不動産屋のラノベ読み

不動産売買営業だけどガチガチの賃貸派の人のブログ

更新料は前払い家賃じゃないかな


 この訴えはちょっときびしいなあ。

 賃貸住宅の契約を更新する際、入居者に「更新料」の支払いを求める契約条項は消費者契約法違反にあたるとして、京都市北区の男性(52)が13日、以前住んでいたマンションの家主を相手取り、支払った更新料50万円の返還を求めて京都簡裁に提訴した。京都や首都圏などで半ば制度化している更新料について、同法を根拠に返還を求めた訴訟は全国で初めて。

 訴状によると、男性は2000年8月、同市左京区の賃貸マンションに月4万5000円の賃料で入居。この際、更新料は1年ごとに10万円とする契約を結び、05年8月まで計5回、総額50万円を支払った。

 原告側は、更新料の支払いについて、「家主が地位や情報力、交渉力の格差を利用して入居者に押しつけてきた慣行」と主張。家賃の2倍以上の更新料は極めて高額で不当とし、消費者の利益を一方的に害する契約条項を無効とした同法に違反する、としている。

http://osaka.yomiuri.co.jp/news/20070413p302.htm


 これは、ないと思いますよ。
 合意があって契約して、合意があって更新をしてるわけですから、しかも5回も。その更新の間、何をぼーっとしてたのかって話です。
 これが専門的な話なら「錯誤があった」とか「説明が不十分だった」とか言えるかもしれないですけど、「家賃:月4.5万円、更新料:年10万円」って、どうやったらこれ以上詳しく説明できるんでしょう?


 悪徳さんもこんなことを。

どうしても食べたい「レストランの料理」があって、ネットや店頭やメニューに「サービス料10%」と明記されていて、それを承知した上でその時は納得して食べていながら、帰宅してから「サービス料を取るのはおかしい。そんなのはそもそも代金に含まれていて当然である。返せ!訴えてやる!」と騒いでいるようなものです。

途中で家主との間で別のトラブルでも有ったのかも知れませんね。レストランで言えば「思ったより料理が美味しくなかったし、サービスもサービス料を取れるほど良くはなかった」とか・・・。

ま、レストランだって「サービス料は不当」となれば料金をアップせざるを得なくなるでしょう。賃料も同じようなことが言えます。更新料がもらえなくなったら「今の家賃」で貸すことは出来ません。次の更新では値上げせざるを得ず、新たなトラブルが発生するでしょう。

気になる「ある裁判」の行方: 悪徳不動産屋の独り言


 全くそのとおりだと思います。
 今回のケースだと年間の支払が、4.5*12+10=64万円ですから、月約5.3万円の賃料・更新料0円と同じですね。その金額が周辺相場とかけ離れてなければ、別に問題ない契約だと思いますよ、ほんと。


 そこなんですよ。
 要は、家賃を先払いしているようなものなんですよ、更新料とか礼金とかいうものは。
 例えば、以下のような物件があったとしましょう。

  1. 家賃6万円・更新料1ヶ月/2年
  2. 家賃6.5万円・更新料無

 で、この物件に1年住んで退去したとしましょう。
 すると、かかった費用はそれぞれ、

  1. 6*12+6=78万円
  2. 6.5*12=78万円

 ちょうど同じ金額です。
 では、2年間住んで退去したとします。

  1. 6*24+6=150万円
  2. 6.5*24=156万円

 6万円、1の方が得ですね。


 つまり。
 オーナーとしては、総体として同レベルの賃料にするならば、礼金や更新料をつけた方が入居者に対して「長く住むインセンティブ」を与えられるのです。そして、普通のオーナーは入居者に長く住んで欲しいと思っています。


 だから。
「先払い賃料」としての礼金・更新料は、オーナーにとって経済的合理性があり、それを制限するのはどうかな、と思います。
 意思表示に瑕疵があるような契約以外は、賃貸市場の中での競争に任せてしまうのが良いのではないかな。




070428追記:

http://b.hatena.ne.jp/entry/http://www.asahi.com/national/update/0413/OSK200704130027.html


 ネガティブな意見がたくさん。
 やっぱり、エンドと業者の意見は違うな。