不動産屋のラノベ読み

不動産売買営業だけどガチガチの賃貸派の人のブログ

2015年に読んだ、おすすめしたいラノベ6本

 たまにはラノベの話でも書こうかな、と思いまして、今年を振り返って、面白かったのでおすすめをしたいラノベを挙げようと思いました。
 まあ、最近、大して読んでないんですけどね。
 
 

狼と香辛料」で「仕事と女性のどちらをとるかで悩む男性」をあざやかに描き切り、「マグダラで眠れ」で「仕事と女性のどちらをとるかで悩む男性」を描く新境地を見せる作者が、月面都市のなかで「仕事と女性のどちらをとるかで悩む男性」を描いた経済小説です。
 
 どっちにしろ女をとるんですけどね。
 
 特に3巻はわれわれ不動産屋になじみの深い題材でしたので、特に同業者の人におすすめしておきます。これに限らず支倉の作品を読むと、なんか「ああ、俺も金稼がないとなあ」とか思ってしまうんですよねー。そういうところが好き。
 
 
紅霞後宮物語 (富士見L文庫)

紅霞後宮物語 (富士見L文庫)

 権力闘争とかその辺を描いた架空歴史物です。
 
「女将軍が後宮に」みたいなアオリを読んで「あーはいはいプリティウーマンね」と思って読み始めましたが、いやいや、全然アレです。よい意味で裏切られました。「チャングム」に近いと言えば近い気がしますが、なんか違う気もします。
 主人公、後宮に入ったのに皇帝と子作りを致しておらず、だけど心は通じ合ってるように見えて、しかしながら好き合っているのとはまた違う、という感じで、登場人物たちの「まっすぐに屈折してる」感が素敵。
 心配なのは、こういうタイプの作品は続巻で人物を掘り下げすぎて軽さが失われることがあるんですが、2巻を読んだ限りでは今のところよさげなバランスでやってますね。
 
 今回挙げる作品の中では一番肌色成分が少ない作品ですので、そういう意味でも女性におすすめしたいですね。
 
  後宮を舞台に、医薬の知識で謎解きをするミステリ系ラノベです。
 
 なろう系では一番面白いかなー、と思うんですが、4巻はなんというか「普通」になってましたね。コンセプト離れしてきたというか、いいことでもあるし悪いことでもあるし…… 難しいところですけど、やはり面白いは面白かったですよ。
 
 なろう系嫌いの人におすすめします。あと、これも肌色成分低めなので女性にも。
 
 
アリス・イン・カレイドスピア 1 (星海社FICTIONS)

アリス・イン・カレイドスピア 1 (星海社FICTIONS)

 なんでしょうね、これ。哲学ラノベ……?
 
 はてなでなぜか有名な「幻想再帰のアリュージョニスト」の最近先生メジャーデビュー作。これ続巻出るのかなあ……?
 評価が割れる作品だと思います。しかも割れ方が普通じゃなくて「軽すぎて面白くない」「重すぎて面白くない」「意味分からなすぎて面白くない」「分かりやすすぎて面白くない」と両面からの批判を受ける作品かと。なんていうんでしょうね、上手く言えないけど「駄作との境界線上を攻めすぎた作品」みたいな? 面白い人には面白いし、そうでない人にはクソ、という感じですね。
 私は面白かったです。
 
 川上稔とか古橋秀之が好きな人はチャレンジしてもいいかも。
 
  真っ当な架空戦記物です。ただ、主人公がハーレム属性とラッキースケベ属性を持っていますので肌色成分高めです。
 
 シリーズの最初の方は、主人公の弓が強すぎて、小勢で大軍に立ち向かう状況でも敵将を射殺して逆転勝利、みたいなシチュエーションがあって、「なんか飽きそうだなあ」と思っていたのですが、さすがにチート性能すぎてNerfされたので一軍の将を務めるようになってからほいほい前線に出るわけにもいかず、戦場で武勇を発揮するシーンが少なくなってきました。
 俺TUEEEEな人には面白くないかもしれませんが、苦戦や敗北もするようになってきた最近の巻の方が断然面白いです。
 
