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不動産屋のラノベ読み

不動産売買営業だけどガチガチの賃貸派の人のブログ

更新料訴訟・大阪高裁判決を読む(1) - 更新料は賃料の一部なの?

不動産

 
 koushinryou.net
 ↑で判決全文を掲載してくれてたので、ざっくりテーマを絞って読み解いていきます。3回ぐらいを予定。
 なお、テキスト起こしはLhankor_Mhyがしていまので、誤字誤記は私に責があります。
 

更新料の3つの法的性質

 更新料には3つの性質がある、と今まで言われてきました。

 被控訴人は、本件更新料は、(1)賃貸人による更新拒絶権放棄の対価(紛争解決金)、(2)賃借権強化の対価、(3)賃料の補充という複合的性質を有していると主張する。

 この内、(1)(2)に関しては、「なんだかんだ言ったって、実際に紛争になれば入居者が勝つんだから、入居者が対価を支払う必要ないじゃん」と一蹴しています。
 これについては、賛成です。私が「更新料は権利の実態に合わない」と時々言っていたのはこういう意味での発言です*1
 で、問題は(3)の「賃料の補充」についてです。この性質が認められてきたため、更新料は合法である、という解釈が成り立ってきたところがあります。
 

更新料が賃料の補充として認められない理由

 裁判所は、この契約の更新料が賃料の補充として認められない理由を主に3つ上げています。
 

 ここで、当然のこととして、本件更新料は、本件賃貸借契約が更新されないときに授受されることはないから後払いされる賃料の性質を持たないことは明白である。

「後払いなら更新の有無に係らず取るだろうから、後払い賃料という解釈は無理筋だよね」という指摘です。確かにごもっとも。
 じゃあ、前払いなのか、というと以下の通り。
 

 そして、本件賃貸借契約においては、更新が繰り返されても、あるいは事情の変化があっても変更する事が予定されておらず、したがって家賃の増減と連動する事がなく

「家賃の前払いなら、家賃が下がったら更新料も下げるべきなのに連動してないよね」という指摘です。
 普通は「更新料1ヵ月」とか連動する契約が一般的なので、この指摘は他の契約には当てはならないでしょう。
 

 また、現実に更新後本件賃貸借契約が1年の期間途中で終了した場合でも全く清算されない扱いとされている事が明らかにされている

「前払いなら途中解約があれば清算するはずなのに、それもないよね」という指摘です。
 これについては若干の疑義があるかと思います。賃貸借契約を離れて世の中を見たときには、途中解約したときに日割清算をしない契約というのは、割とありふれていると思います。ただ、その途中解約の罰金的なイメージで考えると、それはそれで賃料ではないものだな、と思わなくもないですね。微妙。
 

説明によっては更新料は賃料の補充になる?

 ただ、裁判所も微妙な言い回しを使ったりもしています。

 控訴人も、当初本件賃貸借契約を締結するに当たり、本件更新料に関する記載のある重要事項説明書に基づいて説明を受けて契約を締結したのであるから、被控訴人、控訴人共に、当初本件賃貸借契約締結時及び本件更新契約時に本件更新料が賃料とともに全体として本件物件の使用収益に伴う控訴人による経済的な出捐であると認識していたと推認する余地はなくはない

「出捐」とか難しい言葉ですね、辞書引いちゃいました。

 しかしながら、
(中略)
本件更新料の説明は全くされていない。この点では、本件敷金については、第5条、第18条において、その授受の目的、性質、授受の効果がはっきりと明示されている(乙1)のと際立った違いを示している。重要事項説明書も、本件契約事項第21条以上の説明を加えていない。
(中略)
 したがって、本件賃貸借契約の当事者である被控訴人と控訴人の双方に、特に控訴人には、当初本件賃貸借契約締結時及び本件更新契約締結時を通じて、本件更新料は単に契約更新時に支払われる金銭という以上の認識はなかったと推認する他はない。

「確かに入居者も分かってて契約したかもしれないね。でも、契約書に更新料としか書いてないんじゃ、更新時の費用として読むしかないんじゃないの?」という指摘です。
 一見ごもっともなんですけど、日本の法律って文言どおりに読めないものが多いですからねえ。憲法9条からして素直に文言どおり読めないわけで、いわんや民間の契約書をや。
 ただ、この判決を通して見ると、全体的に「法律にマジレス」感があって、これはなんか好感が持てるのですよねえ。今までの法解釈との一貫性には欠けるものの、説得力がある。裁判員制度以後の判決はこういうのが多くなるのかなあ。
 
 
 という辺りで、続きます。予定では、

  1. 更新料は賃料の一部なの? ←このエントリ
  2. 更新の対価をもらって何が悪いの? → 更新料訴訟・大阪高裁判決を読む(2) - 何で更新料を受け取るのがいけないの? - 不動産屋のラノベ読み
  3. 更新料はこれからどうしよう?

 こんな感じで。予定は未定です。
 
 
 
 しかし、この辺の話は、以前のエントリでid:ululunさんからコメントで頂いてたとおりに運んでしまったわけで、これは悔しいながらも彼の先見の明を認めざるを得ないです。参りました。

*1:礼金はアリ、と言っているのも同じ理由からです