不動産屋のラノベ読み

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京都更新料裁判の判決要旨を見直してみる。


京都更新料裁判について「裁判長GJ!!」 - 不動産屋のラノベ読みの続き

 
 では、判決要旨を検討してみましょう。

2 本件約定が民法90条により無効といえるか
 
 本件更新料は、その金額、契約期間や月払いの賃料の金額に照らし、直ちに相当性を欠くとまではいえないから、本件約定が民法90条により無効であるということはできない。

 民法90条とは「公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする」です。これに該当しないのは当然と言えましょう。
 

3 本件約定が、消費者契約法10条により無効といえるか
 
(1)消費者契約法10条前段の要件(「民法、商法その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の義務を加重する消費者契約の条項」)を満たすか。本件更新料が、主として賃料の補充(賃料の前払い)としての性質を有していることからすると、本件約定は、「賃料は、建物については毎月末に支払わなければならない」と定める民法614条本文と比べ、賃借人の義務を加重しているものと考えられるから、本件約定は、上記要件を満たす。

 民法に「更新料」の定めがないので、その分「義務を加重している」との判断です。
 

(2)消費者契約法10条後段の要件(「民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」)を満たすか。
 
  ・本件更新料の金額は、契約期間や賃料の月額に照らし、過大なものではないこと
 
  ・本件更新料約定の内容は明確である上、その存在及び更新料の金額について原告は説明を受けていることからすると、本件約定が原告に不測の損害、不利益をもたらすものではないこと
 
   等を併せ考慮すると、本件約定が上記要件を満たすものとはいえない。

 1項は、民法90条に照らした際の判断と同じですね。逆に言えば「更新料が過大」であれば無効とされる可能性があるということです。
 2項は、「更新料年間10万円と分かって契約してたんでしょ」ということですね。予測可能であり契約や更新をしない判断ができたであろう、という視点でしょう。
 

(3)結論
   以上より、本件約定が消費者契約法10条により無効であるということはできない。

 ちなみに、ニュースなどには出ていませんが、

  • 更新料が部屋によって違った。
  • 賃借人は賃料を1ヵ月滞納したまま退去した。

 という事情があったそうです*1
 

今後の賃貸業への影響

 影響はほとんど無いといってよいでしょう。
 気になる点は、「更新料が過大であれば無効」という可能性がある点です。しかし、過大か否かの判断は周辺相場に照らして判断されるでしょうから、「賃料に不服があれば供託すれば良い」という現行の制度とあまり変わりがありません。
 
 
 
 
 
 
 次のエントリでは「正しい更新料のゴネ方」を書きます(w
 
 

*1:未確認