不動産屋のラノベ読み

不動産売買営業だけどガチガチの賃貸派の人のブログ

ラノベ表紙風タイトルにしてみました

↓「フォントな」さんの新しいフォントを見て衝動的に作ってみました。 なんか、はてなブログ、テーマが強くて自分でデザインしにくいですねえ…… やるならがっつりCSS書かないとだわ……
 
 
 
 イラレとインデザとJavascriptと使える不動産営業を年収800万円ぐらいで雇ってくれる不動産会社はありませんかー? ないですよねーそうですよねー。
 
 
 
 そういえば、最近ラノベの話題書いてないっすねー。最近読んだのだと、とりあえず「異世界食堂」がおすすめっすわー。

異世界食堂 1 (ヒーロー文庫)

異世界食堂 1 (ヒーロー文庫)

 あと二丸修一先生がなんか新作出すみたいなんで注目っす。でもほんとは「ギフテット」の続き書いてほしいっすよー。

ギフテッドII (電撃文庫)

ギフテッドII (電撃文庫)

 
 
 
 あー、なんか繁忙期明けで疲れてんのかなー。

国籍を理由に賃貸契約を拒絶すると不法行為を問われるリスクがあります

 入居を希望した京都市のアパートが「外国人不可」のため、賃貸契約できなかった欧州出身の20代の留学生が、法務省の京都地方法務局に外国人差別だとして救済措置を求めたところ、法務局は「人権侵犯の事実があったとまでは判断できない」と退けた。

http://www.47news.jp/47topics/e/263652.php

 というニュースがありまして。
 
 はてブでは「これは差別だ」「いや大家の契約の自由が」と真っ二つに分かれています。
 私の感覚だと、まあアウトに近いんじゃないかなあ、と。
 

判例があります

 実は、国籍差別での賃貸入居拒否については判例があります。

 認定の事実関係によれば、本件賃貸借契約は、X2が日本国籍でないことを理由に、Yが賃貸しないこととしたのであるから、Yは、X2に対し、不法行為に基づき、損害を賠償する責任を負うものというべきである。

https://www.retio.or.jp/case_search/pdf/retio/69-062.pdf

 ということで、損害賠償110万円という判決でした。
 ですから、「外国人を拒絶する事は、大家にとって経済的に合理性がある」という人はこの訴訟リスクを織り込んでからもう一度ご回答いただければな、と思います。
 
 ……えーと。
 ごめんなさい、リスクがあると書いたのはウソです。
 このケース、当時の報道では私の記憶だと韓国籍の弁護士さんだったと思います。留学生が異国の地で訴訟をしてくるリスクはほぼゼロです。そんなすげえ奴めったにいませんよ、100%泣き寝入りです。安心してどうぞ。
 
 
 ところで、この部分だけ読むと「契約の最後の審査で拒絶したからダメなんであって、事前に表示してればいいんじゃないの?」と思うかもしれません。
 実は、この訴訟は仲介会社に対しても「外国人不可なのかどうか調査する義務を怠った」と賠償請求をしていたのですが、これは通りませんでした。
 その理由がこちら。

 そのような注意義務を負わないと解するのが相当である。賃貸マンションの所有者が、もっぱら入居申込者の国籍を理由に賃貸借契約の締結を拒むことは、およそ許されないからである。

https://www.retio.or.jp/case_search/pdf/retio/69-062.pdf

そもそもそんな大家の存在は許されないので気にしなくてよろしい」ということです。全国の生協さん、道理のわからん大家がいたらこの判例かましてくださいね。
 

保証会社を使いましょう

 調べたらこんな制度が。

京都地域留学生住宅支援機構に加盟する大学が、制度に賛同する協力事業者と協力して留学生を支援する制度です。連帯保証人がいない京都地域の留学生が「連帯保証人不要」で住宅確保ができるように支援しており、その機構事務局を大学コンソーシアム京都が運営しています。

 協力業者を見ると、普通に大家さんも参加してるんで、この辺の努力もしないで「留学生はリスクがあるから差別は合理的」とか言ってたら地雷大家っぽいかなあ、と。
 
 留学生OKの保証会社もあるんでそこを使ってみるのもいいかも。

緊急連絡先の対象者
お身内の方
留学生の場合、日本国内に居住の日本語が話せる方

http://www.nihon-safety.co.jp/campaign/

 ただ、まあ、これは留学生に限らないんですが、学生借主だと親を連帯保証人に取る保証会社もあって、*1

学生、未成年の場合は、親権者を連帯保証人とします。

 留学生だと特に厳しいよなあ、と思います。
 もちろん社会正義の問題もありますが、「外国人不可」とかやって恥じない地雷大家をいちいち撲滅するよりも留学生の選択肢を広げられるようにしてあげた方が、現実の対策としてはいいのかな、なんて思います。
 もしかしたら、その大家さんも今頃「マッサン」を見てすっかり心を入れ替えてるかもしれないですしね。
 なんでまあ、難しいのかもしれないですが、法務省は生協に啓発をするよりも保証会社あたりになんか働きかけをできなかったのかなあ、などと思うところです。
 