 アルスラーン戦記とか好きな人にはおすすめかも。
 
 
異世界食堂 1 (ヒーロー文庫)

異世界食堂 1 (ヒーロー文庫)

 フード版「テルマエ・ロマエ」です。
 
 なろう系ですね。技術力の差を背景に俺TUEEEEする(ただし文化的に)、という意味では正統派のなろう系かもしれません。
 とにかく飯を食うシーンばかりの作品で、とにかく読んでて腹が減ります。
 読んでいくと、われわれの食文化は物流と科学技術に支えられているんだなあ、ということがしみじみ感じられる作品です。
 
 全方位的におすすめ。
 
 

「山を開墾して、小さな家を建てたい」とか意味不明すぎて笑えるwww

 こういう記事がありました。
 

ぼくは高知で山を100〜200万円程度で購入して、仲間たちと開墾して、小さな家を建てたいと考えています。この方向だと、1,000万円もあれば家族で暮らせる自由な空間が作れるんです。

 
 イケダハヤトさん大丈夫ですか? 「山を開墾して、小さな家を建てたい」とかブーメラン過ぎてつっこみどころ多すぎです。
 そろそろギャグになってきましたよね。新築って。
 

住み替えないの?引っ越さないのw

 もっとも突っ込みたいのは、35年以上も同じ家に住むつもりなの?という点。基本的にはそういうことですよね、新築って*1
「35年」って無意味に長すぎません?子育てするといっても、せいぜいその期間は20年、長い人で25年じゃないですか。
「35年という長期間を、ずっと同じ場所、同じ家で過ごす前提」というのが、ぼくにはもうよくわかりません。昭和の高度経済成長期は、きっとそういう空気があったんでしょうけれど。今はもうナンセンスですよねぇ。
 
 都内のマンションであれば売却して移住する選択肢もあるでしょうが、地方都市のそのまた田舎の山の中に素人が趣味で作った家を買う人はいません、というか、ローン承認が出ないでしょう。
 賃貸に出すという手もありますが市場はやはり小さいので、イケハヤさんみたいに田舎暮らしブログ書いてフォロワーを作って知名度生かして押し付けて借りてもらう、みたいなことができないと厳しそう。
 

震災起きたらどうするの?w

 35年の間に、多分震災が起きますよね。どこもやばいんじゃないでしょうか?高知も高確率で震災が来ると予想されています。
 え?なんですか?「地震保険があるから大丈夫」?
 何を言っているのか、あなたが大丈夫ですか?いつ来るかわからない震災のために高い保険料を毎月払ってまで、家を建てる意味ってあるんでしょうかね…。火災保険とかも別に入るんですっけ?それなら賃貸でいいんじゃないでしょうか
 

子どもが巣立ったらその家どうするの?w というか、そもそも巣立つ前はどうするつもりなの?w

 これほんと、子どもが巣立ったらどうするんでしょ?親を呼んで二世帯…とかですかね。でも、親も家持ってますよね、ぼくらの世代って。結局持て余した末に「減築」が一般的なのでしょうか。なんという無駄。
「長い目で見て使い道がなくなるもの」を新築しちゃって大丈夫なのかなぁ、と心配になります。
 
 え?なんですか?「小さな家だから大丈夫」?
 何を言っているのか、あなたが大丈夫ですか? それ、巣立った後はいいけど子育ての間は子供どうするんです? 庭で育てるの?
 つーか、小学校ならまだいいけど、高校とか山の中から通学させると選択肢少ないですよ? ああそうか、ノマド流に通信教育を活用するのかな?
 
