不動産屋のラノベ読み

不動産売買営業だけどガチガチの賃貸派の人のブログ

地方自治体は時効取得を認めていないらしい。


長期占有公有地の時効取得、自治体は認めず : ニュース : ホームガイド : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/homeguide/news/20070112hg02.htm

 国有地を長年占有する個人や法人にその土地が無償譲渡される財務省の時効取得制度に対し、複数地方自治体は占有された公有地を原則、売却する方針を示していることがわかった。


 d:id:Lhankor_Mhy:20070108:1168250043で、国有地が時効取得されていて、その総額200億円超、という記事を紹介しましたが、地方自治体はこれを認めていないようです。


 つか、民法の規定である時効取得を認めないなんて、できるのか? 自治体が法律を守らないなんて!
 とか思ったんですが、どうも、時効取得制度*1を認めていないわけではないらしいです。


 「公物 時効取得」でググるとたくさん出てきますが、「公物はその公物としての機能が失われていないと時効取得できない」という判例があるみたいです。たとえば、水路などですでに誰も利用しておらず、埋め立てられるなどして水路としての形態を失っていたりすると時効取得の対象となるようなのです。
 どうも、自治体はこの辺りをついているようなのです。つまり、「まだ、公物廃止してないよ!」ということです。


 もちろん「いや、本当は貸してたんだ!」という悪あがきをしてる件もあるようですよ。20年以上賃料請求しないで、貸してたも無いと思うが。


 こんな例もあるようです。
市長記者会見
平成18年5月31日

http://www.city.yamagata.yamagata.jp/view.php?g=100300&s=100300002&n=63

山形市を相手取り,民間会社が訴訟を起こしております。国有財産(水路)を30年来自分の宅地用として使用しているということで,「時効により所有権を取得している。」旨の主張で国が訴えられました。その後,水路等,法定外公共物については,平成17年4月より,国有地からそれぞれの市町村に移管されることとなり,最初は国が被告であったが,法定外公共物の移管に伴い,今現在は山形市が被告となり裁判を行なってきました。過日,その第一審の判決が出ました。判決は「長年使用していた関係で,国の所有権を認めない。」「個人の所有権を認める。」という判決がなされました。所謂,市が敗訴をした判決内容でありました。

大変申し訳ない言い方になるが,一般市民は,正式に払い下げを受け,自分の所有地としている方が,17年4月以降市内にもたくさんいる。また,この度の案件のような,払い下げ等を行なわず,そのまま使用している例も相当数あると思う。特に,市街地は「山形五堰」の旧水路が網の目のように存在している。それらを一体的に使用している方々に対し,必要であれば買い取っていただきたいている件が,17年度から今年度も相当数の実績がある。こういう方と,時効を理由に所有権を主張する方とのバランスを考えながら,一審は敗訴であったが,是非,正規の形に戻したいし,市にも事例はあるし,全国的にもこういったケースは非常に多いと思っている。


 「正規の形に戻したいし」って……、なんだかなあ。
 水路とか国から地方自治体に移管したのって、2年前ですよね? その2年間の制度が「正規の形」ってことですか? なんだか、降って湧いた資産でお金取ろうとしてるような印象を受けるなあ。↓こんな例もあるし。


教えて!goo 「 地籍調査 」官の買取請求と個人の買取義務
http://oshiete1.goo.ne.jp/qa2113852.html






 ところで、読売の記事の続きに、気になる事例が。

 姫路市は、建設会社の申し出を受け、昨年4月、市有地約100平方メートルを約280万円で売却した。この土地はかつて里道で、近くの農家らが長年にわたって事実上占有してきたが、市は「公有地の処分は原則、売却。建設会社も無償譲渡を求めてこなかった」と説明する。一方、建設会社は同年2月、近隣の国有地約1400平方メートルについて国から無償譲渡を受けた。


 おお、これって、国相手にうまいことやった建築会社じゃないですか!
 そうだよなぁ、訴訟コストを考えると、妥当な金額で払い下げてもらった方がお得だよなあ。

*1:どうも、この「制度」って呼び方がなんだか誤解を呼んでる気がする。時効取得申告制度とかなら分かるけど