 
 

追記

 貼ろうと思って忘れてました。
住宅:外国人の民間賃貸住宅への円滑な入居について - 国土交通省
 各言語で日本での部屋の使い方とかも書いてあるので、この辺を活用してみるのもいいと思いますよー。

*1:「連帯保証とるなら保証会社いらないじゃん」と思う向きもあるかと思いますが、親世帯の家計がこけると学生世帯も一緒にこけることが多いので

「gumiという錬金術に群がった人々」は本当か

 
gumiという錬金術に群がった人々と、日本のスタートアップ業界の暗部【1】
という記事がありまして、要は「gumiって会社が上場基準満たすのに力を使い果たして3ヶ月で業績下方修正しやがった。投資家なめてんのか」という内容なんですが。
その部分はいいんですけど、上場前第三者割当について「利益抜きやがってクソが」みたいな記述があって、おやー?みたいに思ってまして。

私は単なる個人投資家なので上場に関わる実務のことは全くわからないが、普通、上場準備や上場審査にはそれなりの期間が必要だと思われるため、半年前のタイミングはまだしも、LINEが増資に応じた3ヶ月前の時点ではほぼIPOすることが見えていたのではないかと言う疑念が残る。一般的にベンチャー投資はリスクが高く、投資回収も長くなると言われているが、仮にIPOという出口がほとんど確実に見えていたとしたら、これほど美味しい投資はない。勝つことを事前に知らされている馬の馬券を買うようなものだからだ。

gumiという錬金術に群がった人々と、日本のスタートアップ業界の暗部【1】

↑みなさん、ここの部分を読んでどう思いますか?
LINEが濡れ手で粟で大儲け、と読みませんでしたか?
これはちょっとおかしい気がするので誰か解説してくれるのを待ってましたが、誰も書かないようなので、私が間違いだらけの記事を書いてつっこみ待ちをすることにしました。
 
内容は以下の通りです。

  • 上場前には株を増やさないといけない
  • 上場前の第三者割当は継続所有しなければいけない

 

上場前には株を増やさないといけない

これは当たり前だと思うんですけど、株を市場で流通させるには誰かが売らなきゃならないですよね?
で、売られる株式がたとえば数千万円程度ではお話にならないですよね? そんな額の調達はグリーンシートでやってろって話です。
詳しくはこちらをご覧ください。
日本取引所グループウェブサイト
東証一部への直接上場基準は時価総額250億円以上、ということらしいです。
 
会社が基準を満たすだけの十分な株式を所有してればいいのですが、そうでない場合は増資をして株式を増やす必要があります。
株式を増やすためには誰かが増資を引き受けなければならないです。創業者が会社に対して数十億の増資ができるなら問題ないのですが、スタートアップ企業の創業者がそんな大富豪であることはまずないので、証券会社やVCや取引銀行・企業に増資に応じてもらう必要があります。*1

先述した通り、gumiは2014年12月18日にIPOし、その公開価格は3300円だった。ところが、上場に際して提出される目論見書を見てみると、IPOの3ヶ月前の9月24日にLINEが1362円で、半年前の6月と7月にはVCのWiL、ジャフコ、B Dashベンチャーズ、新生企業投資、三菱UFJキャピタル、DBJキャピタルらに加え、グリーとセガネットワークス、gunosyの前代表であった木村新司氏が1214円で増資に応じており、その総額は83.2億円にものぼる。

gumiという錬金術に群がった人々と、日本のスタートアップ業界の暗部【1】

↑これはそれなんじゃないかなあ、と思った次第です。
 

上場前の第三者割当は継続所有しなければいけない

gumiの目論見書がこれなんですが。
http://gu3.co.jp/ir/library/files/gumi_m50118683.pdf
69ページを見ますと、たしかにLINEに第三者割当がされています。
しかし、5ページ目の「引受人の買取引受による売出し」には入っていないのです。
もう1度、増田の記事を引用しますね。