 
 

アフィはともかく、意地を張らずに賃貸にすれば?w

 いや、マジ悪いこと言わないから、イケダハヤトさんの生き方なら賃貸がいいと思いますよ。立地を考えない新築は人生の流動性さげるし、まして自分で建てるなんて資産価値を毀損するようなものです。
 たしかに賃貸の自由度は低いですが、新しい仕組みもできてきてますよ。
 参考にどうぞ。 
 リスクをきちんと考えて35年ローン組む人には何も言うことはないですが、イケハヤさん、何も考えてなさそうなんだもの。あなたが挙げてたリスクって、ほとんどが35年ローンのものじゃなくて新築のリスクですからね?
 いや、もちろん「1000万かけて道楽」をするつもりなら別に止めないですけど……
 
 
 
 ところで、もし、家を建てたいなら茨城どうですか? 東京から近いし飯は美味いし土地は安いですよ。
 以前、この辺の土地↓が100坪50万円で売りに出ましたので、どうでしょう? 今ならサメが12匹ぐらいいますよw
 

ドミニオンっぽくてローグライク的なハック&スラッシュRPG「DeckDeFantasy」がやばい

 
 ひさしぶりにこれはヤバイと思ったゲームがありましたのでご紹介します。
 時間泥棒にご注意。
 タイトルにも書きましたが、「ドミニオン」に代表されるようなデッキビルド要素があり、なおかつローグライク的でもあります。プラットフォームはブラウザ・AndroidiOSです。
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ドミニオンっぽい部分

  • ドロー大事
  • デッキ圧縮超大事
  • 敵が状態異常攻撃でデッキに不要なカードを差し込んでくる
  • 装備をたくさん持つとステータスは上がるがデッキの回転が悪くなり……みたいな感じ

 

ローグライクっぽい部分

  • 食料あります
  • 死んだらやり直し
  • 死ななくても50階層潜ったら引き上げてやり直し
  • テーマを決めて出撃をするのが大事
  • 引きによって戦略を決めるのも大事

 

とりあえず序盤のコツみたいなの

  • 生きて返るのが第一目標
  • まず6人そろえることを次の目標に
  • 初めのうちは装備を引くと楽
  • ガチャは金貨ガチャがおすすめ
  • 銀貨の使い道はとりあえず訓練
  • 5階層ごとにお店が開くのでそこでデッキ圧縮
  • 初期メンバー「星読みのカーミラ」は結構使える
  • 「獣使い」「上級獣使い」「強運」持ちを引いたら鍛えよう

 
 
 

iPhone版でやってます

 ガチャはあるけど課金圧は低めです。無課金でも全然大丈夫、というか課金する意味が広告を消すぐらいしか…… お布施のつもりで金貨買ってます。
 カードバトル系やハクスラでアイテム集めるの好きな人は楽しめるんじゃないかな、と思います。ぜひどうぞ。
 
 
 

水戸の不動産屋さん必携アプリ「水戸のこと」

 
 とても素晴らしいスマホアプリがありましたのでご紹介します。
  
 なにが素晴らしいってバス停ナビが素晴らしい。
 
 ここから
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 こうしてバス停を検索して
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 経路を選択して
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 地図上でバス停をタップすると
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 バス停の時刻表がこう!
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 特に「バス便ってどれぐらい来ますかね?」などと突然聞かれることがある人に最適! そんなの不動産屋ぐらいだと思うけど!
 
 
 
 えー、はい。
 ローカルネタです、失礼しました。水戸以外の人にはまったく役に立たないアプリです。しかし水戸市民への知名度も低くてちょっともったいない感じです。
 そういうわけで、はてなで水戸近辺に住んでると確信できる方って2人しかいないんですが、ちょっとIDコールで聞いてみたいと思います。
 id:hirohiroslopeさん、id:camelopardalisさん、このアプリご存知でした?
 
