不動産屋のラノベ読み

不動産売買営業だけどガチガチの賃貸派の人のブログ

住宅ローンはリスクテイクです

住宅ローンをリスクだとしか思っていない人にもの申したいです。

「逆だよ!逆!ギャグかよ!」と。

今回は、こういう頭の硬い人に26歳で中古マンションを買ってフルリノベーションした僕が、意見したいと思います。

 
 お、「持ち家vs賃貸」論争ですね。
 大好物なので、各章ごとにいちいち言及します。
 

「住宅ローンが組めること」こそ、サラリーマンの特権

気づいてください。あなたが住宅ローンを借りられるのは会社員として社会から一定の信用があるから。

 そのとおり。もし転職や独立予定なら借りられるうちに借りておくのも手です。
 
 ただ、ローンで購入した不動産を売却する場合、下手をすると10年ぐらいは売却価格をローン残高が上回ります。足りない分は現金を用意してローン完済しないと売却できません。
 売却できない場合、引っ越しができませんから、所得減に合わせて住居費を圧縮するということが難しくなります。*1
 
「住宅ローンなんて借りてクビになったらどうするの?」と言っている人は、こういった所得減を心配しているので、「借りられるうちが花」という回答は言っていることは正しいのですが、ポイントがズレていると思います。
 
 
 
 なお、これに対する対策は、現金を用意してローンをいつでも返せるようにしておくことです。
 

イケダハヤトがこんなこといってた

35年借金返すの?バカなの?という考えには「何も考えずに60年家賃払うのはまともな神経なのか?」と問いたい

 えーと。
 
 ちゃんと彼の記事、読みました?
 このつっこみは明らかにおかしいです。
 イケダハヤトさんは

これからの時代は、安い家・小さい家を、一括ないし短期のローンで購入するのが一般的になっていくでしょう。

サラリーマンが「35年ローン」とかありえないだろwww : まだ東京で消耗してるの?

 と書いていますよ。家を買うって主張してる人に『何も考えずに60年家賃払う』って反論は、いったいぜんたい、どこからひねり出してきたんです?
 
 ローンが残った持ち家と、自己資金で買った持ち家なら、後者の方が流動性が高いのは明らかです。その点においてはイケダハヤトさん間違ってないですよ。
 彼の論のおかしな点は、ローンを組む人を流動性の観点から笑っているのに、自分も流動性皆無の高知の山奥を買ってセルフビルドをもくろんでいることです。それが中古になった時、誰が買いますの?
 

住宅購入したってリスクは減らせる

僕は今後売る可能性も考えて、値段がある程度下がりきった築24年の中古マンションを買いました

 もし物件が東京の立地が良いマンションなら、ぼちぼち正しいです。
 こういうデータがあります。

東京都では築20年を過ぎると築年ごとに価格相場がばらついており、築21年から築30年までの平均前年比(1年若い築年との価格差の比率)が101.0%、築31年から築40年でも100.0%と横ばい推移

不動産マーケット情報:中古マンション 築年別の価格と経年変化|不動産購入・不動産売却なら三井住友トラスト不動産

 つまり、築24年が35年になったとしても、価格はあまり変わらないってことです。ということは、売却した際にはローンを完済できるケースが多い、ということです。つまり、流動性が高い、ということです。
 築24年なら、住宅ローン控除も効きますし、登録免許税の特例も適用範囲だったはずです。ナイスな選択ですね。
 

フルリノベーションもしましたが、10年分の家賃相当の額を費用に充てました。

 ただ、これはリスクを増大させましたね。
 一般にリノベが物件価値を上昇させる効果はリノベ費用を大きく下回ります。リノベ費用に自己資金を充てたならともかくローンを使ったのなら、前述のとおり流動性が下がります。
 なので、リスクを上げたことになります。
 
 また、リノベーションは個人の好みに合わせてやるものですから、物件が市場の選好から外れることが多いです。
 たとえば、中古車を買う時に改造車を買う人はいないでしょう? 買うにしても市場価格から安く買おうとしますよね?
 住宅でも同じことが言えます。
 

この超低金利時代に借りないのはむしろ損だと思う

 これはそのとおり。
 まったくそのとおり。
 異論なし。
 
 ただ、忘れてはいけないのは、別に住居に対して借りる必要はない、ということです。
 同じ超低金利で借入をするにしても、自宅を買うより、資産デフレを起こしにくく、利回りが高いモノは本当になかったのか、という話です。
 とはいえ現実には、住宅ローンのように簡単に大きなお金を低金利で借りられる商品はないでしょうから、リスクテイクを前提にするなら、まあせいぜい投資不動産を買うか自己用不動産を買うか、って話になりますね。
 

住宅ローン破産に陥りやすい人

 これはそのとおり。
 キャッシュフローがよくなる借り方ができるなら購入した方がいい、かもしれません。
 

借りるなら早く借りた方が良い

 何とも言えないです。
 若いうちはライフプランの変更可能性が高いですし、自己資金を少ないですから、返済期間を延ばしてもリスクは減ってないような気がしますね……
 
 
 

まとめ

  • 賃貸に住むということは、「住宅ローンを借りることができる」というオプションを保有した状態です。ただし、年を追うごとにこのオプションの価値は減っていきます。
  • 住宅ローンを組むのは、資産の流動性を下げるため、リスクテイクです。
  • リノベーションをするのは、資産の流動性を下げるため、リスクテイクです。
  • 「金銭的に得したい」という動機で住宅ローンを借りるのは、微妙な行為だと思います。それは広い意味で「不動産投資」であることを理解してください。当たりの物件を引ければ得しますし、そうでなければ損をします。
  • キャッシュフローがよくなるから」という動機で住宅ローンを借りるのは悪くないと思います。ただ、資産の流動性が減少していることに留意してください。

 
 
 

*1:ただ、本当にクビになった場合は無職ですので、賃貸であっても次の住居を見つけるのは簡単ではないと思います。