普通、上場準備や上場審査にはそれなりの期間が必要だと思われるため、半年前のタイミングはまだしも、LINEが増資に応じた3ヶ月前の時点ではほぼIPOすることが見えていたのではないかと言う疑念が残る。一般的にベンチャー投資はリスクが高く、投資回収も長くなると言われているが、仮にIPOという出口がほとんど確実に見えていたとしたら、これほど美味しい投資はない。勝つことを事前に知らされている馬の馬券を買うようなものだからだ。
それに加えて、IPO前とIPO時では3倍近くの価格差がついていた。時価総額が10億円の超小型株ならいざしらず、わずか数ヶ月という短期間の間に企業価値が340億円から945億円に急増する合理的な理由がこの世に存在するのだろうか。既存株主は上場に際して1036万株、総額342億円の売出を行っている。この大規模な「利食い売り」は、主幹事の野村證券によって全国の個人投資家に売り捌かれ、既存株主は莫大な利益を手に入れた。

gumiという錬金術に群がった人々と、日本のスタートアップ業界の暗部【1】

この「1036万株、総額342億円の売出」にLINE所有株は含まれていないんです。でも、読んだ人はそうは思わないんじゃないでしょうか。LINEが上場3ヶ月前に株を買って上場時に売って利益を抜いた、そう読んだ人も少なくないのでは?
 
「引き受けがなくても売却はできるだろう」とおっしゃる方もいらっしゃると思います。
上場の際には大株主が売却を自主規制することがあります。これをロックアップと言いますが、その状況はどうでしょうか。
11ページを見ますと、『ジャフコ・スーパーV3共有投資事業有限責任組合、グリー株式会社、DBJキャピタル投資事業有限責任組合三菱UFJキャピタル3号投資事業有限責任組合、NIFSMBC-V2006S3投資事業有限責任組合、株式会社アットムービー、山田進太郎及び株式会社コーエーテクモホールディングス』が3月17日までのロックアップ*2となっていますが、たしかにLINEはその中に含まれていません。
 
しかしですね。
東証の「有価証券上場規程施行規則」によりますと、こうなってます。

第3款 上場前の第三者割当等による募集株式の割当て等
(第三者割当等による募集株式の割当てに関する規制)
第255条
新規上場申請者が、新規上場申請日の直前事業年度の末日から起算して1年前より後において、第三者割当等による募集株式の割当てを行っている場合(上場前の公募等による場合を除く。)には、当該新規上場申請者は、割当てを受けた者との間で、書面により次の各号に掲げる事項について確約を行うものとする。
 (1) 割当てを受けた者は、割当てを受けた株式(以下この条、次条及び第260条において「割当株式」という。)を、原則として、割当てを受けた日から上場日以後6か月間を経過する日(当該日において割当株式に係る払込期日又は払込期間の最終日以後1年間を経過していない場合には、割当株式に係る払込期日又は払込期間の最終日以後1年間を経過する日)まで所有すること。この場合において、割当株式について株式分割、株式無償割当て、新株予約権無償割当て又は他の種類の株式若しくは新株予約権への転換が行われたときには、当該株式分割、株式無償割当て、新株予約権無償割当て又は他の種類の株式若しくは新株予約権への転換により取得した株式又は新株予約権(以下この款において「割当株式に係る取得株式等」という。)についても同日まで所有すること。

http://tse-gr.info/rule/tosho_regu_201305070041001.html#regu20141201411rsiodl_l_s1253_element

つまり、LINEは所有株を上場後6ヶ月、つまり6月ごろまで売却できないはずなんです。
 
 
 
 
増田の文章を読む限り、結構詳しい人のようなので、私ごときの不動産屋が知ってることなんて先刻承知だと思います。私が根本的な勘違いをしている可能性は大いにあります。
以上、詳しい方からのつっこみをお待ちしております。マジで。
 
 
 

*1:ちなみにこれをさっさと売り払われると安定株主が減って経営に影響が出たりしますので、資本政策において増資をどこに引き受けてもらうかというのは重要になります

*2:そういうわけなので、この記事を書いた時点でこの人たちはまだ売却できないはずです

違うよ。全然違うよ。

 

消費者同士が自由にマンションなどの不動産売買を行うことが出来る、日本初の不動産情報マッチングサイトが2015年2月17日に誕生したようです。

消費者同士のマンション売買が可能になる、マッチングサイト『Housmart(ハウスマート)』が誕生!不動産の売却手数料が無料です。 - クレジットカードの読みもの

不動産売買は高額になりがちなものなので、数%の手数料でも削減したいもの。そういった意味では大きな利用メリットがあると思いますが、その反面、個人間売買に対する不安みたいなものも出てきそうですね。

消費者同士のマンション売買が可能になる、マッチングサイト『Housmart(ハウスマート)』が誕生!不動産の売却手数料が無料です。 - クレジットカードの読みもの

なんで?危なくないよ
 
じゃあ、簡単に説明してあげるよ。まず、仲介業務をせずに手数料を得るのは非合法です。

『Housmart』では宅建業者として売却マンションの調査・査定・重要事項の説明・売買契約・決済を提供することによりユーザーが安心して不動産売買を行える環境を提供致します。