 
 

「女流棋士が弱い理由、それは女だからだ」みたいなアレ

 こういう記事がありまして。 
 こういう議論がありました。



 
 これはいろいろ原因はあるでしょうが、ジェンダーバイアス、つまり「女は将棋が弱い」という偏見があることが原因のひとつだと私は考えます。
 

「女は数学ができない」は本当か

 これもよく言われることですね。「女は生まれながらに論理能力が低い」みたいなアレです。
 結論から言うと、「女性は数学ができないのは事実。しかしジェンダーバイアスによる影響が大きく、器質的な差があるとは言えない」が正しそうです。
 
 ↓数学の試験で、男女混合で試験をするより女性だけ試験をした方が成績がよい、という報告。

Women perform as much as 12 percent better on math problems when tested in a setting without men, according to a study of Brown University undergraduates led by a graduate student of psychology.

http://www.brown.edu/Administration/News_Bureau/2000-01/00-023.html

 ちなみに、男性を減らすと影響は小さくなるが、女性が多数派になっても影響は残ったそうです。また、この「異性混入効果」は男性では観測されず、数学以外の"verbal exams"(文系科目?)でも観測できなかったそうです。
 
 ↓数学の試験で「女が数学ができない理由を調べるよ」と言われると成績が下がる

 研究は数学の成績がよい女子大学生を被験者に行われ、被験者は2つのグループに分けられて数学のテストを受けた。テストの前に、片方のグループは「男子が女子よりも数学が得意な理由を調べるためのテストを行う」と告げられた。もう片方は、単に数学能力の実験とだけ告げられた。

 前者のグループは成績が低下し、プレテストでは約90%だった正答率が80%程度に落ちた。後者のグループは、わずかに成績が上がった。

 
 ↓数学の試験で、性別を伏せさせて回答させると女性は成績が上がる

 偽名(男性名にせよ女性名にせよ…)で解答した女性グループは、本名で解答した女性グループよりも成績が高く、平均として男性に近いレベルを達成していました。

http://ratik.org/1110/201307011/

 これがほんとなら、性別を明らかにした「はてな女子」よりも、性別を伏せた「隠れはてな女子」の方が論理的ということに……*1
 
 一応念のため書いておきますが、「器質的な差はない」と言ってるわけではないですからね、「器質的な差がある」という論には根拠がないと言ってるだけです。
 

匿名でチェスをすると女性は強くなる

 さきほどのブクマ、b:id:futabさんのコメントで知ったのですが。
 ↓今回のケースで決定的そうなのがこれ。

 実力が伯仲した男性と女性のペアを42組作り、インターネットを通してチェスの対戦を行なった。相手の性別が分からない状態でプレイしたグループでは、実力通り男性プレイヤーと女性プレイヤーは対等な試合をした。しかし相手が男性だと知らされた女性プレイヤーは、実力を十分に発揮できなくなってしまった。実際には男性を相手としてプレーしていても、相手は女性だと伝えられた場合は実力どおりの試合をした

http://macska.org/article/205

 こりゃすごい。とても興味深いです。
 
 以上を受けまして個人的には、女流棋士が弱い理由、それは女だからだ」みたいな論は、なんか新しい事実を提示してない限りは妄想・偏見の類だと言うしかない、と思いました。
 

性差だけの話ではないのかも?

 よく考えると、人類半分の論理能力を下げているわけで、近代以降に「アインシュタイン級」の天才女性をどれほど失ってきたのだろうと考えると、大きな損失だったかもしれませんね。もちろん、逆に男性がジェンダーバイアスの影響で失う能力もあるでしょうから、2重の意味で損失です。
 また、これ、性差だけの話ではないのなら結構問題ですね。「ゆとり世代はこれだから」「B型はこれだから」みたいなのを聞いていると本当にダメな人間になってしまうのかもしれませんね。
 
 
 

