不動産屋のラノベ読み

不動産売買営業だけどガチガチの賃貸派の人のブログ

おとり広告にもいろいろあって

 
 同業としては「これはひどい」とか「エイブルだからねえ」とか切断している場合ではないのです。
 

 存在しない物件や入居中の賃貸住宅を自社のウェブサイトに掲載し、「おとり広告」にしていたなどとして、公正取引委員会は18日、景品表示法違反(おとり広告、優良誤認)で賃貸仲介大手「エイブル」(東京)に排除命令を出した。
 公取委によると、エイブルは昨年3月から一時、自社の物件検索サイトなどに実際は3階に307号室までしかない福岡市内の賃貸マンションの「308号室」を掲載した。
 また、平成18年11月から昨年8月まで、入居者がいるにもかかわらず、都内や埼玉県内のマンション14室の広告を出していた。中には4年以上前に賃貸契約済みの物件もあった。
 さらに、最寄り駅から徒歩26分かかる埼玉県内の物件を「徒歩16分」と紹介したり、東京都内の昭和54年建築の物件を平成8年に建築された物件と不当表示したりしていた。

http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/080618/crm0806181558026-n1.htm

 
 4月頃に、首都圏不動産公正取引協議会がおとり広告について、「ちょっと、お前らいい加減にしろよ」という警告文書を出しました。各宅建協会で勉強会なども行われていましたし、「ああ、やっぱり来たか」と思った不動産屋も多かったのでは。
 
 で。
 ちょっと、自分たちを擁護するわけではないのですが、「インターネットのおとり広告をなくすのって、実は結構大変」ということを述べたいと思います。
 
 おとり広告について、前述の文書を抜粋してみましょう。

1 インターネット上の「おとり広告の具体的な態様」
 当協議会が過去に規約違反として措置したインターネット上の「おとり広告の具体的な態様」は、以下のとおりである。
[1] 適切な更新を怠ったために、掲載途中から取引不可能になった例
 最初にインターネットに広告を掲載した時点では、取引することができる物件であったが、掲載後に成約済みとなった物件を削除することなく更新を繰り返す等、適切な更新を怠ったために、長期間(表示規約に違反する事案をみると、いずれの事案も広告時点の1か月以上前に成約済みとなっている物件が含まれている。)にわたり、実際には取引することができない物件となっていたもの。
(略)
 
 「おとり広告」をしないためには、新たに情報を登録する際の成約状況等の確認は必要不可欠であり、情報登録日又は直前の更新日(以下「情報登録日等」という。)以降も、原則、リアルタイムに、成約状況の確認を行い、成約済みの物件を削除することが最善であると考えられる。

(1)  「情報登録日等」及び「次回の更新予定日」を表示している場合
 一般消費者は、通常、「情報登録日等」及び「次回の更新予定日」の記載があれば、この期間内に成約済み等となった物件がある場合には、「次回の更新予定日」に削除されると認識するものと考えられる。
 表示規約は、一般消費者の「次回の更新予定日」に対する認識をこのようにとらえた上で、「情報登録日等」及び「次回の更新予定日」をインターネット広告における必要な表示事項としている。このことは、「次回の更新予定日」までの期間が長期にわたらないことを前提として、この期間内に成約済み等となった物件があっても、原則、「おとり広告」として取り扱わないという趣旨である。
 しかしながら、この期間が長期となっている場合は、当該広告に対する一般消費者の信頼度が低くなるだけでなく、成約済み等となった物件がそのまま掲載され続く可能性があり、これらを必要表示事項とした趣旨に反するので、不動産業者は、できるだけこの期間を2週間程度まで短縮し、「次回の更新予定日」には、当該物件が成約済みとなっているか否かはもちろん、取引条件等の情報の内容に変更がある場合も確実に更新することが求められていると考える。

公益社団法人首都圏不動産公正取引協議会−インターネット広告の適正化について−

 
 つまり、「次回更新予定日」を明記して、その範囲内では「成約していても、おとり広告とはみなさない」ことにしましょう、その「次回更新予定日」は2週間以内にしましょう、という内容です。
 実は、結構これが大変です。
 
 例えば、私がいる会社は管理物件を5000戸持っています。その物件に関しては当然入金管理もしているので、成約状態は完全に把握していますので、原則24時間以内に更新できるシステムを作りました。成約状態だけではなく「ちょっと検討したいので3日だけ押さえたい」という場合にも、その期間だけWEB上の表示を押さえることもしています。おとり広告はミス以外の要素では出ないです。
 ただ、当社以外の物件、いわゆる先物というやつですが、15,000戸以上をDBに放り込んであるんですね。これらの物件の状態を把握するには問い合わせをしなければならないわけですが、単純に2週間で割ると15000÷14で一日当たり1000戸以上です。成約状況のことだけ考えるとしても稼働率80%として200件/日です*1。これに「リフォームしました」とか「○日以降入居可能です」とか「家財保険料を変更しました」とか、そういうのが加わってくるわけで、とてもじゃありませんが(結果的に)おとり広告を完全に排除できないです。
 まだ、ウチの会社は地方中堅管理会社ですので管理物件メインで広告を打てますが、都内の仲介オンリー空中店舗とかそういう不動産屋はかなりキツイでしょう。
「じゃあ、広告の量を減らせばいいじゃん」とは、その通りです。しかしそうすると、「データの量がコストに反映しない」というWEBの長所が全く使えないわけで、それってどうなの、みたいなのもあります。また、DBの物件丸投げと比べて、どの物件が出稿しているのかコントロールする手間がかかるわけで、それほど作業量は減らないかな、とも。
 
 
 
 
 いやあ、なんか、ほんと、言い訳じみてきたな(w
 でも、あのニュースにあったような悪質で故意的なおとり広告は、ガンガン排除して欲しいですね。
 
 最後に提案。

  • 賃貸物件のXMLスキーマ、またはマイクロフォーマットを業界で策定すべき。
  • 管理会社は「客付OK」な物件をその形式で配信すべき。

*2

*1:もちろん大手管理会社は空室一覧をFAXしてくれるので、200件TEL&FAXするという意味ではありません

*2:「空室一覧」がWEBに流れているようなものだから、先物オンリーの不動産屋は商売やっていけなくなるけど