不動産屋のラノベ読み

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民主党の「両手禁止」見直し

 
 ダルくなるよなニュースが。
 

 民主党が政策集に記載した、不動産の売り手と買い手の双方から仲介手数料を取る「両手取引」の原則禁止について、前原誠司国土交通相は10月2日、根本から見直す考えを示した。ケンプラッツ、日経ホームビルダー、日経アーキテクチュアの共同インタビューの席で明らかにした。

不動産仲介の「両手取引禁止」は見直し、前原国交相|日経BP社 ケンプラッツ

 前原国交相は、両手取引原則禁止の意図と見直し理由について、「両手取引をしたいということで囲い込む問題が出てくる。そのことによって、閉鎖的な市場になっている面があるというところから、これが生まれたと聞いている。ただ、中小零細の不動産業者から相当なクレームが来た。実際にやっていったら成り立たないようなところが出てくるかもしれない」と語った。

 あー、はあ。国交相が自分の党の住宅政策について「これが生まれたと聞いている」ですかいな。それでもって、「中小零細の不動産業者から相当なクレームが来た」から見直す、と。どんだけ他人事ですか。眠てーな、マジで。
 そんなクレーム、初めから予想ができたじゃないですか。中小零細に厳しいのは当たり前で、小売業界が「効率のために個人商店潰して価格破壊」してきたように、不動産業界も大手以外が生き残れない業界にして消費者に還元していく政策でしょ、これ?*1 INDEX2009でこの政策を見た時は、「不動産業界をいっぺん破壊して再構築」か「徐々に変化させていくための遠い目標」か、その辺のロードマップみたいなものがあるものだとばっかり思ってました。
 ひょっとして、なんの腹案もなくどういう影響が出るかも考えず、ただの思いつきの政策ですか? どーなってんですか、これ、id:NakamuraTetsujiこと、中村てつじ先生、言いだしっぺでしょ?
 
 まあ、一応フォローしておきますが、INDEX2009に入っていただけでマニュフェストには含まれてなかったので公約破りではないです。また、前原先生も

 とはいえ、導入を止める判断を下したわけではない。「これがなくなっても、複数の業者間で仕事を回し合えば、なんとかなるかもしれない。扱う件数が倍になれば片手でも元が取れる。どちらがいいのか考えていきたい」(前原国交相)というスタンスだ。

不動産仲介の「両手取引禁止」は見直し、前原国交相|日経BP社 ケンプラッツ

 と、おっしゃってますので完全撤回ではないんですね。これから色々検討して、良い政策を生み出してください。基本的には応援します。
 
 でも、正直「複数の業者間で仕事を回し合えば、なんとかなるかもしれない」程度の認識ではやって欲しくないですねえ。扱う件数が倍になって手数料が変わらなければ、どう考えても差し引きマイナスでしょう。不動産仲介にはコストがかからないとでも思ってるのかな。
 また「複数の業者間で仕事を回しあう」そのやり方こそが個人不動産屋に打撃である、ということは「不動産業界の歩き方」でも指摘されています。

 しかし、共同仲介の2社が同じ戦闘能力ではありません。必ず力量に差があり、不公平が生じます。力のある業者側の顧客が得をして、力の無い業者側の依頼人が損をするケースも多いです。
 単独業者による両手取引なら、媒介業者の対立は生じないため平等です。媒介業者は紛争の勝ち負けでなく、解決を目指します。どちらかの一方に偏る理由が無いのです。これこそが公正では?
 ま、百歩ゆずって弁護士に例えた場合ですが・・誰でも有能な弁護士に依頼したいと思うのでは?両手取引の禁止により、売主も買主も自分だけに味方をする強い業者を求めます。ということは・・
 売主も大手に依頼・・買主も大手に依頼・・となる事くらい、少し考えたら猿でもわかることです。資本力・・組織力・・信用力・・紛争のノウハウ・・大手が存在する地域では地場業者は壊滅しますよ。

ブログ版/不動産業界の歩き方 少し考えたらわかること

 
 民主党内で、もう少し議論を深めていただく事を期待しますが、ひょっとして住宅政策に関しては人材不足なのかな……?

*1:不動産業界の場合、大手こそコンプライアンスが低い事が珍しくないから消費者利益になるかどうかは微妙だが