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不動産屋のラノベ読み

不動産売買営業だけどガチガチの賃貸派の人のブログ

フラクタルなレモン市場問題|建築不動産クラスタ交流会の件その1

不動産

 
 かなり前なのですが、建築不動産クラスタ交流会に参加してまいりました。
 

twitter参加者を中心として、建築不動産クラスタ交流会を執り行う事になりました。 さまざま立場で実務に従事されている皆さんに参加していただき、建設・不動産業界がおかれている厳しい状況を打開するべく、前向きな意見交換ができる場にしたいと思い、この会を企画させていただきました。

2/19 建築・不動産実務クラスタ交流会【最終版 詳細・テーマダウンロード含む】 建築・現場の歩き方

 この中で、私は5番目の@yokohamastyleさんの「情報過多時代のクライアントへの正しい判断材料提供」のコメンテータを僭越ながら務めさせていただいたのです。
 で、今更かなーと思わないでもないですが、その場では時間の関係で言いたいことが言えなかったのもあり、オフレポというか、追記みたいな形で不動産業界のことを書きます
 
 私はコメンテータとして二つの質問をしましたが、今回は一つ目の質問についてです。
 

レモン市場問題とは

 不動産業界というのは、一般の皆様から「なんとなく胡散臭い」「騙されそう」と思われている業界です。
 私は以前から、その原因は「レモン市場問題」と「エージェンシー問題」にある、と考えていました。この内、「レモン市場問題」が一つ目の質問と関係が深いです。
 

経済学において、レモン市場 (lemon market) とは、財やサービスの品質が買い手にとって未知であるために、不良品ばかりが出回ってしまう市場のことである。

レモン市場 - Wikipedia

 簡単に言うとですね、買い手が売り手よりも情報を持っていないため商品の品質が分からず、良い商品が妥当な価格で売り出されても買い手が付かない、という問題です。
 業界の先輩である、不動産コレクターさんがブログで分かりやすく書かれています。
 

質問です。
Q.あなたは、新築住宅を気に入りましたが、契約には踏み切れません。理由は、あなたの疑問に対して売り手側の回答が明確ではないからです。あなたは、その不動産を購入しますか?
A.購入しません。

http://raise9.blog88.fc2.com/blog-entry-133.html

 
 不動産屋は買い手よりも情報を持っていることが多く、買い手にはその情報が正しいのかどうか分からない。一方で「不動産屋に騙された」という話ばかり耳に入ってくる。これが、不動産業界が怪しく見える原因のひとつです。
 

クライアントの判断力を上げるという解決

 プレゼンテータの@yokohamastyleさんは「不動産の情報はたくさん流れるようになった。しかし、クライアントの判断力が上がらなくてはいけないのではないか。クライアントが不動産屋に調査を依頼しそれに応じて我々が実務をする、そういう土壌作りが必要」というご意見でした。
 これは、とても分かりやすい解決法です。情報の格差があるからレモン市場問題が起こるなら、情報格差をなくしてしまえばいい。もちろん、買い手が売り手よりも商品について情報を持っているということはありえないので、買い手の不動産リテラシーを上げよう、というものです。
 買い手の不動産リテラシーが低い状態だと、建物に不具合があっても気づかず、またそれを調査しないまま取引をしてしまうことがあるでしょう。しかし、不動産リテラシーが上がれば「取引の前に建物検査をした方がいい」と分かり、情報の格差を埋めることができます。
 しかし、しかしですよ。
 その「取引の前にXXをしたほうが良い」というのが一番難しいのではないでしょうか。
 