日本初、ユーザー同士が直接マンション売買をすることが可能となるWEBプラットフォームサービス『Housmart(ハウスマート)』βテスト版を提供開始|株式会社Housmartのプレスリリース

ね? プレスリリースにも仲介するって書いてあるでしょ?
内容が分かりにくいから勘違いするのも無理はないけど、これは「売主と買主が直接やりとりする場を作ってあげるから質疑応答や見学はそちらで好きにやってね。それで、売買の話がまとまりそうなら教えてね。あとは仲立ちして段取りしてあげるよ」というサービスですね。
たとえていうなら、仲介役がいるフリーマーケットみたいなもの。よさげなものをみつけて価格交渉の段になったら仲介役を呼んで「ねえねえ、この人はこのマンションをこの価格で売ってて、私はいくらいくらなら買いたいんだけど、妥当な線ってどこ? それからこの物件に問題ってありそう?」みたいな。
 
そういうわけで、売買の意思が固まった後は普通の仲介と同じなので、そんなに警戒する事はないと思います。
 
正直、「またクレジットカードの人か……」と思いましたが、ブコメでも気付いたのはid:a1otさんひとりでしたし、まぎらわしい書き方なので、id:cardmicsさんが勘違いするのも無理はないです*1
 
 
 
個人的には、このアイディアなかなか面白いと思うんですけど、どうですかね同業者のみなさん? 仲介はやりにくそうで苦労も多そうですが。

*1:もしかしたら書き方が悪いだけで勘違いしてないのかも

確率は直観に反する

 
はてブで総つっこみを受けていた記事がありまして。

例えば、「宝くじ」というものでも、1等当選が出た宝くじ売場には、毎度、長蛇の列ができる。その理由はおそらく「1等当選が出た所だからまた当たるかもしれない」ということなのだろうが、よくよく考えてみると、これほど可笑しな話もない。確率的に考えれば、同じ宝くじ売場で1等当選が出る確率は最も低くなるはずだからだ。

ロジカルシンキングができない人々【論理よりも感情が優先される国】

これは、いわゆる「ギャンブラーの誤謬」と呼ばれるものです。

表と裏の出る確率が50%づつのコインがあります。
4回続けて表が出ると、「次はそろそろ裏が出るだろう。」と考えるのではないでしょうか。4回も表の続く確率は、1/2×1/2×1/2×1/2=1/16となり6.25%です。次も表が出る確率は、1/32となり3.125%で100回のうち3回の確率だからです。でもちょっと待ってください。何回続けて表が出ようとも、次に表の出る確率は50%なのです。
表が続くと次に表の出る確率を本来の50%から過小評価してしまいます。
このように考えることを「ギャンブラーの誤謬」と呼びます。

失敗事例研究会|オンライントレードは丸三証券のマルサントレード

 
筆者の方も後から気付いたようで、追記を書かれています。
 
ところで、この記事は「小学5年生殺害事件について、容疑者が逮捕された後は地域は安全になったのだから、警察官が通学を保護するのはロジカルではない」という内容でした。
果たして本当でしょうか。
私はこれを「木を見て森を見ない」考え方だと思います。
 

「同様にたしからしい」

たとえ話をします。「ギャンブラーの誤謬」の話が出ましたので、博打っぽい話にしましょう。
 
サイコロがあります。3回振って1,1,6という目が出ました。次に1が出る確率は1/6より高いでしょうか低いでしょうか。
これは「次も1/6で変わらない」が正解ですね。1が出なさそうに感じるのは「ギャンブラーの誤謬」です。
 
では、サイコロを振る前に「このサイはイカサマ用で、ある目が多く出ます」と告げられたとします。3回振って1,1,6という目が出ました。次に1が出る確率は1/6より高いでしょうか低いでしょうか。
これは「1/6より高い」と答える人が多いのではないでしょうか。
なぜでしょうか。
 
「同様にたしからしい」という概念があります。中学校あたりの数学で習っているはずなんですが、みなさん覚えてらっしゃいますか?
きちんと作られたサイコロは、どの目が出る確率も概ね同じ程度だろうと思われます。このような事象を「同様にたしからしい」と呼び、それぞれの目が1/6で出る、と推測ができます。
しかし、サイコロを振る前に「このサイはイカサマ用で、ある目が多く出ます」と告げられた場合は、「同様にたしからしい」とは言えないかもしれません。その場合はそれぞれの目が出る確率は未知となります。
 
よく考えると、世の中は「同様にたしからしい」と言えない事象であふれており、そのため、起きる確率が未知である事象がたくさんあります。
おそらく確率が未知である事象のひとつに「あなたの子供が通学中に殺される確率」があります。
 

