ちょっと面白い記事があったのでご紹介
家賃に見る価格の下方硬直性: ニュースの社会科学的な裏側
下方硬直性とは「価格が下がりにくい性質」というような感じの言葉です。
ひとことで言うと、「地価が下がっているから家賃も下がっていいと思うけど、下がってないね。家賃って下がりにくいんじゃない?」という記事なのです。
私も別のグラフを書いてみました。
これは家計調査から勤務先収入と家賃を比較したものです。ここからも「借りる人の収入が減ってるから家賃も下がってもいいと思うけど、下がってないね。家賃って下がりにくいんじゃない?」ということが言えるような気がします。*1
で。
ここから、ひとつの「発見したこと」とひとつの「言いたいこと」が生まれましたので、エントリを挙げます。
家賃が下がらないのは大家さんの努力かも
まずは「発見したこと」から。
「家賃が下がらないのは、長い間入居している人の家賃が変わらないためじゃないかな」と思い立ったので、平成20年の住宅・土地統計調査の資料を見てみました。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001025163&cycode=0
↑の84の表で入居時期別建築時期別の1畳あたり家賃が分かります。予想としては「長く居住している人は、旧来の家賃を払い続けているため高い家賃水準になってる」「最近入居した人は、大家が入居を促進するために家賃を下げるため低い家賃水準になってる」「だから、同じ建築時期の物件は入居時期が最近であるほど家賃が下がる」というものでした。
ところが統計はこうなってました。
*2
逆ですね。バブル期以降、建築時期が同じ物件は入居時期が最近であるほど家賃が上がっています。特に築5年ぐらいの物件について、新築時から住んでいる人よりも中古物件として借りた人の方が家賃が高いとか、なんだそりゃ、って感じです。
これはどう解釈すればいいか。
仮説ですが、こういうのはどうでしょうか。
- デフレが続き借り手の収入も落ち、同じ賃料で募集は難しい。
- しかし、建築費などの借り入れが残っており、賃料を下げると支払いが滞る可能性が。
- そこで、リフォームなどで設備を更新し、物件の価値を上げて入居者を呼び込むと同時に賃料の低下を防ぐ大家が増える。
- 一方で長期入居している物件は設備の更新ができないため、入居者からの家賃下げ交渉を受け賃料が低下している。
同じことがオフィス市場で起きないのは、「テナントの価値は設備よりも立地の要因が強い」「居住物件オーナーよりもテナントオーナーの方が経営体力が高い」という説明もできそうです。
もちろん、他にも仮説は考えられます。
- 礼金などが減少傾向にあるため、代償として賃料が上昇してる
- 長期入居者が住む物件は、一般に賃料が相場より低水準
とくに、2番目の要因は強そうですねえ。
もうひとつの「言いたいこと」は別エントリにします。