むかしむかしあるところに、北風と太陽が大家業を営んでおりました。北風も太陽も本業はサラリーマンでしたので、不動産を買って不労所得を得て早く社畜生活から抜け出したい、と一生懸命に自分の物件をバリューアップしておりました。
ある時、北風と太陽は「どちらの不動産経営が優れているか」で言い争いとなりました。さんざんツイッターで煽り合いましたが決着がつかなかったので、力試しをすることになりました。
北風 「よし、じゃあ、あの退去した入居者からクロス交換代を奪ってやろう。それ、入居者よ、敷金は全て原状回復で使い切ったぞ。1銭も返さないぞ。ぴゅーっ」
入居者「うわ、明細のない請求書がFAXされてきたぞ。悪徳大家だな、絶対に取り返してやるぞ」
北風は、ちからいっぱい敷金と原状回復費用が同額である旨を通知しましたが、入居者は敷金診断士に相談するなどして訴訟も辞さない構えです。
さすがの北風もついには根負けし、内容証明郵便のとおり敷金を返還してしまいました。
太陽 「ふふふ、どうやらダメだったようだね。ここは大家検定2級のぼくのやり方を見ててごらん」
太陽 「さあ、そこのあなた、北風マンションを退去したんだってね。ぼくの太陽マンションにおいでよ。今なら入居時に好きなデザインの壁紙と張り替えてあげるよ。『カスタマイズ賃貸』って、最近流行ってるんだよー」
入居者「えー、好きなデザインの部屋になるの? これはすごい」
太陽 「そうなんだよ。今はもう大家の言うなりになる賃貸マンションなんて時代遅れさ。自分の住まいは自分でデザインしないとね。自分らしい賃貸、それが太陽マンションさ」
入居者「自分らしい賃貸かー。いいね、未来を感じる。日本の不動産業界も少しはマシになってきたのかな?」
太陽 「もちろん、クロス交換代はいただかないよ! あなたが選んだ壁紙だもんね! あ、でも、壁紙代として入居時に5万円かかるよ。自分らしい部屋のための投資だと思ってね」
入居者「すごい! 原状回復費用も国土交通省ガイドラインどおりだ。こういう大家さんがもっと増えればいいなあ!」
北風 「」