不動産屋のラノベ読み

不動産売買営業だけどガチガチの賃貸派の人のブログ

あなたが住まい探しに失敗する1つの理由(売買編)


 あなたが部屋探しに失敗する1つの理由(賃貸編)のつづきです。


 今回もQ&A形式でいきたいと思います。


Q. 「住まい探しに失敗する1つの理由」とは何か?
A. 担当した営業があなたをあまり気に入ってはいなかったコト、です。


Q. また?
A. 残念ながら、また、です。
  もっとも、賃貸の場合より少しマシな事があります。
  賃貸仲介の場合「借主は一見さん」で「貸主は常連さん」でしたが、売買仲介の場合は「売主も一見さん」であることが多いからです。


Q. では、売り手と買い手を平等に扱ってくれるということか?
A. それは、どうでしょうか。
  売買仲介の手数料は売主と買主より売買金額の3.15%+6.3万円と決まっています。
  つまり、売主買主のお互いが同意できる価格帯の最高値が(営業担当にとっては)理想的な取り引き価格になります。
  また、買い側のお客様を押さえていても必ず買ってくれるとは限りませんが、売り側のお客様は金額が折り合えば高い確率で取引が成立します。ここにも不均衡はあると思います。


Q. 売り手と不動産営業は同じ方向に利益があるということなら、報酬を全額買い手から出すようにすれば買い手視点で仲介してくれるのではないか?
A. その方法には意味がありません。理由としては二つ。
  1000万円の物件の手数料は、売主買主とも約36万円です。売主の受け取る金額は約964万円、買主の支払う金額は約1036万円です。それを全て買主負担にすると、約72万円になります。売主の受け取る金額は約1000万円、買主の支払う金額は約1072万円です。ところが、その物件の価格が965万円に下がったとします。売主の受け取る金額は約965万円、買主の支払う金額は約1035万円です。
  まとめると、以下のようなカタチです。

取引内容 売主受取 買主負担
1000万円(手数料折半) 964万円 1036万円
1000万円(手数料買主) 1000万円 1072万円
965万円(手数料買主) 965万円 1035万円


  理想的な相場であれば、同じ時期に同じ物件に支払える金額は同じ金額であるはずです。つまり、手数料を買主負担に変えても、不動産相場を3%ほど押し下げるだけなのです。


Q. もうひとつの理由とは?
A. 本当は売主も大して有利な立場にないから、です。
  営業担当が受け取る手数料は、仲介の成功報酬です。仲介ができなければ、一銭にもなりません。
  一方で、不動産営業担当に求められるコトは、コンサルティングです。求められているコトと報酬が一致しません。同じ顧客からのリピートもわずかですから、その場の利益が優先になります。結果、営業担当のアドバイスは以下のような感じです。

  • 不動産を売りたいんだけど。
    • 売り時です。
  • 売れないから、もう売るのやめようかな?
    • 相場が下げ局面です。価格を下げてでも売るべきです。
  • この物件、欲しいんだけど。
    • 買うべきです。
  • でも、高いよね。
    • 予算を上げるべきでしょう。一生の買い物です。

  だから、前に書いたエントリのようなこういう営業は不動産屋失格なのです。何の為のコンサルかと言いたくなりますが、不動産取引は買い手に不利、というよりも、知識がない人間が不利、ということなのです。そして、大抵のお客様は営業担当よりも不動産知識がありません。


Q. やはり、不動産営業は金が一番大事なんじゃないのか?
A. 実際のところ、我々も食べていなきゃなりませんので。
  しかし、以前のエントリでも申し上げたとおり、不動産営業も「人に感謝される仕事をしたい」という欲求はあります。そこを突くべきです。


Q. 具体的にはどうすれば良いのか?
A. 賃貸・売買の両方について、まとめて次回。






 まとめ

  • 手数料の出所を変えても、不動産業界の構造は変化しない。
  • 不動産営業の金銭インセンティブは、売り手買い手に対するコンサルの質と、一致しない。


 エントリ予告