こういう記事がありまして。
こういう議論がありました。
これはいろいろ原因はあるでしょうが、
ジェンダーバイアス、つまり
「女は将棋が弱い」という偏見があることが原因のひとつだと私は考えます。
「女は数学ができない」は本当か
これもよく言われることですね。「女は生まれながらに論理能力が低い」みたいなアレです。
結論から言うと、「女性は数学ができないのは事実。しかしジェンダーバイアスによる影響が大きく、器質的な差があるとは言えない」が正しそうです。
↓数学の試験で、男女混合で試験をするより女性だけ試験をした方が成績がよい、という報告。
Women perform as much as 12 percent better on math problems when tested in a setting without men, according to a study of Brown University undergraduates led by a graduate student of psychology.
http://www.brown.edu/Administration/News_Bureau/2000-01/00-023.html
ちなみに、男性を減らすと影響は小さくなるが、女性が多数派になっても影響は残ったそうです。また、この「異性混入効果」は男性では観測されず、数学以外の"verbal exams"(文系科目?)でも観測できなかったそうです。
↓数学の試験で「女が数学ができない理由を調べるよ」と言われると成績が下がる
研究は数学の成績がよい女子大学生を被験者に行われ、被験者は2つのグループに分けられて数学のテストを受けた。テストの前に、片方のグループは「男子が女子よりも数学が得意な理由を調べるためのテストを行う」と告げられた。もう片方は、単に数学能力の実験とだけ告げられた。
前者のグループは成績が低下し、プレテストでは約90%だった正答率が80%程度に落ちた。後者のグループは、わずかに成績が上がった。
↓数学の試験で、性別を伏せさせて回答させると女性は成績が上がる。
偽名(男性名にせよ女性名にせよ…)で解答した女性グループは、本名で解答した女性グループよりも成績が高く、平均として男性に近いレベルを達成していました。
http://ratik.org/1110/201307011/
これがほんとなら、性別を明らかにした「はてな女子」よりも、性別を伏せた「隠れはてな女子」の方が論理的ということに……*1
一応念のため書いておきますが、「器質的な差はない」と言ってるわけではないですからね、「器質的な差がある」という論には根拠がないと言ってるだけです。
匿名でチェスをすると女性は強くなる
さきほどのブクマ、b:id:futabさんのコメントで知ったのですが。
↓今回のケースで決定的そうなのがこれ。
実力が伯仲した男性と女性のペアを42組作り、インターネットを通してチェスの対戦を行なった。相手の性別が分からない状態でプレイしたグループでは、実力通り男性プレイヤーと女性プレイヤーは対等な試合をした。しかし相手が男性だと知らされた女性プレイヤーは、実力を十分に発揮できなくなってしまった。実際には男性を相手としてプレーしていても、相手は女性だと伝えられた場合は実力どおりの試合をした
http://macska.org/article/205
こりゃすごい。とても興味深いです。
以上を受けまして個人的には、「女流棋士が弱い理由、それは女だからだ」みたいな論は、なんか新しい事実を提示してない限りは妄想・偏見の類だと言うしかない、と思いました。
性差だけの話ではないのかも?
よく考えると、人類半分の論理能力を下げているわけで、近代以降に「アインシュタイン級」の天才女性をどれほど失ってきたのだろうと考えると、大きな損失だったかもしれませんね。もちろん、逆に男性がジェンダーバイアスの影響で失う能力もあるでしょうから、2重の意味で損失です。
また、これ、性差だけの話ではないのなら結構問題ですね。「ゆとり世代はこれだから」「B型はこれだから」みたいなのを聞いていると本当にダメな人間になってしまうのかもしれませんね。
追記
みんな見に来なくなったころを見計らって追記。
他にも同じ勘違いをされている人が結構いましたが、プロ
棋士は生まれたときからプロ
棋士なわけではないです。プロになって男性
棋士と1局指すよりもずっと以前、つまり子供のころから
ジェンダーバイアスが影響していると考えるほうが自然です。それが棋力その他の成長に影響を与えると考えるのはそれほど無理筋ではないと思います。
誤読されるのも無理ないと思うので申し訳ないですが、「将棋は論理の世界。だから論理的な基礎能力に差が出るなら棋力にも差が出るはず」などという
能力還元的な理由で数学を持ち出したのでは
ないです。
将棋も数学も同様に「女性が苦手」と思われている類似の案件として挙げています。「
ジェンダーバイアスのある数学で結果に影響が出ているならば、同様に
ジェンダーバイアスのある将棋でも結果に影響が出るのでは」ということです。
ジェンダーネタは表現が難しいな、としみじみ思いました。
やはり、私も含め人類一般に言えるのでしょうけれど、それぞれに強いバイアスを持っていて、それによって表現や認知が妨げられているなあ、と。
これが
ジェンダー以外のネタであれば、私も下手に煽りをいれずきちんと「子供のころからこんなに影響を受けていれば、成長も阻害されるかもね」とはっきり書いたと思いますし、
強い言葉を使わずに書いていればこれほど多くの人が「プロ棋士になるまではジェンダーバイアスの影響を受けない」などという誤認知をしなかったのではないかと思います。読み手としても書き手としても、上手いバイアスのコントロールの仕方を心がけたいな、と思いました。