追記

 みんな見に来なくなったころを見計らって追記。

「女流棋士が弱い理由、それは女だからだ」みたいなアレ - 不動産屋のラノベ読み

なんで雲の上の女流棋士の話を自分事として考えられるんだろうか。

2015/06/10 11:36

「女流棋士が弱い理由、それは女だからだ」みたいなアレ - 不動産屋のラノベ読み

プロに対して、環境によって萎縮して実力を出せていない、というのは侮辱では?環境因子こそ性別に関係なく克服できるものだと思うのだけど。

2015/06/10 09:55

「女流棋士が弱い理由、それは女だからだ」みたいなアレ - 不動産屋のラノベ読み

そりゃプロを舐め過ぎってもんでしょ。素人同士ならそういうバイアスもかかるかも知れんが、女流棋士ともなれば周囲の男性なぎ倒して来てるだろし、妙なバイアスがかかるとも思えん。

2015/06/10 08:32

 他にも同じ勘違いをされている人が結構いましたが、プロ棋士は生まれたときからプロ棋士なわけではないです。プロになって男性棋士と1局指すよりもずっと以前、つまり子供のころからジェンダーバイアスが影響していると考えるほうが自然です。それが棋力その他の成長に影響を与えると考えるのはそれほど無理筋ではないと思います。
 
「女流棋士が弱い理由、それは女だからだ」みたいなアレ - 不動産屋のラノベ読み

女流棋士が弱いのは女だからだ」の反論は「女流棋士でも強い人がこんなにいる」だけであり、『数学の良し悪し』『匿名チェス』は別次元な気がするんだよなぁ。では、匿名で将棋やったら男性にも勝てる?

2015/06/10 07:39

「女流棋士が弱い理由、それは女だからだ」みたいなアレ - 不動産屋のラノベ読み

「女は数学ができない」ことや「匿名でチェスをすると女性は強くなる」ことと将棋は関係ないよね。関係ないことを喋ってるのに何か説明した気になってしまうタイプの人間は何バイアスに捕らわれているのだろう?

2015/06/10 01:58

「女流棋士が弱い理由、それは女だからだ」みたいなアレ - 不動産屋のラノベ読み

前提がおかしい。数学力=棋力ではく、そもそもトッププロの男女の棋力は伯仲していない。生物学的に女性が将棋に向いてないか、将棋の才能を持った女性が棋士になってないかのどちらか。偏見に囚われてるのはこの人

2015/06/10 06:10

 誤読されるのも無理ないと思うので申し訳ないですが、「将棋は論理の世界。だから論理的な基礎能力に差が出るなら棋力にも差が出るはず」などという能力還元的な理由で数学を持ち出したのではないです。
 将棋も数学も同様に「女性が苦手」と思われている類似の案件として挙げています。「ジェンダーバイアスのある数学で結果に影響が出ているならば、同様にジェンダーバイアスのある将棋でも結果に影響が出るのでは」ということです。
 
 ジェンダーネタは表現が難しいな、としみじみ思いました。
 やはり、私も含め人類一般に言えるのでしょうけれど、それぞれに強いバイアスを持っていて、それによって表現や認知が妨げられているなあ、と。
 これがジェンダー以外のネタであれば、私も下手に煽りをいれずきちんと「子供のころからこんなに影響を受けていれば、成長も阻害されるかもね」とはっきり書いたと思いますし、強い言葉を使わずに書いていればこれほど多くの人が「プロ棋士になるまではジェンダーバイアスの影響を受けない」などという誤認知をしなかったのではないかと思います。読み手としても書き手としても、上手いバイアスのコントロールの仕方を心がけたいな、と思いました。
 
 
 

*1:ネタです

「ガイドライン 拘束力はありません ですがきちんと守ってほしい」と国交省

 こんなニュースがありました。

 不動産管理会社の旭化成不動産レジデンス(東京)が、賃貸住宅の原状回復に関する国の指針を逸脱し、貸主に有利な賃貸借契約書を使用したとして、国土交通省が是正を求めたことが5日、分かった。
(中略)
 指針に法的拘束力はないが、国交省旭化成不動産の契約書について、「指針の考え方とは異なり望ましくない。見直してほしい」(賃貸住宅対策室)と指摘している。

