追加の情報が上がってこないと何とも言えないのですけれど。この記事↓で、落札した会社がボロ儲けだとか、日本郵政公社がアホだとか、小泉改革(笑)とか、色々批判があるようですが。
旧日本郵政公社が民営化前の2007年3月、競争入札で不動産会社7社に115億円で一括売却した178か所の土地・建物のうち、評価額1万円とされた鳥取県岩美町の「かんぽの宿・鳥取岩井」が、売却の半年後に同町内の社会福祉法人に6000万円で転売されていたことがわかった。現在は老人ホームとして使われている。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090130-OYT1T00952.htm
これだけで批判するのはおかしいと思うので、エントリを上げます。
「1万円で売るなよ」について
購入したのは、東京都中央区銀座の(有)レッドスロープという不動産会社。売却額はなんと「1万円」だったという。
かんぽの宿 1万円で売却、購入業者は転売でボロ儲け:|NetIB-NEWS|ネットアイビーニュース
↑こういう記事を書くところもあるとおり、鳥取のかんぽの宿が「1万円で買われた」と思う人が多いようです*1。これは間違っています。
なぜならば、この売却は入札で行われたからなんです。
日本郵政公社は2月26日、全国178カ所の社宅や保養施設などを一般競争入札で一括売却した。入札には2グループが参加し、コスモスイニシアなど7社で構成するグループが総額約115億円で落札した。
郵政公社が178物件を一括で売却、コスモスイニシアなど7社に - ニュース - nikkei BPnet
入札ということは、以下のような流れのはずです。
- 不動産鑑定士が評価額を算出
- 入札の公告
- 評価額以上の入札があれば売却
ですから、「かんぽの宿・鳥取岩井」は少なくとも1万円以上の金額で買われていると思われます。じゃあ、実際はいくらで売ったことになるのかという話になるのですが、178物件の総評価額で按分計算するのが常識的なところではないでしょうか*2。ですから、冒頭に書いたとおり、もう少し情報が出てこないと何とも言えないんです。
「郵政公社の評価ひどすぎ」について
郵政公社は鑑定業務を外注しています。この鑑定業務も入札で決めていたはずです。ということは、「1万円の鑑定評価が間違っていた」というなら、まず責められるのは鑑定士のはずです。
もちろん、郵政公社に責任がないとは言いませんが、鳥取県岩美郡岩美町付近は非線引区域らしく、せいぜい2、3万円/坪がいいところでしょう。RC延床1000坪の建付減損は5000万円ぐらいつけてもおかしくありませんから、「タダ同然」という評価がそれ程外れているようには思えないです。DCFで評価しても、赤字の宿なんですからどうしようもないでしょう。googlemapで「鳥取県岩美郡岩美町岩井351」を見て下さい。周り山ばっかりですよ。あなたならここの土地1反3畝、いくらで買います?
「小泉改革(笑)」について
同社は「05年度に2700万円、06年度にも4200万円の赤字を計上したため、一括売却の対象とした」と説明している。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090130-OYT1T00952.htm
これ、小泉がいなかったら今も赤字出し続けてたんじゃね?
「不動産屋は詐欺じゃね?」について
さっきも少し書きましたが、あの物件を欲しいという人はあまりいないでしょうから、売れ残りリスクがあるんですよ。で、リスクが高い商品は安く仕入れなければ話にならないわけです。ハイリスクハイリターンって奴です。こういうニッチな物件の買主*3を探してきた営業さんの腕を誉めるべきだと思いますけどね*4。
それに、業者が売主だと2年の瑕疵担保責任がつくんで、買主にとってもいいことはあります。というか、たとえ1万円で買っても利益はせいぜい3000万円*5ですから、それでRC3F1000坪の瑕疵担保って結構怖いなあ。
嫌儲も結構なんですが、不動産屋は金を稼ぐ為にやってるんでして。
追記20090201
つづきを書きました。
郵政公社の鑑定評価についてもう一言 - 不動産屋のラノベ読み