不動産屋のラノベ読み

不動産売買営業だけどガチガチの賃貸派の人のブログ

残価設定型住宅ローンが家賃を上昇させる

 住宅ローンで残クレ、いいですね。

www.nikkei.com

 たしかに高騰したマンションも多少買いやすくなるでしょうし、いいことであるように思えます。
 しかしこれは、経済施策としては家賃を上昇させる、と私は考えています。
 以下、根拠を述べます。

 

「買いやすくなる」と価格が上がる

年収倍率は上がったが返済負担率はあまり上がっていない

 
 住宅金融支援機構の「フラット35利用者調査」にはいろいろなデータがありますが、その中にこういった指標があります。

  • 年収倍率:(住宅価格 ÷ 年収)*1
  • 総返済負担率:(年間返済額 ÷ 年収)

*2

 データを見る限り、2011年から2024年にかけて、総返済負担率は年収倍率ほど上昇していないようです。年収倍率も返済負担率も「ローン負担の大きさ」を表すはずですが、変化にズレがあります。
 これはなぜでしょうか?
 

金利が不動産価格を支えてきた

 
 購入層の変化などいろいろな要素が考えられますが、主な原因は金利であろうと思います。
 アベノミクス下の不動産価格上昇は、明らかに金利が下がることによって起きていました。
 言うまでもないと思いますが、たとえば、同じ価格の住宅を買う場合でも、金利が低ければ月々の返済額(年間返済額)は少なくて済みます。つまり、銀行が「この人なら貸せる」と判断する際の基準である返済負担率が変わらない範囲で、より高い金額のローンが組めるようになってきた、というわけです。
 

「買いやすくなる」と価格が上がる

 
 さて、残価設定型住宅ローンについてですが。
 これは、将来の売却見込み額(残価)を差し引いた額を元本返済として、その分だけ月々の返済額を下げることができるものになるはずです。
 ということは、総返済負担率が変わらないとすると、年収に対してさらに高い住宅価格(年収倍率)を許容することになります。この結果、住宅を購入できる層が拡大し、市場全体で不動産に対する需要が増すため、価格は一段と上昇する可能性が高いでしょう。
 

たとえば:

 
 物件価格1億・金利2%・35年とすると、フラット35の返済負担率は35%以下*3ですから、世帯年収はおおむね1100万円以上必要になります。
 これを残価設定型住宅ローンを用いることによって当初支払を2割削減できるなら、必要な世帯年収はおよそ900万円以上となるはずです。
 令和6年国民生活基礎調査を見ると、標準4人世帯で年収1100万円以上は21.1%ですが、年収900万円以上は36.1%とのことです。……え、これマジ?みんな稼いでて偉いなあ……。まあそれはともかく、およそ1.7倍に購入層が広がることになります。
 

融資が緩くなると家賃が上がる

不動産価格を制約する「3つの要素」

 
 ところで、全くの私見なのですが、不動産価格は3つの要素に制約されていると考えています。

  • 原価(建築コスト・人件費)
  • 住宅ローン
  • 利回り(家賃 ÷ 価格)

 原価は説明不要ですよね。物件価格の下限を制約します。
 住宅ローンは、今まで述べてきた通り、金利などの融資条件が良くなると買える物件の価格が上がり、厳しくなると価格が下がります。物件価格の上限を制約します。
 利回りはちょっとわかりにくいかもしれませんが、家賃÷価格の値に一定の相場が存在し、東京カンテイが毎年「マンションPER*4」として発表しています。これは投資としてマンションを購入する層に特に大事です。
 大抵は資金を借り入れて不動産投資を行うため、利回りは投資ローン金利+α以上でないと、投資需要がなくなります。ですので、金利が上がると利回りも上昇(=価格は下落)し、金利が下がると利回りも下落(=価格は上昇)します。
 

利回りはもうしばらく下げられないのでは

 
 さて先に述べてきた通り、アベノミクス下の不動産価格上昇は金利低下が原因でした。金利が下がることによって利回りが下がり不動産価格上昇の制約が緩み、価格における市場のマージンが生まれました。そのマージンがあることによって家賃を上昇させずに不動産価格だけが上がっていくことができました。ちょっと前までは。
 しかし、ここ数年、家賃も上昇しています。これは、低金利のマージンを食いつぶしたと見ていいでしょう。
 この状態で住宅ローンの制約が緩み価格が上昇した場合、どうなるでしょうか。考えられるのは2つです。

  • 家賃が変わらず利回りが下がる
  • 家賃が下がり利回りは変わらない

 しかし、先ほど述べたとおり、利回りは金利の制約を受けます。金利上昇局面にあって利回りがこれ以上に下がるというのは考えにくいです。UBSバブルインデックス2025*5でも、価格賃料倍率(Price-to-rent)で香港やロンドンの上の5位です。
 そうであれば、家賃が上がります。家賃が上がらなければ、投資家は利回りの適正水準を保てず、誰も投資しなくなるからです。
 結局のところ、残価設定型住宅ローンによりローンが緩和されて「買いやすさ」が増すことは、購入できない人たちにとっても「賃料上昇による負担増」という形で跳ね返ってくるわけです。
 

蛇足

 
 今回の話は、結局のところ「誰が不動産の価格上昇の恩恵を受けるか」という話でもあります。住宅ローンを組みやすくすることは「持ち家層を増やす」政策であって資産形成の助けになりますが、同時に、既に不動産を所有している層や富裕層の資産をさらに増やす、ということでもあります。
 日本の格差は収入ではなくて資産にあるということが知られていますが、これが進む方向になると言えるのかもしれません。
 
 
*6

*1:東京カンテイが発表する年収倍率はまた別の集計方法です。住宅金融支援機構は(購入価格/購入者年収)の平均ですが、東京カンテイは購入者以外の世帯も含めた平均年収で割っています

*2:https://www.jhf.go.jp/about/research/loan/flat35/index.html グラフ作成はLhankor_Mhy

*3:https://www.flat35.com/loan/lineup/flat35/conditions/index.html

*4:利回りの逆数

*5:https://www.ubs.com/global/en/wealthmanagement/insights/global-real-estate-bubble-index.html

*6:今回はGeminiに記事を書いてもらったんですが、あらかじめ自分のブログ記事を読み込ませていたせいか、勝手に「蛇足」という見出しを作ってきて笑いました。なお、原型はほとんど残ってないと思います。ごめんねGemini。