事後確率

たとえ話をします。「ギャンブラーの誤謬」の話が出ましたので、博打っぽい話にしましょう。
 
トランプが1組あります。
これは不思議なトランプで、いくらめくっても減ることがない魔法がかかっています。
そしてあなたはこのトランプをめくっていくと、大変低い確率でジョーカーが出てくるらしい、ということを知っています。
 
さて、トランプをめくり始めていくと、なんと10枚目でジョーカーが出てきました。
あなたは思います。「なんだ、ジョーカーが出る確率は意外と高いじゃないか」
 
さて、またトランプをめくり続けていくと、なんと1000枚めくってもジョーカーが出てきません。
あなたは思います。「なんだ、さっきはたまたまか。やはりジョーカーが出る確率は低いらしい。ひょっとするともう出てこないのかも」
 
ところが次の1枚がジョーカーでした。
あなたは思います。「あ、低い確率だけど出る時は出るんだな」
 
このように、観測の事後に確率が変わる、という確率理論があり、ベイズ確率とか呼ばれたりします。
 

通学中のリスクについてどのように計算するのがロジカルだろうか

たとえ話をします。「ギャンブラーの誤謬」の話が出ましたけど、あまり博打っぽい話ではありません。
 
あなたはある街に住んでいます。
ここ数十年、大きな事件もなく平和に暮らしていますが、ニュースを見る限りでは、この街でもどうやら低い確率で子供に危害を加えるような事件が起こるかもしれない、と思っています。
 
さて、そんな平和な町でしたがある時、子供に危害を加えるようなショッキングな事件が起きました。
あなたは、自分の子供が危害を加えられる確率についてどのように計算するでしょうか。
 
後日、その事件の容疑者が逮捕されたようです。
あなたは、自分の子供が危害を加えられる確率についてどのように計算するでしょうか。
また、その確率は事件前と比べると高いでしょうか低いでしょうか。*1
 
 
 

確率は直観に反する

別に私は件の書き手さんをバカにしてるわけではありません。
 
 
 
ごめんなさい、ウソです。わりとバカにしました。
 
しかしよく考えると、確率は人間の直観に大きく反するようでして、たとえばかのポール・エルデシュが「モンティホールジレンマ」について間違った解釈をした話は有名です。われわれは誰でも同じような誤謬をしてしまうということです。
筆者は不満でしょうけれど、「直観でロジカルシンキングをする際の注意点」について、大きな示唆を得られる記事であったと思います。
 
 
 
いや、バカにしてるんじゃなくてマジで。
 
 
 

*1:そもそも独立な事象じゃねーんじゃねーのって話が

日経の連帯保証人の記事がなんか変

 会社役員のAさんは学生時代からの親友に「独立するので事業資金を借りる時の保証人になってくれ」と頼まれ、悩んでいます。万一を考えると心配ですが、むげには断りにくい間柄です。保証人になると、実際にはどんなリスクがあるのでしょうか。

 
 こんな質問を枕にした記事があり、「連帯保証人はよく内容を把握してないと危険だよ」だとか、「民法改正で限度額が定められるかもよ」だとか、そういうアドバイスがされているんですが。
 
 
 
 それって、的外れですよね?
 
 
 
 2011年の日経記事です。

金融庁は中小企業向け融資で、原則として連帯保証の対象を経営者本人に限定する方針だ。経営者以外の第三者は連帯保証人にしないよう金融機関に求める。実際に保証を求める場合も資産や収入などへの配慮を要請する。

 
 2006年の中小企業庁のお知らせです。

このため、中小企業庁では、信用保証協会が行う保証制度(注)について、平成18年度に入ってから保証協会に対して保証申込を行った案件については、経営者本人以外の第三者を保証人として求めることを、原則禁止とします。

http://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/2006/060331daisanshahoshou_kinshi.htm

 
 2011年の金融庁の監督指針改正のとりまとめです。

経営者以外の第三者の個人連帯保証を求めないことを原則とする融資慣行を確立し、また、保証履行時における保証人の資産・収入を踏まえた対応を促進する」という政策趣旨に鑑み、適切に取り組む必要がある。
(中略)
業務運営の適切性、健全性に問題があると認められれば、法第 24 条に基づき報告を求め、又は、重大な問題があると認められる場合には、法第 26 条に基づき業務改善命令を発出するものとする。

http://www.fsa.go.jp/news/23/ginkou/20110714-2.html

 
 というわけで。
「親友から融資の保証人になってくれと頼まれたんだが」という相談へのアドバイスは金融庁にチクリましょう」が正解だと思うんですが、どうなんでしょうか。
 そりゃまあ、そんなことしたらその親友の融資が流れてしまうかもしれないですから、現実には「銀行には逆らえないよね」という話になるかもしれませんけど、日経新聞の紙面なんですから建前ぐらいはちゃんとしたほうがいいのでは?
 
