不動産屋のラノベ読み

不動産売買営業だけどガチガチの賃貸派の人のブログ

対策を啓蒙することが社会全体の利益になるとは限らないかもしれない

 
性暴力加害者の心理 - キリンが逆立ちしたピアス
↑この記事について、ブクマで「対策になるなら許容した方がいいじゃん」という意見が散見されたのですが、そうでもないんじゃないか、と思ったので書きます。
考察のために単純なモデルを用意します。

  1. 加害者は被害者候補と30分に1回のペースで接触に成功します。
  2. この時、被害者候補は対策率pで被害を逃れます。

例によって、計算ミスなどをしている可能性がありますので、ご指摘をお願い致します。
 

モデル1(交通事故タイプ)

毎日3時間、加害者は被害者を探索をするものとします。当然ですが、まったく対策がなされていない(対策率0%)場合1日で6人の被害者が出ます。この対策率0%時の被害数を1とした時の比率と対策率を比べると、対策を啓蒙する効用が見えてきます。

対策率 被害比
0% 1.00
10% 0.90
20% 0.80
30% 0.70
40% 0.60
50% 0.50
60% 0.40
70% 0.30
80% 0.20
90% 0.10
95% 0.05
99% 0.01
99.5% 0.005

当たり前ですが、対策は大きな効果を挙げます。対策率が50%になれば被害は半分になります。
 
このモデルを「交通事故タイプ」と呼ぶことにします。交通事故のように、大きく見ると単位時間での被害者・加害者接触率が一定であるからです。その他にこのモデルに当てはまりそうなのは、フィッシング詐欺オレオレ詐欺などがあると思います。
 

モデル2(いじめタイプ)

毎日3時間、加害者は被害者を探索をするものとします。ただし、加害者は1度被害を与えるとそこで満足してその日の探索を打ち切ります。ですから、最大でも1日で1人の被害者しか出ません。このモデルでの対策率と被害比の関係は以下のようになります。

対策率 被害比
0% 1.00
10% 1.00
20% 1.00
30% 1.00
40% 1.00
50% 0.98
60% 0.95
70% 0.88
80% 0.74
90% 0.47
95% 0.26
99% 0.06
99.5% 0.03

ご覧の通り、対策率が7割程度にならないと目に見えるような効果がありません。内容にもよると思うのですが、一般に対策率向上コストは現在の対策率に寄ってくると思いますので、ある犯罪対策を7割の人に普及させるのはなかなか大変なことではないかと思います(防犯ブザーは何割の人が持っているんでしょう?)。
 
このモデルを「いじめタイプ」と呼ぶことにします。大抵の場合、いじめっ子はターゲットが手ごわかった場合には別の被害者を探しますし、また単位時間当たりで被害者を増やしたりしません。
 

対策の啓蒙が有効に働くかどうかは加害者の行動によるかもしれない

あくまでモデルでの話ですので現実はそんなに単純ではないでしょうが、「交通事故タイプ」の犯罪の場合は対策の啓蒙は有効であり、「いじめタイプ」の犯罪の場合はなかなか難しい、ということがあり得るでしょう。もちろんこの中間のモデルもありえます。モデル2で2度被害を与えないと満足しない場合、対策率50%で被害比0.94程度になります。6度被害を与えないと満足しない場合は当たり前ですがモデル1と一致します。
 
 
 

蛇足ですが

もし、「元いじめっ子が綴るいじめのターゲットにならない方法」みたいな記事があったら、別の意味でダメだと思います。なぜなら、いじめっ子が「お前がこうしたらいじめないでやるよ。別の奴を狙うからさ」と言ってるようなものだからです。大人になっても世の中にはそういうケースがありますが、そう言われてその対策に乗っかるのは、別の奴へのいじめに加担するみたいで自己嫌悪に陥ってしまいますよね。