「何を調べるか」が一番難しい

 たとえばですね。
「土壌汚染対策法の要措置地域に指定されているかどうか調べる」というのは、簡単です。地図を持って役所の環境課とかその手の部署に行き、「この場所は要措置地域に指定されてますか?」と聞けばよいのです。不動産屋じゃなくても高校生でもできる仕事でしょう。
 しかしですね。
 物件を見て、要措置地域に指定されているかどうか「調べたほうが良い」と気づくためには、直近の土壌汚染対策法の改正が平成22年4月1日より施行されていることをチェックしていなければいけないわけで、これは不動産屋でないとなかなか難しい。
 もうひとつ、たとえば。
 先の例、お客様が「取引の前に建物検査をした方がいい」ということを知っていて、ホームインスペクターさんに建物調査を依頼したとしましょう。しかし、それで安心でしょうか。そのホームインスペクターさんが未熟で欠陥を見逃すかもしれません。それを防ぐには「XXを調査した方がいい」と知っていなければなりません。さらに言えば、それでも安心ではありませんよね。そのホームインスペクターさんが正しい調査方法を知らないかもしれません。それを防ぐには「XXをXXという調査方法で調べたほうがいい」ということを知っていなければ……
 ちょっとフラクタルでキリがないですよね。
 

「不動産リテラシー」と「不動産屋リテラシー

 そういったことを含めまして、私は「消費者の不動産リテラシーを向上させるコストは、本当にその利益に見合うのか? エージェントに任せた方が消費者としても利益が高いのではないのか」という質問をしました。
 @yokohamastyleさんのご返答は「不動産仲介の形を多様化していくと良い。リテラシーが高い人には低コストで自己責任の仲介を、そうでない人には不動産屋にすべてお任せでその代わり仲介料をたくさん頂く仲介を。選択できる仕組みがないのが問題」というものでした。
 
 それは実に良い方法だと思います。「XXについては省略しますので、仲介料が格安です」という業者がいれば、不動産取引のコストを上手に落とすことができるかもしれません。
 しかしながら、ここまで考えてきたことを頭に巡らすと、こういう疑問が出てくるはずです。
「いろいろなタイプの仲介の不動産屋がいるのはいい。でも、私に最適な仲介をしてくれる不動産屋はどうやって見つければいいんだ?
 
 そうなんです。
「XXについては省略しますので、仲介料が格安です」という業者を利用した方がトクなのかどうか、という判断はそのXXについて知っていなければならない。
 
 であるならば。
 お客様に必要なのは、不動産の知識や判断力ではなく、不動産屋の選び方なのではないでしょうか。
「不動産リテラシー」よりも「不動産屋リテラシーなのではないでしょうか*1
 

どうやって不動産屋を選ぶべきか

 ではどうやって不動産屋の選択をすべきなんでしょうか。実は全然腹案はないのですが(w
 
 ひとつの回答として「集合知」を使うというものがあると思います。
 好例は、政治家の選択でしょう。「専門的な分野について知識が乏しいクライアントが、委託すべきエージェントを選ぶ」という状況は、不動産屋の選択と似ている部分があります。政治家の選択は選挙という形で選ばれます。みんなの意見によって選択しているため、概ねそれなりの人が選ばれているようです。もちろん、たまに変な人が選ばれてしまうこともありますが、それでも北朝鮮のように独裁政治には今のところ陥っていないようです。
 
 ですから、不動産屋についても取引をした人が評価をして公開をしていく、そういった手法で最悪な不動産屋を引き当ててしまう可能性をある程度までは下げることができるかも、と思っています。幸いなことに、不動産営業は宅建主任者登録をしていますので、それぞれに固有のIDを振って集合知的評価するというのは、技術的にはそれほど難しいことではないと思うのです。
 もちろん、世の中にはWEB2.0系口コミ機能がとても残念なことになっている例がたくさんありますので、それほど楽観できるものではないと思いますが。
 
 あとは、知識や能力に欠ける営業をあぶりだせるような一種の「リトマス試験紙」みたいなものを用意して組み合わせるとか。ちょっと宅建だけでは面白くないんじゃあないですかね。

*1:@yokohamastyleさんもこういうことを言いたかったんだと思ってます