 え? ええ?
 と思ったので、記事を書きます。
 

原状回復ガイドライン

 この指針というのは「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」のことでしょう。

 こうした退去時における原状回復をめぐるトラブルの未然防止のため、賃貸住宅標準契約書の考え方、裁判例及び取引の実務等を考慮のうえ、原状回復の費用負担のあり方について、妥当と考えられる一般的な基準をガイドラインとして平成10年3月に取りまとめたものであり、

http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000020.html

 国土交通省の基本的な指針でして、詳しい解説は省きますが、たとえば「自然損耗は貸主負担」のような内容であり、これによって不動産屋の契約書の内容も大きく変わりました。おそらくトラブルが起きても大家のむちゃくちゃな要求が通ることが減ったのではないかと思います。このガイドライン自体は個人的にも「国交省GJ」と思っています。
 また、この判例に基づいて、次の民法改正にて敷金の性質を定めた条文が盛り込まれる予定で、ガイドラインの考え方に近い内容となっています。
 

原状回復ガイドラインの位置づけについて

 さて。
 私が「えええ?」と思ったのは、ここです。

 指針に法的拘束力はないが、国交省旭化成不動産の契約書について、「指針の考え方とは異なり望ましくない。見直してほしい」(賃貸住宅対策室)と指摘している。

 というのもですね。
 ガイドラインはあくまでガイドラインであって、契約上あいまいな部分があったときに従うものなんです。
 誤解を恐れず分かりやすく言うと、「デフォルト値」みたいなものです。
 たとえば、「原状回復」に対して定義や宣言がされてなければデフォルト値である「賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」が用いられますが、「畳の表替えは借主でやってね」と定義されていればそちらを用いるのです。
 プログラマさん向けにさらに分かりやすく書くと、「賃貸標準契約」というクラスがあって原状回復プロパティには初期値があるのですが、個別契約のインスタンスを作成する時に別の値を持たせることができるのです。
 
「そんなのオレオレ解釈だろ」とおっしゃる方もいるかと思います。
 そうではないんです。
 たとえば、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」にもこうあります。

 民間賃貸住宅の賃貸借契約については、契約自由の原則により、民法借地借家法等の法令の強行法規に抵触しない限り有効であって、その内容について行政が規制することは適当ではない
 本ガイドラインは、近時の裁判例や取引等の実務を考慮のうえ、原状回復の費用負担のあり方等について、トラブルの未然防止の観点からあくまで現時点において妥当と考えられる一般的な基準ガイドラインとしてとりまとめたものである。
 したがって、本ガイドラインについては、賃貸住宅標準契約書(平成5年1月29日住宅宅地審議会答申)と同様、その使用を強制するものではなく、原状回復の内容、方法等については、最終的には契約内容、物件の使用の状況等によって、個別に判断、決定されるべきものであると考えられる。

http://www.mlit.go.jp/common/000991391.pdf

 賃貸借契約は、「契約自由の原則」によって、借地借家法26条以下並びに消費者契約法8条以下の強行規定(契約の内容を規制する規定)に反しない限り、当事者間で内容を自由に決めることができます。
 契約はあくまで当事者の合意により成立するものであり、合意して成立した契約の内容は、原則として賃借人・賃貸人双方がお互いに守らなければなりません

http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000024.html#4

 契約内容に沿った取扱いが原則ですが、契約書の条文があいまいな場合や、契約締結時に何らかの問題があるような場合は、このガイドラインを参考にしながら話し合いをして下さい

http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000020.html

 
 基本的には「両者とも内容を理解して合意したなら契約に従え。そうでないならガイドラインに従え」ということなんです。
 

1歩踏み込んだ?

