id:kyomoeさんから前回の記事に応答を頂きました。
ブクマでお返事したんですが、読み返してみるとなんか上から目線で感じ悪い書き方をしてしまったなあと思ったので、記事にします。
そういうわけで、一応解説を加えながら書いていきますがそれでもほぼ私信になりそうですので、流れを追っていない方は読んでも意味が分からないこともあるかと思います。ご了解ください。
まず前置きから。
名誉毀損と個人情報保護法とプライバシー
名誉毀損とは誹謗中傷をして他人の社会的評価を下げるようなことをいいます。
ただ、社会的評価を下げないような行為でも、たとえば「休日に庭でガーデニングをしている」写真を勝手に公開されたりしても特にその人の信頼を傷つけるものではないですが、やっぱりイヤなものです。ですので、名誉毀損には当たらないけれど私的な事柄をみだりに公開するのはプライバシー侵害となります。
個人情報保護法は、すごいざっくりと言うと「事業者がプライバシーを侵害しないためのツール」みたいなものです。ですので「個人情報保護法における個人情報」ではないものを公開することによってプライバシー侵害が起きるということも当然にあります。
プライバシーと公開情報
そういうわけでプライバシー侵害は「私的な事柄を公開」することによって起こりますので、逆に言えばすでに「公開」されている事柄についてはプライバシーを侵害しません。
しません、と書きましたが、取り扱い次第ではそうならない、と私が学んだのが前回の記事でした。
であるならば、ブログやSNSのテキストのようなウェブに公開されているような情報についても、取り扱い次第ではプライバシー侵害となりえるのではないか、と私は考えました。
そして、これに対してのきょうもえさんの応答がこちらです。
でも洗濯物は公開情報じゃないよなあ。
「洗濯物は公開情報」みたいな話を見た時の俺の気持ち - 今日も得る物なしZ
お前に見せるために干してるんじゃないよっていう。
洗濯物とテキストを同一視されてもなあとも思う。
テキストを人に見せようと思わずにアップロードするという人間がいるのかどうか。
で、ここからが、それに対する応答です。
公開情報かどうかが争点ではないのではないかな
たぶん、そこは公開か否か、という問題ではないのではないかな、と思います。
ソースがウィキペディアで恐縮ですが。
「私生活上の事実または私生活上の事実らしく受け取られるおそれのあること」「一般人の感受性を基準にして当該私人の立場に立つた場合公開を欲しないであろうと認められること」、「一般の人々に未だ知られていないことがらであること
プライバシー - Wikipedia
公開非公開の別よりも、「当該私人の立場に立つた場合公開を欲しないであろうと認められること」の方が重要かな、と。ブログの文章は「公開を欲しないであろうと」認められないでしょうし、ベランダに干したパンツは認められると思います。
「お前に見せるために」を一般化してしまうと、そもそも「お前に見せるために建てたんじゃないよ」という理屈も可能なように見えますので*1、そちらに注目するより筋がいいんじゃないかな、と。
ネット上のプライバシーについては継続的な見直しが必要
そう考えると、公開されていたテキスト、たとえば、クローズドなSNSのコピペ、後から限定公開したブログのコピペ、削除したエントリの魚拓やスクショ、なんかは文脈によってはプライバシー侵害となりえるだろうと思うんですね。
また、テキストや写真を持ってくなくてもプライバシー侵害は可能です。実在の人物の名前を挙げて「AがBをいじめた」みたいな虚偽の内容を真に迫ったストーリーとして作成すればプライバシー侵害になるのではないでしょうか*2。
個人的な考えですが、この方のこの記事↓なんてストーリー作成系のプライバシー侵害だと思いますね。
デーブ大久保というのは、あんなふうに見えて、実際は、「イジメの技術」を利用して世の中を渡ってきた人なのではないか、と僕は思っている。
世の中には、天性の「イジメ上手」がいる。 - 琥珀色の戯言
イジメられていたのが、抽選の末にようやく西武が引き当てた、ドラフト1位のゴールデンルーキーだというのも、いかにも、という気がする。
傍からみれば、「注目される選手をイジメるなんて、バカじゃないの?」という印象なのだけれども、西武というチームの中からみれば、「高い契約金をもらって、マスコミからも注目されている、妬ましい異物」でしかない。選手たちのそういう気持ちを、大久保という男は、ちゃんと知っていたのだ。
「ちゃんと知っていたのだ」って。
自分だったらこんな感じで取材もなしに邪推されて悪役に仕立て上げられるのイヤですもん。読んだ当時、心底クズの書く記事だ、と憤ったものですが、ブコメを見ると気にしてる人はほとんどいないようでした。
このように、プライバシーに対する感覚というのは人によっても異なってくるはずです。
で。
インターネット上、といいますか情報処理技術の向上とともに、今まで考えもしなかったプライバシー侵害が起きてくると思います。武雄市立図書館問題やストリートビュー問題など、そういう新しいプライバシーに対する考え方を議論する際は、自分と相手との差異を認めながら表現の自由との衝突を鑑みつつ検討していく必要があると思います。
きょうもえさんのエントリはやはり筋悪としか
そういう事情の下、大元のエントリを見ると、過去の著作権侵害事件のことを大きく取り上げているわけです。
言うまでもないですが、過去に著作権を侵害した者が写真撮影をするとプライバシー侵害となりやすい、などということはありません。個人的には印象を操作しているようにも見えます。だから、筋が悪いと思います。
が。
ココまで書いて思い出しましたが、初めにブロックして対話を拒否してきたのは向こうだったんですよね……。きょうもえさんも普通の感じで話しかけてますし、ああいう対応されるとムカつくのは分かりますね。ブロガーとしては戦闘体制に入ってしまいますよね、それが読者の共感を失うとしても。
あと。
このエントリを書いてもう一回デリポの記事を読んでみたんですが、うーん、たしかにやりすぎかも。いろいろ考えている内に自分の感覚も変わってきたのかもしれないですね。
そういうわけで、もう一度、言及エントリを読み直してみました。
お前に見せるために干してるんじゃないよっていう
「洗濯物は公開情報」みたいな話を見た時の俺の気持ち - 今日も得る物なしZ
うん。
うーん、でもなあ、まーなあ。