 
 

Ingressで都市論

 
特に都市論について学んでいるわけでもない地方都市の不動産屋風情が、こんな都市論的記事を書くのは殆い、というのは理解しているのですが、ブログでは自分の書きたい事を書くと決めているので書きます。
この論自体に大した意味を持たせることはできていませんが、有益なリンクを提供させていただいていると思います。まともに読むよりも、この辺のテーマのリンク集だと思って読んでいただく方が、精神衛生上の面からもいいのかもしれません。知らないけど。
 
 
 
あ。
あと、言うの遅くなりましたが、Ingressで都市論というのは釣りです。
 
きっかけはこのツイートまとめです。

簡単に説明すると、「三井アウトレットパーク」は本当は富山市呉羽町)に建てるつもりだったんですよね。ところが、富山市はあの例の「コンパクトシティ政策」を進めているので、こんな施設の建設は許可しなかった。よって、富山市の隣の隣の小矢部市に建てることになった、という経緯があるのです。
続き)そうなると、どうなるか。おそらく富山市の住民はその隣の隣の小矢部市の「三井アウトレット」へ自動車で買い物へ行くことになると思うのですね。市が「コンパクトシティ政策」を強力に推進したために、他市に買物客が流出してしまうのです。実際、これは青森市でも起きたことです。
あと、今年7月にオープンする富山市の隣の隣の小矢部市の「三井アウトレットパーク北陸小矢部」の他に今年8月に富山市の隣の射水市に「コストコ射水」がオープンする。この「コストコ射水」の建設を巡ってもすったもんだがありました。(富山市が「コストコ射水」の建設に反対して射水市と対立した)
いずれにせよ、「コンパクトシティ政策」は果たして本当に良い政策であるのかは改めて問わなくてはならない。

コンパクトシティ富山市は自滅するか否か - Togetterまとめ

大いにうなずくところもあり、首をかしげたところもあり、なかなか面白かったので。
 

コンパクトシティ・スマートシュリンクは間違ってない。

まず、前提として共有しておきたいのは、コンパクトシティ・スマートシュリンクは間違っていない、というところです。
理由を挙げます。
 

人口が2倍になると、平均収入は1.2倍になる。

しかし もっとも重要なのは 傾きが 生物の代謝では4分の3であったものに 相当するものが なんと1より大きい 1.15〜1.2くらいです このグラフは 都市が大きければ大きいほど 人口1人あたりの富が多いということを示します 生物学の場合とは逆に 収入がより高く 超独創的な人の人口あたりの数が増え 人口1人あたりの特許数 犯罪件数も同じです

ジェフリー・ウェスト:都市および組織の意外な数学的法則 | Talk Subtitles and Transcript | TED.com

ジェフリー・ウェストという方の研究によると、都市の人口が2倍になると平均収入が1.2倍になるそうです。これは国を問わず、そして年代を問わず観測されるそうです。単純に考えれば、人口が集中すると効率がよくなるため消費が抑制されそうですが、現実はその逆ということです。
つまり、都市を集中させると、スケールメリット以上の効果がどうやら現れるらしい、ということです。おそらく人口が増えることによる多様性の生産が都市を活発にするのでしょう。
 
逆にスマートシュリンクを失敗するとどうなるか、については、日本だと夕張、アメリカだとデトロイトを参照するといいでしょう。

今回、もっとも衝撃的だったのは、夕張のゴミ処理場の実態でした。
 
写真は焼却施設ですが、実は現在は使われていません。老朽化によりダイオキシン対策基準を満たすことができず、かといって破綻によって建て替えも取り壊しもできず、無残にその姿をさらしています。
じゃあ、夕張ではゴミはどうしているのでしょうか。
 
なんと、処理場にほったらかし。生ごみも、燃えるゴミも、燃えないゴミも。あたりに一面に漂う異臭と、信じられないほどの数のカラスたち。
おと「これって、一杯になっちゃったらどうするんですか?」
職員「幸い人口が減っているので、あと5年くらいは持ちそうなんです」
おと「じゃあ、その後は…??」
職員「・・・」

「燃えるゴミ」が燃やせない町・夕張に、暗い日本の未来をみた

デトロイトの場合、街が開発された時期が古く、中心部には築100年の住宅が当たり前のように並んでいる(日本と異なり米国の住宅は良質なので、100年以上普通に使える)。当初は比較的賃金の高い熟練工向けの良質な住宅として整備されたが、現在の高賃金労働者の多くは、新しく開発された郊外の住宅地に住んでいる。デトロイトの中心部は、サービス業などに従事する低賃金労働者や移民などが多く住んでおり、自動車産業の復活の恩恵を直接的には受けていない。
 
一方デトロイトの郊外には、自動車産業のホワイトカラー層や日本などからの駐在員が多く住む高級住宅地が多数開発されている。またデトロイト郊外にはミシガン大学など著名大学が多く、アナーバーという街では、ミシガン大学出身者の頭脳を確保するため、Googleも拠点を構えている。だがこれらの地区は、行政区域上はデトロイト市に入らないため、デトロイト市の財政には寄与していない

なぜデトロイト市は破綻したのか 米自動車産業、奇跡の復活の恩恵は?