 国土交通省がこのような是正を求めたのは、おそらくこの判例を受けてではないかと思います。

建物の賃借人に通常損耗についての原状回復義務を負わせるには、賃借人に予期しない特別の負担を課すことになる通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記されているか、賃貸人が口頭により説明し、賃借人がその旨を明確に認識し、それを合意の内容としたものと認められるなど、その旨の特約が明確に合意されていることが必要である。

http://www.retio.jp/cgi-bin/example_display.cgi?number=143

「お宅んとこでやってる契約、あれ、全部ちゃんと原状回復の範囲を明記して説明して、きちんと合意とってやってんの? やってないならアレだよ、無効だよ? 無効な特約テンプレにしちゃまずいでしょ?」というような、消費者保護の観点からあえて口を挟んできたということでしょう。業界人としては「1歩踏み込んできたな」と感じました。
 
 
 
 ただ、一方で、こういう判例もあります。

 住宅の賃貸借契約においてハウスクリーニング費用及び鍵交換費用を賃借人が負担する旨の特約が、有効に成立しており、消費者契約法10条に規定する条項にも該当しないとして、有効とされた事例

http://www.retio.or.jp/case_search/pdf/retio/78-134.pdf

 きちんと説明がされていれば原状回復特約も有効になりえます。
 ちゃんとした「原状回復特約」もある、ということです。
 それを考えますと、契約自由の原則に基づきこのような是正要求は本来よくないことであると思います。
 しかし、原状回復トラブルの訴訟についてのある調査によると、22件の訴訟のうち借主の請求がまったく通らなかったのは5件だそうです。プロであるはずの大家がアマチュアの借主より勝率が悪いというのは、賃貸不動産のプレイヤーのレベルの低さを表している、と言われそうな感さえあります。
 何らかの根拠や合理性に基づいて原状回復特約が付されているのではなく、「前からそうだったからなんとなく」のような無理解と不勉強により特約を付しているように思えます。
 今回の件は、国土交通省に「お前ら、自由を認めてもらえるレベルじゃねーだろ?」と言われているのではないでしょうか。
 
 
 

蛇足

 ところで。
 個人的には、クリーニングや鍵交換などは借主負担特約をした方が自然であり合理的であると考えていますが、まあこれに関しては後日。

クロ現で叩かれたサブリースの話をしときますか

今、新たに建てられるアパートなどの数は年間30万戸以上。
3年連続で増加しています。 その多くを占めているのが、大家が建てた物件を業者が一括借り上げする「サブリース」という形式のアパートです。
業者から長期間家賃収入を保証すると持ちかけられ、建築する人が相次いでいるのです。

 
 うーん。ダウト、と言いたくなりました。
 ちょっとこの辺の話を思うままに書いていこうと思います。
 

本当にサブリースが悪いのか

サブリースが悪いというより政治が悪いのでは

 記事ではサブリースが戦犯扱いになっていました。
 たしかに、借り上げによる家賃保証は決め手のひとつになると思います。
 しかし、それよりも大きな要因を見逃してないですか? 農家の地主がアパートを建てる気になるために、背中を押す要因は以下のものもあると思います。

  1. 未利用農地または将来的に利用予定のない農地がある
  2. 農業の跡継ぎがいない
  3. 相続税の節税ができる
  4. 調整区域の農地だが、アパートを建築できる条例がある

 1,2あたりの解決を政府に望むのは酷かもしれませんが、3については直近で増税がありましたから大きな影響があったはずですし、4に関しては例に挙がっている羽生市なんかもう自業自得というか完全に自治体の失策でしょう。
 その辺の事情をさらっと流してサブリースを悪者にすることにちょっと違和感があります。
 

成功例もあるはず

 アパート経営は事業です。事業ですから失敗例もあれば成功例もあるはずです。
 これが「投資した人たちが全て資産を奪われた」みたいな豊田商事のような話なら問題ですが、これ、そういう話ではないですよね?
 結局のところ、強引なアパート営業が誤認させるような説明をしたことが問題であってですね、サブリース契約の問題ではないんですよ。
 たとえば「株を買いませんか? 絶対損はさせませんから」と営業をかけるのはよくないでしょう。でもだからと言って、株式投資が悪というわけではないですよね?
 

