不動産屋のラノベ読み

不動産売買営業だけどガチガチの賃貸派の人のブログ

リスクの分散と入居差別


 前回のエントリにコメントを頂きました。うしさん、有難うございます。


 考えさせられる内容でしたので、もったいないので新しいエントリにします。


 うしさんのコメント

国籍だけで入居拒否なんて余りにも大雑把過ぎて機会を失うことになるから家主にとっても損だと思うんですが。

 Lhankor_Mhyのコメント

外国人を受け入れるマンションが少ないですから、一度受け入れると「多国籍マンション」に早変わり、なんて珍しくないです。
で、一度そうなってしまうと、今度は日本人が入居を嫌がります。機会損失としてはこちらの方が大きいかなと。

 うしさんのコメント

Lhankor_Mhyさんやpoohpapaさんのおっしゃることを根拠にリンク先の裁判の原告を入居拒否するのは妥当でしょうか。私が働く業界でも、すぐ逃げてしまう人間との取引は拒絶するのが適切だとされますが、この原告の場合は積極的にセールスを推進する対象になると思います。被告となった家主も原告の人の入居を認めても経済的不利益は無かったと思います。


 うん、そうですね。この原告はそうかもしれません。弁護士だからお金持ってそうですし、法律も守りそう*1


 ただ、問題は大して変わってませんよね。結局「在日は入居拒否」から「在日は入居拒否(弁護士は除く)」になっただけです。入居差別の問題は残ります。入居させるとリスクがある人に対して入居差別するのは、依然としてオーナーとして経済的合理性があるのです*2


 じゃあ、どうすれば良いのか。この状況では、リスクの負担は100%オーナー持ちです。その負担割合を変えてはどうでしょう。日本人は礼1敷1のところ、外国人には礼2敷2、とか。
「それも差別だろう」って? 
 そうですね。そもそも、この方法はリスクヘッジとしてはあまりうまくないです。一番の方法はリスク分のマージンを乗せて誰かに引き取ってもらうことです。


 実は、そんな仕組みはもうあります*3
株式会社リプラス レントゴー
http://www.rentgo.jp/

日本国内にお住まいでお家賃を安定してお支払いできる方であれば、国籍・年齢・職業を問わずどなたでもお申込みいただけます。例えば外国籍や未成年者でも、お家賃がお支払できる方であればお申込みは可能です。


 ちなみに、留学生向けにこんなものも。
JEES 留学生住宅総合補償制度の概要
http://www.jees.or.jp/crifs/index.htm


 これであれば、外国人であろうと誰であろうと、保証会社がそのリスクを引き受けてくれます。さらば、入居差別!


 と、言いたいところなのですが。
 近い将来この平等は崩れるでしょう。
 車を持っている人はご存知でしょうが、自動車保険は一般にその人が事故を起こしやすい「属性」かどうかで、保険料が違います。
 家を買った人はご存知でしょうが、住宅ローンは一般にその人が代位弁済を起こしやすい「属性」かどうかで、利率が違います。
 家賃保証が一般にその人が滞納をしやすい「属性」かどうかで保証料が違わない状況は、長く続かないでしょう。


「保証料差別が起こらないように、監視すべきだ」って? なるほど。
 でも、保証料が「一律0.5か月分」の保証会社と、「審査次第で0.25ヶ月分」の保証会社と、どちらに申し込みたいかは明らかですよね。
「国籍を理由にして保証料を差別することを禁止しよう」って? 馬鹿言っちゃいけません。審査内容を第三者に監視させるなんて、個人情報保護法に触れるじゃないですか。


 結局、我々はその「属性」によって「市場価値」において差別されるのは、受け入れるより仕方なさそうです。
 でも、家賃保証に関しては、滞納するたびに手数料をとる、とか「属性」以外のところでヘッジしてくれると嬉しいなあ。

*1:借地借家法をフル動員してくる手ごわい客かもしれませんが

*2:ただし、これを侮蔑的な差別につなげてはいけないことは、前述の通りです

*3:いつもお世話になっております