前回のエントリ(id:Lhankor_Mhy:20061116)で「子供は割引率が社会に非適応だから、いじめのリスクを理解させる事をいじめ対策とすることは効率が悪い」と述べました。
それに関連して、未成年などの「未熟」について書きます。
まず、その前に割引率について簡単に説明します。
割引 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%89%B2%E5%BC%95
割引とは、金利やリスクなどに基づいて将来の価値を現在の価値で割り引く (en:discount) こと。将来価値と現在価値の比率を割引率 (en:discount rate) と呼ぶ。
一言で言うと「今日の1万円」は「1年後の1万円」より、銀行金利分オトク、ということです。これはお金以外にも当てはまります。人間の判断は無意識的にこれを計算しています。
ところで、人間の社会の変化上、以前は適応的であった割引率が現在は非適応であることがあります。
たとえば、カロリーの摂取です。狩猟採取社会では「食べられるときにある程度食べておく」のが適応的であったでしょう。しかし、寿命も延び飢餓リスクが下がった現代では、肥満による将来のリスクを軽く見る事が出来ません。これは、肥満リスクの適応的な割引率の変化として捉える事が出来ます。
進化に対する遺伝的な変化は社会の変化よりも圧倒的に遅い為、生物的な割引率は現代社会に非適応であることは間違いないでしょう。つまり、本能的に行動してはいけないということです。
現代に適応的な割引率は、社会生活からのフィードバックによって経験的に会得することになります。それ故、社会生活経験の足りない未成年は割引率が非適応である傾向にあるはずです。つまり、将来におけるコストベネフィットを低く見積もる傾向にあります*1。
これが、未成年の「未熟」です。
未成年の飲酒を法が禁じているのは、未成年が現在の「飲酒の快楽からくる利得」と将来の「過度の飲酒からくるリスク」とを比較検討する場合において、適切な割引率で将来のリスクを処理できないであろう、と言う判断によります。
ですから、お酒は20歳になってから。
タバコも20歳になってから。
政治も20歳になってから。
結婚は18歳になってから*2。
少年法ってなに? どう改正されたの?
http://www.kodomonoshiten.net/kaiseiQ&A.htm
子どものする犯罪は大人のする犯罪とは違う面があり、自分の行為の意味や結果の予測についての判断が未熟なため、年齢が下がるにしたがってごく普通の子どもでも、その場の状況次第で重大な犯罪になってしまうことがあるのです。もちろん軽い犯罪ならやってもいい、というわけではありませんが、子どもの場合には、やったことの結果だけで判断するのではなく、どういう気持ちでやったのか、そういう行動をとった原因や背景は何なのかを、大人以上によく考えてみる必要があるのです。
殺人は14歳になってから。