サブリース方式に関する考察

判例があります

 話は変わります。

しかし、保証するとしていた家賃収入は、10年を経過したあとは2年ごとに改定するとなっていたのです。

アパート建築が止まらない - NHK クローズアップ現代

 これについてなんですが、実はあまり意味がないかもしれません。
 借地借家法には賃料増減額請求権というものがあり、更新の時期などに関係なく賃料減額請求ができます。しかも、これは強行規定ですので特約で禁止をしても無効となってしまいます。サブリース方式の借り上げ家賃も借地借家法の定めを受けるかどうかは分かれていたのですが、平成15年に最高裁判例ができました。

①本件契約は、建物の賃貸借契約であることが明らかであり、借地借家法32条の規定が適用されるものというべきである。
②本件契約には自動増額特約が存するが、借地借家法32条1項の規定は強行規定であるので、本件契約の当事者は、自動増額特約が存するとしても、そのことにより直ちに借地借家法32条1項に基づく賃料増減額請求権の行使が妨げられるものではない。

不動産適正取引推進機構 紛争事例データベース

 ごく大雑把に言うと、契約で「賃料の増減は一切しない」という条項があったとしても、無効になる可能性があるということです。
 

衡平の見地

 とはいえ、無条件に減額請求が通るわけではないようです。

減額請求の当否や相当賃料額を判断する場合には、衡平の見地に照らして、これらの特約の存在は、重要な事項として十分考慮されるべきであるとしている。

不動産適正取引推進機構 紛争事例データベース

サブリース裁判を巡る最高裁判決(04年11月8日付)において滝井繁男裁判官は補足意見として、家賃減額は「当初予想収支」を損なわない程度と呈示した。すなわち賃貸人の当初予想していた利益が確保できる程度の賃料額まで保護するものとなっている点は、特筆すべきものがある

ADRに係わる論説、コラム・調停事例 - 日本不動産仲裁機構 不動産ADR(裁判外紛争解決手続)センター

 つまり、サブリース業者としても「赤字になっちゃいましたから借り上げ賃料下げてください」がやすやすと通るわけではなく、「当初と経済状況や周辺環境に大きな変動があった」などの一定の根拠があって初めて当初収支予定を越える賃料減額請求ができると考えたほうがいいです。
 ですから、「賃料減額ができるからサブリースリスクヘッジにならない」という見解は極端すぎますし、現場でやってる人に言わせれば「そんな簡単に下げられるなら苦労しないけどね」という感じでしょうね。
 

定期借家があります

 ところで、定期借家契約というものがあります。この定めの中に、

第三十二条の規定は、第一項の規定による建物の賃貸借において、借賃の改定に係る特約がある場合には、適用しない。

借地借家法第38条 - Wikibooks

 というものがあり、賃料増減額請求権が強行規定ではなくなっています。つまり、特約で賃料を固定することができます。
 
 
 

サブリース”会社の社員 「ぼくらの会社だって一部上場企業として全国でやっている以上、入居が入らないとか、建物が例えば古くなったから、そういう理由での家賃の変動というのも存在しません。」
 
勧誘された人 「アパート過剰供給になって入らないんじゃないかと私は思うので、えらい心配なんですよ。 よって家賃収入も減額されるんじゃないかって心配なんですよ。」
 
サブリース”会社の社員 「私の話聞いてました? 家賃は約束通り入ります。 その辺の不動産屋と一緒にされては困るんです。」

アパート建築が止まらない - NHK クローズアップ現代

 こういう営業をされたら、「ではマスターリースを30年の定期借家にしてください。解約条項は削除しましょう。もちろん公正証書で契約しましょうね」と返してみてください。本当に減額されないなら問題ないはずですからね。