 
もっとも、デトロイトでは早くもジェントリフィケーションが起きているようです。

「自動車の街」として繁栄した米ミシガン州デトロイト市が財政破綻(はたん)してから約1年がたった。中心部の空きビルにはベンチャー企業が集まり始め、少しずつだが、活気を取り戻しつつある。若い起業家たちの熱気が、地域の再生につながると期待されている。

財政破綻デトロイト、起業で再生を 空きビルに若手集う:朝日新聞デジタル

地方都市の商店街をいっぺん潰しちゃう、というのも一つの方法なのかもしれません。
 

コンパクトシティと大型商業施設は両立する

これは前掲のツイートまとめでも言及されていますが、コンパクトシティだからといって大型商業施設を排除する必要はありません。 

情報ありがとうございます。「コスト射水」は工業団地「小杉インターパーク」(北陸自動車道の小杉インターチェンジのすぐ近く)の一画に建てられるんですね。高速道路のインターチェンジ付近は商業施設の立地でも好条件なので、これは当然だと思います。(続く
続き)よって、コンパクトシティを推進するのであれば、高速道路のインターチェンジ付近をその地域の中心部に定めてコンパクト化したら良いのだと僕は思います。地域の中心部が鉄道の駅前である必然性はないです。

コンパクトシティ富山市は自滅するか否か - Togetterまとめ

「SCを都市の中心にする」というのは、暴論とは言いませんが、いささか性急な意見だと思います。ですが、SCを都市の中に組み込んでいく、という取り組みは全然あり得ます。
 

熊本型コンパクトシティ

「熊本型コンパクトシティ」というものが注目されているようです。

将来のめざす都市の姿として、買い物や通院等、日常生活に必要な機能を有する市内15の地域拠点と、商業、業務など高度な都市機能が集積する中心市街地とを、鉄軌道など利便性の高い公共交通で結ぶとともに、これらの地域拠点への住まい誘導などを進めていく

http://www.uit.gr.jp/members/thesis/pdf/honb/413/413.pdf

複数の地域拠点をハブとして、そのハブを公共交通で結ぶ、という形ですね。結果が出ているわけではないので評価しにくいのですが、中心市街回帰型のコンパクトシティはどうしても商業中心に偏りすぎているのではないか、住民の住みやすさはどうなるのか、という疑問が出てきます。住みやすさに着目して、高評価の地域、あるいは効率よく住みやすさを実現できる地域、を拠点に移住を進める、というのは合理的であるように思えます。
 

スモールワールド

このやり方を見ると、「スモールワールド」を想起しますよね。

コーネル大学の二人の心理学者ダンカン・ワッツ及びスティーブン・ストロガッツは1998年、ネットワーク理論からスモール・ワールド現象を説明しようとする最初の論文を出した。その中で彼らは、スモール・ワールド的性格が自然のあるいは人工的なネットワーク(C. elegansの神経系や送電網)双方に出現することを示した。彼らは規則的な格子から始め、そこに少数のランダムなリンクを導入したところ、ネットワーク全体の直径(ネットワーク内の任意の2つの頂点を結ぶ最短経路の平均値を、そのネットワークの直径という)が極めて小さくなった。

スモール・ワールド現象 - Wikipedia

 
仮に、都市の多様性が住民のネットワークによるとすると、都市は「スモールワールド」であればあるほどよく、「ハブに1本長いリンクを引く」というのは理にかなっていると思われます。

東京を初めて訪れる外国人を案内するとき、私は都庁の展望台に連れていくことにしている。
果てしなく広がる東京 (都市圏) の規模の大きさに、彼らは間違いなく驚く。
低コストの大量輸送機関があれば、一定のつながりの度合いを維持しながら、高層化をおさえて水平に拡張することも可能だ。
デトロイトなど人口が減少する「縮退都市」は、より小さな地域に集中することで、つながりの度合いを高めようとするものだ。
人口が大きいだけで、つながりを生み出さない都市は、経済的パフォーマンスも高まらない。もっとも、つながりの度合いが低い都市は、成長のしようがないのかもしれない。

都市はみずから成長する | Follow the accident. Fear the set plan.

