾きます。
 「朝起きて暗いのはイヤ」ならなら東向きの部屋を選べばいいです。この場合、西側がキッチンになって普通は良くないですが、通路側窓は小さくなっていく傾向ですし、そもそも料理をしないならあんまり関係ないです*3
 日当たりを気にする人でも、「冬の昼間にぬくぬくしたい」とか「ひなたぼっこしたい」とかいう動機がない限り、部屋の中への日差しは気にしなくていいです。むしろ、目の前の敷地に影が落ちるかを気にしましょう。
「俺はとにかく太陽に当たりたいんだ!」という人は、引きこもってないでまず外に出ましょう。部屋の中に太陽を期待するより、全然効率がいいです。
 
 欧風住宅なんかを見た人は分かるかもしれませんが、あちらの建築はむしろ「日差しを部屋に入れたくない」と思ってるんじゃないか、という設計のものがあります。欧州は高緯度で日差しが奥まで入って来やすいからかもしれません。一見、日本とは発想が違うように見えますが、実は日本の建築も南側には縁側があり、そこに一度太陽光を当てて部屋の中に取り込んでいます。直接の太陽光を嫌っていることは共通しているように思えます。
 
 つまり、一番言いたいのは「南向き信仰」やめようぜ、ということです。
 

まとめ

  • 日当たりが悪くてもジメジメしないよ
  • 結露を防ぐには換気と断熱
  • ひさしは超大事
  • 南側敷地に影が落ちると暗い
  • 北向きでも意外と明るい部屋もあるよ
  • ひなたぼっこは外でやれ

 
 
 
 まあ、なんか、とりとめがなくなってしまいましたね*4

*1:もちろんその分夏場は暑くなりやすいが

*2:実際には地球の付近では、地球がとても明るい光源です

*3:冷蔵庫に西日が当たって冷えが悪くなるとかはありますが

*4:こういう事をお客様に熱く語っていると逃げられます。同業の皆様は注意