 

Ingressで都市論

「1本長いリンクを引く」と言えば、Ingressですよね(強引)
Ingressを知らない方は適当にググっていただくとして*1ざっくり説明をしますと。
要は地図上にリンクを引いていく陣取りゲームなんですが、リンクを引くためには、現実の世界で線の両端を訪問していなければなりません。リンクがあるならその両端を誰かが訪れていることになりますから、逆に言うと、リンクがないならその両端を訪れているプレイヤーが少ないのかもしれない、ということになります。
プレイヤーの行動は実際の都市のあり方によって拘束されますから、そのプレイヤーの行動を観察することによって、都市の構造を見ることができるのではないか、という思いつきです。
 
というわけで、地元である水戸の画像を貼ります。

主要な観光地である「偕楽園公園」と、古い中心市街地である「上市」や新しい市街地である「駅南」が見事に分断してますね、素晴らしい。
 
 
 
ええ、分かってます。暴論ですよね。
 

その他の問題

関連するその他の問題を挙げてみます。
 

モータリゼーション

駅を中心としないコンパクトシティは、モータリゼーションを促進してしまうのではないか、という心配があります。
バス等の公共交通でリンクをするとしても、都市間レベルのリンクを引くことはできません。つまり市外からの来訪者は「駅→公共交通」で行くか、車で直接行くか、しかないでしょう。茨城県の人間が成田エクスプレスに乗らないのと似たようなものです。
モータリゼーション前提の社会は、運転ができない高齢者や障害者などの生活の質を下げます。最近の法令改正により、精神疾患等の人が免許を取りにくくなった経緯もあります。
 
ちょっとSFになりますが、Googleカーが都市を救うかもしれない、という意見もあります。

人口減少に伴って、地方や郊外では住民の交通の足をいかに確保するかが社会問題になっているけど、「自動運転車」はそれを解決する上での強力なアイテムとなるに違いない。現在の地域バスにせよコミュニティバスにせよ、その維持に最もコストがかかるのが人件費だからである。ここが一気に削減できる。
高齢者や障害者らにとっては、コンパクトシティ論者らが主張している「歩ける都市」よりも「自動運転車を活用した都市」のほうが優しい都市になるであろうと僕は考える。これからの未来の都市づくりにおいては「自動運転車」が必須アイテムとなるだろう。「自動運転車」の一日も早い実用化が待たれる。

「自動運転車」が実用化されたら、都市は一気に変わる - Togetterまとめ

 

インフラコストの問題

駅を中心としないコンパクトシティは、結局インフラコストを増大させるのではないか、という心配があります。

町の集約化を進めなければ、今後さらに負担が増していくと警告する専門家がいます。
土木工学を専門にする名古屋大学教授の林良嗣さんです。
林さんは、各地の都市を500メートル四方に分けて道路と上下水道の総延長距離と人口から1人当たりのインフラ維持費用を調べています。
例えば名古屋市とその周辺の場合、中心部の年間の平均維持費用は1人当たりおよそ1万6,000円。
一方、郊外の中には80万円近くかかる場所があることが分かりました。
今後さらに郊外の人口減少が進むと、中心部と郊外の維持費用の格差は最大180倍にも広がると林さんは指摘しています。

わが町を身の丈に - NHK クローズアップ現代

各シナリオにおける都市圏全体での夜間人口あたり費用の経年変化を図−13に示す。市街地面積が現状のまま推移するシナリオ0においては、人口減少により2050年には夜間人口あたりの負担額が約17%増加する。シナリオ20〜80においてはシナリオ0に対して費用削減効果はあるものの、その効果が顕著になるのは2040年以降である。これは、人口がある程度撤退しなければ顕著な費用削減効果は得られにくいということを意味し、長期的な視点での取り組みが必要であると言える。また、2010年の費用を下回るためにはシナリオ80のレベルの市街地集約が必要であることがわかる。

http://library.jsce.or.jp/jsce/open/00041/2010/27-0305.pdf

2050年には1人当たりのインフラコストが17%増加する、ということらしいです。そして2010年並みの負担にするためには、効率の悪い地域の上位8割の地域から撤退する必要があるそうです。
これ、名古屋圏という日本有数の大都市圏の話だというのが……
 

多様性の問題

都市が内包する多様性について着目すると、SCは多様性の伝達装置としての役目を果たすものの、多様性を創造する事はできないのではないかな、と思います。結果、SCを中心としたコンパクトシティは東京郊外都市の劣化コピーを生むだけのような気がします。人口減少社会においてそのような都市がどのように変化していくのか、興味はあります。
 
 
 
市場によって自律するようなSCがあれば、都市の中心としてちょっと面白いかもしれないな、という妄想をしたことがあります。具体的に言うと、マンションのように売り場面積を売買できるSCです。
まあちょっと無理でしょうけれども……
 
 
 

*1:今から始めるなら緑がいいと思います